ソウルウォーク ★魔都

神嘗 歪

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三章:一戦目【駅の中のアリス】

「………これ以上は止めたほうがいいんじゃないか?」

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「あのときナビキャラたちは、「赤色の護符がなければ、95%の確率で倒すのに失敗」とは言ったが「青の護符を使用しての成功率が5%」とは言ってない。勝手に俺たちがそう思い込んだだけだ。赤い護符でも99枚まで成功率が青の護符と等価ならば、その5%の『護符を使用しない成功方法』ってぇのがあるんじゃないのか?」

「………そんなこと…あり得るのか?」

「分からねぇ。……だけど、スマホゲームアプリ【ソウルウォーク★魔都】がサービス開始されてからまだ一年も経っていない今の状況で、上級魑魅魍魎を倒しVRに移行しているヤツらが多数存在している。…ということは通常の正攻法じゃない、別ルートの攻略方法があるということだけは確かだ。……それに。」

雪人は両手をキーボードで使用しているため、アゴでクイッとコインロッカーの方を指した。

「このゲームが『普通じゃない』ってことは、お前も判っているだろ?」

ゴクンッと生唾を飲む刀夜。

もうこの場所に到着時点で、刀夜が抱いていた不安材料を把握しているのだ。

そうだ…。『普通じゃない』……ここまでの不可思議なほどのリアルとゲームの連鎖的一致で、それを身に染みて判っている。

こんな得たいの知れないゲーム、どんな危険があるか分かったもんじゃない。

  「………これ以上は止めたほうがいいんじゃないか?」

刀夜は震える唇で雪人に進言する。

そうだ。今なら引き返せる。

こんなイベントなんて蹴って、阿―ちゃん吽―ちゃんが推奨してくれることだけやっていれば、多分このゲームは『普通』のゲームなんだ。

元々このゲームは雪人に無理矢理に誘われただけで、刀夜はそのVRMMOでの賞金なんて興味はない。安全圏を自ら逸脱しなければいいだけの話だ。

自分は『今まで、そうやって生きてきたじゃないか』。

でもその刀夜の言葉を聞いた雪人は一瞬目を見開き、驚いた顔をしたかと思うと…。



  「プッ!」



…と吹き出した。

「な…ッ!何で笑うッ!?」

ムキーッと怒りだす刀夜。こっちは本気で言っているのにッ。

けど雪人は、笑うことを止めず…。


「それっ、本当に『本気』で言ってる?」


…そう言った。

「ツッ!………ほ、本気に決まっているだろ!ヤバイッて!絶対、止めたほうがいい!」


「クククッ!…それにしちゃあ、口元が笑いたくってヒクついているぜ。」


刀夜は「…え?」とこぼし、恐る恐る自分の口元を中心に顔を触る。

(……………ウソ…だ。)

触った口元は、確かに上に吊り上がろうとしてピクピクしていた。

それは笑いたい本能と、笑うまいと自制する意識が、無意識でせめぎあっているようだった。

(………もしかして…俺はこの状況を……『楽しんでいる』?)

自分の気持ちに混乱している刀夜に、雪人はニカッと笑った。

「お前のその顔、俺たちが初めて戦ったあの時と『同じ』だぞ。」

「ッ!!」
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