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三章:一戦目【駅の中のアリス】
「やぁねー!人の不幸を写真で撮るなんてッ!どうせ、SNSとかにアップする気なのよ!」
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標的の照準が定まった刀夜。障害物となる人の波を無理に逆らうことなく、接触することもなく流麗に避けながら進む。
刀夜にとっては、剣道の試合で攻撃してくる相手の竹刀を避けるより、何百倍も簡単なことだった。
でも…。
「……いないッ?!」
全速力で、さっきの赤いボールもどきを見かけた場所に着くも………また姿が見えなくなった。
「今度はどこに行ったッ!?」と言いながら、スマホを周囲にかざす刀夜。するとその刀夜の耳に、横にいた二人の女性の話し声が入ってくる。
「あの人、この階段から落ちちゃったらしいわよ。」
「えー、なんで!?」
「なんでも階段横で、駄々をこねる子供を叱っていたら、その子が間違って突き飛ばしちゃったらしくてね。真下まで転げ落ちちゃったんですって!」
聞いた刀夜は思わず話の内容を確認するように、人垣の隙間から階段下を覗き込む。
そこには、救命士たちに囲まれ処置を受けているワンピース姿の女性が横たわっていた。
後頭部のあたりからは、おびただしい血が流れている…。
そして横には、警察官に押さえるように制止させられた5~6歳の女の子が泣き叫んでいた。
「私じゃないッ!私がやったんじゃないッ!『青い子』がッ、あの子がママを…ッ!!ママーッ!ママーッ!」
女性二人のように状況を知っている大人たちからすれば、この子の言っていることは言い訳に聞こえるだろう。
だが何故か、刀夜にはそれが嘘だとは思えなかった…。
(…『青い子』?)
今探している色とは対照的な色。無関係なはずなのに………何か心の奥で引っ掛かるモノを感じる。
……眉を潜める刀夜。すると、横にいた女性たちが訝しげに此方を見ているのに気づいた。
「やぁねー!人の不幸を写真で撮るなんてッ!どうせ、SNSとかにアップする気なのよ!」
「最悪ねッ!」
……どうやら刀夜が持っているスマホが、カメラ機能のままにしてあるのを見て勘違いしているようだ。
自分たちはその不幸を、口頭で周囲に拡散させていたくせに、自覚の無い女性たちは刀夜を非難する。
けどそれを跳ね返すだけの根性はない。
「…~~~~っっ。」
スゴスゴとその場を退行する刀夜…。
人垣から外れた刀夜は下の事件も気になるも、あの赤いボールもどき探しを再開する。
(まだ遠くに逃げてなければいいけど…。)
けれどその心配は杞憂と終わった。
スマホをかざすと、数メートル先の現場となった階段とは反対側。通路の壁際に、その赤いボールもどきが左右にコロコロと転がっていた。
今度は距離が近いため、その赤いボールもどきの全体像がハッキリと見える。
見えたとたん、「えっ?」と刀夜の目が点になった。
そして見たまんまを口に出す…。
「………………ダルマ???」
…と。
刀夜にとっては、剣道の試合で攻撃してくる相手の竹刀を避けるより、何百倍も簡単なことだった。
でも…。
「……いないッ?!」
全速力で、さっきの赤いボールもどきを見かけた場所に着くも………また姿が見えなくなった。
「今度はどこに行ったッ!?」と言いながら、スマホを周囲にかざす刀夜。するとその刀夜の耳に、横にいた二人の女性の話し声が入ってくる。
「あの人、この階段から落ちちゃったらしいわよ。」
「えー、なんで!?」
「なんでも階段横で、駄々をこねる子供を叱っていたら、その子が間違って突き飛ばしちゃったらしくてね。真下まで転げ落ちちゃったんですって!」
聞いた刀夜は思わず話の内容を確認するように、人垣の隙間から階段下を覗き込む。
そこには、救命士たちに囲まれ処置を受けているワンピース姿の女性が横たわっていた。
後頭部のあたりからは、おびただしい血が流れている…。
そして横には、警察官に押さえるように制止させられた5~6歳の女の子が泣き叫んでいた。
「私じゃないッ!私がやったんじゃないッ!『青い子』がッ、あの子がママを…ッ!!ママーッ!ママーッ!」
女性二人のように状況を知っている大人たちからすれば、この子の言っていることは言い訳に聞こえるだろう。
だが何故か、刀夜にはそれが嘘だとは思えなかった…。
(…『青い子』?)
今探している色とは対照的な色。無関係なはずなのに………何か心の奥で引っ掛かるモノを感じる。
……眉を潜める刀夜。すると、横にいた女性たちが訝しげに此方を見ているのに気づいた。
「やぁねー!人の不幸を写真で撮るなんてッ!どうせ、SNSとかにアップする気なのよ!」
「最悪ねッ!」
……どうやら刀夜が持っているスマホが、カメラ機能のままにしてあるのを見て勘違いしているようだ。
自分たちはその不幸を、口頭で周囲に拡散させていたくせに、自覚の無い女性たちは刀夜を非難する。
けどそれを跳ね返すだけの根性はない。
「…~~~~っっ。」
スゴスゴとその場を退行する刀夜…。
人垣から外れた刀夜は下の事件も気になるも、あの赤いボールもどき探しを再開する。
(まだ遠くに逃げてなければいいけど…。)
けれどその心配は杞憂と終わった。
スマホをかざすと、数メートル先の現場となった階段とは反対側。通路の壁際に、その赤いボールもどきが左右にコロコロと転がっていた。
今度は距離が近いため、その赤いボールもどきの全体像がハッキリと見える。
見えたとたん、「えっ?」と刀夜の目が点になった。
そして見たまんまを口に出す…。
「………………ダルマ???」
…と。
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