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二章:チートな 創造主 と 雪人たちのゲーム前の予習
「………ねぇ。白檀、知ってる?」
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「だから、お前の思い通りにはならないッ。俺は【Hypnos(ヒュプノス)】の産みの親として、今後も責任と義務を果たすだけだッ。」
菖蒲は言い終わるなり立ち上がって、この部屋を出ていった。
座ったまま、呆けた顔で見送る明星。
「…………………ありゃ★ 怒らせちゃたっ。」
人を怒らせた自覚はあるようだが、それに対して反省の色はまったくない。
「当たり前だ。お前のやり方はまどろっこしいうえに、屈折しすぎだ。」
そう横からたしなめるように言ったのは、刺客の二人の拘束が終わって、掛けている眼鏡を押し上げながら立ち上がる白檀。
そんな白檀に、明星は含み笑いで顔を向ける。
「もしかして白檀てば、菖蒲に『なにかした』?」
「何をだ?」
白檀は明星に顔を向けることなくシレッと答えた。
「またまた~ぁ、惚けちゃってっ☆……まあ、菖蒲がこのプロジェクトから抜けなければ、私的には『取引』だろうが『義務』だろうが、どっちでもいいんだけどね。」
ゆっくりと立ち上がった明星は、食べ物と食器が散らかった床をまるで水溜まりでも飛び越えるようにピョンピョンと跳ねながら、白檀と拘束された刺客たちの前まで来た。
「それじゃあ、二人から今回の件について詳しく聞こうか。」
刺客の二人に向けて話しかける明星。だが…。
「明星、それは無理だ。」
「何でっ? 気絶しているなら、起こせばいいでだけでしょっ?」
「違う。二人をよく見てみろ。」
白檀に促されるまま、明星は中腰になって刺客たちの顔を覗き込んだ。
「ッ…!」
……二人とも、目の焦点が合っていない。
少し前まであんなに俊敏な動きをしていたと思えないほど、その顔には生気も自我も感じられない。
「たぶん、なんだかの方法で操られていたんだろうな。」
それを見て目を細める明星に、白檀が腕組みをしながら推測する。
「………ねぇ。白檀、知ってる?」
明星は刺客たちを見つめた状態で、白檀に問いを投げ掛けた。………その声に薄い笑いを含ませながら。
「人間は、網膜に映りこんだモノを脳に一旦全部取り込んでいるんだって。それを解析処理して、その先の自分の行動や会話の主審にする必要最小限のモノしか『見ていない』ことにして『忘れる』だって。……でもね、『忘れる』だけで、その脳にはその画像データは残っている…。」
問うておいて、自分で完結してしまった明星。これは遠回しに、「これからすることを黙って見ていろ」の意らしい。
だから白檀も、その『命令』を黙認する。
「脳と喋れる口があれば……楽勝っ♪」
白檀の立っている位置から、三日月の尖ったところのように吊り上がる明星の口許が見えた。
そして血とアザで斑になった二人の刺客の顔に、明星の手がゆっくりと伸び、悪魔のような黒い影を落とした……。
★☆★
菖蒲は言い終わるなり立ち上がって、この部屋を出ていった。
座ったまま、呆けた顔で見送る明星。
「…………………ありゃ★ 怒らせちゃたっ。」
人を怒らせた自覚はあるようだが、それに対して反省の色はまったくない。
「当たり前だ。お前のやり方はまどろっこしいうえに、屈折しすぎだ。」
そう横からたしなめるように言ったのは、刺客の二人の拘束が終わって、掛けている眼鏡を押し上げながら立ち上がる白檀。
そんな白檀に、明星は含み笑いで顔を向ける。
「もしかして白檀てば、菖蒲に『なにかした』?」
「何をだ?」
白檀は明星に顔を向けることなくシレッと答えた。
「またまた~ぁ、惚けちゃってっ☆……まあ、菖蒲がこのプロジェクトから抜けなければ、私的には『取引』だろうが『義務』だろうが、どっちでもいいんだけどね。」
ゆっくりと立ち上がった明星は、食べ物と食器が散らかった床をまるで水溜まりでも飛び越えるようにピョンピョンと跳ねながら、白檀と拘束された刺客たちの前まで来た。
「それじゃあ、二人から今回の件について詳しく聞こうか。」
刺客の二人に向けて話しかける明星。だが…。
「明星、それは無理だ。」
「何でっ? 気絶しているなら、起こせばいいでだけでしょっ?」
「違う。二人をよく見てみろ。」
白檀に促されるまま、明星は中腰になって刺客たちの顔を覗き込んだ。
「ッ…!」
……二人とも、目の焦点が合っていない。
少し前まであんなに俊敏な動きをしていたと思えないほど、その顔には生気も自我も感じられない。
「たぶん、なんだかの方法で操られていたんだろうな。」
それを見て目を細める明星に、白檀が腕組みをしながら推測する。
「………ねぇ。白檀、知ってる?」
明星は刺客たちを見つめた状態で、白檀に問いを投げ掛けた。………その声に薄い笑いを含ませながら。
「人間は、網膜に映りこんだモノを脳に一旦全部取り込んでいるんだって。それを解析処理して、その先の自分の行動や会話の主審にする必要最小限のモノしか『見ていない』ことにして『忘れる』だって。……でもね、『忘れる』だけで、その脳にはその画像データは残っている…。」
問うておいて、自分で完結してしまった明星。これは遠回しに、「これからすることを黙って見ていろ」の意らしい。
だから白檀も、その『命令』を黙認する。
「脳と喋れる口があれば……楽勝っ♪」
白檀の立っている位置から、三日月の尖ったところのように吊り上がる明星の口許が見えた。
そして血とアザで斑になった二人の刺客の顔に、明星の手がゆっくりと伸び、悪魔のような黒い影を落とした……。
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