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三章:一戦目【駅の中のアリス】
「検索エラー。ガイドモードとリンクできません。」
しおりを挟む――…駅構内。ホーム移動用通路。
「どこだ~ぁ。どこへ行った、赤いボールのオバケ~~~ぇ。」
走り出したはいいものの、すぐに追いかけなかったことがタイムロスとなり、早々に見失っている刀夜。
この駅は新幹線も停まるそこそこ大きな駅だ。今、刀夜が立っている移動用通路も幅広く、いくつものホームと繋がっている。そしてその先には、刀夜が入ってきた改札口とは別の改札口がもう一ヶ所ある。
あの赤いボールもどきが、そっちの改札口から外に出てしまったら万事休す。探しようがない。
刀夜は周囲に向かってかざしていたスマホを、顔に近づけた。
「阿ーちゃん。吽ーちゃん。さっきの丸くて赤いの、上級魑魅魍魎なのか? どこ行ったか分かる?」
捲し立てるように質問するも………スマホから「ビッ!ビッ!」と、短く二回警告音が鳴り…。
――…
「検索エラー。ガイドモードとリンクできません。」
…と、あの二匹の狛犬NPCと別の無機質な声が響いた。
「はあっ?! なんで繋がんないのッ???」
スマホの画面を見ると、端に合成画像として写り混んでいたはずの阿ーちゃん吽ーちゃんが、いつのまにか消えている。
だが、アプリゲーム自体がオフになっているわけではなさそうだ。今だにカメラ機能の画面状態で固定されている。
(助け無しで探せ…ってか~ぁ。)
「けど、さっき阿ーちゃんたちは、上級魑魅魍魎は駅敷地内にいる…ていってたよな。」
(だったら外に出た可能性は低い…と、信じたい。)
「こうなったら、しらみ潰しに探すかぁっ。」
(……そういえばコレって、なんかのお話の冒頭みたいだな。ほら、アレ…!青い服の女の子が、ウサギを追いかける…。)
考えていることと、独り言が、まるで会話のように交互に出てくる。
が、その時…。
――…
「不思議の国のアリス?」
と後ろから耳元に声がしたッ。
「ッ?!」
驚いた刀夜が振り向くも……。
…………誰もいない。
「?????」
「…あれ? その前に、俺、声に出てたかなーぁ?」首を傾げる刀夜。
その振り向いた刀夜の視野に、複数の男性が大荷物を抱えながら改札口から慌ただしく入ってきた。
格好は、水色のウィンドブレーカーにグレーのズボン。頭にはメットに、口にはマスクを着用している。
どうやら救急隊員のようだ。
「すみません、通ります!道を開けてください!」
先頭の救命士が声をあげながら、刀夜を横切る。
(事故?事件?)
そこで、ふと刀夜は思い出した。駅の外で待ち合わせをしているとき、何か連絡が来た警察官が足早に駅内に入っていったことを…。もしかしたら関係しているかもしれない。
刀夜は救命士たちが進む先を、スマホの画面越しに目で辿る。すると50メートル少し先、他のところより一層人が集中しているホームに降りる階段があった。
その人垣のなかを救命士たちが入っていく………そのとき、避けた人垣の足元…。
気づいた刀夜は、スマホの画面のその一ヶ所を親指と人差し指で押し拡げ、アップにする。
「いたっ!」
そこには、あの赤い丸いモノが写っていた。
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