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三章:一戦目【駅の中のアリス】
「なぁお前、俺と殺ろうぜッ!」
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「あの時」…。雪人が言っているのは、雪人が道場破りのような部活見学に来たときのことだ。
刀夜の脳裏に、その時の映像が流れる…。
……………………………
…………………
…………
…
バンッ!と荒々しく開く引き戸。
そこからいきなり土足で道場に入ってきた雪人を、剣道部全員が嫌悪の目で一気に睨んだ。
そんなことなど気にする様子もなく、雪人は「この中で一番強いヤツと戦わせろ。そいつが勝てたら、俺がこの部活に入ってやる。」と、臆面もなく言い放った。
呆れる者がほとんどだったが、血の気の多い数人の男子部員はそれを聞いて「はぁッ?誰だお前?!」や「調子にのりやがって、ふざけるな!」や「誰がお前なんか部活に入れるか!」など罵声を発した。
真竹やそれ以外の部員たちも、言葉として発しはしないものの、『一人除いて』怒りの感情を露骨に表情に出している。
皆まだ高校生とはいえ、県内トップクラスの選手が集まっている部だ。本気で剣技に取り組んできた者特有の闘気はハンパじゃない。大の大人でも、怯んでしまいそうなほどだ。
だが雪人は、ニャーニャーと鳴き続ける猫の集団でも見るかのように、「五月蝿い」とばかりに眉をひそめるのみ。
怒鳴っていた男子の部員一人がその雪人の態度にブチ切れ、「この道場から出ていけッ!」と雪人に掴みかかった。
…が。
「ッ!?」
見た目線の細い体つきのくせに、雪人の体はその場からピクリともしない。
「………なに、この手?」
そう言った雪人の腕が、反対に掴みかかった部員の首に伸びてきたかと思うと…。
…ダンッ!!
片手で首を絞め、のし掛かるように後ろに押し倒したッ。
それはまるで剣道の「突き」のような威力と俊敏な動きで、その部員は身構えのことも出来ずに板の間の床に沈んだ。
この行動が更に部員たちを殺気立たせる。
…が、雪人はそこにいる全員よりも怒れる殺気を込めて言う。
「俺は、この中で「一番強いヤツ」って言ったはずだぞッ!弱いカスがのこのこシャシャリ出てくるんじゃねぇよッ!!」
床に倒された男子部員はその濃厚な殺気に当てられ、一瞬にして戦意喪失し顔が青ざめていく。
道場内はそれで重く静まり返った……。
「わかった。じゃあ私が相手をしよう。…たが私が勝ったら、君には一生この道場に来ないでほしい。」
そう言いながら部員たちの前に出てきたのは、この剣道部の部長で主将の佐々木だった。
けれど雪人は「お前でもねぇな…。」とポツリと呟く。そしてグルッと部員全員を見渡した。
そのなか、雪人の視線が『標的』を見つけるとニヤリと笑い、それに向かって一直線に突進していった。
その際、佐々木主将の横をすり抜けながら、持っていた竹刀を引き抜くように奪う。
「ッ?!」
呆気に取られる佐々木主将。……少しも反応できなかった…。
雪人はそのまま部員たちを押し退けるように掻き分け、最後尾の道場の隅まで来た。そして…。
「なぁお前、俺と殺ろうぜッ!」
「…………えっ?」
ポカンと口を開ける刀夜に向かって、ニヤと笑った。
刀夜の脳裏に、その時の映像が流れる…。
……………………………
…………………
…………
…
バンッ!と荒々しく開く引き戸。
そこからいきなり土足で道場に入ってきた雪人を、剣道部全員が嫌悪の目で一気に睨んだ。
そんなことなど気にする様子もなく、雪人は「この中で一番強いヤツと戦わせろ。そいつが勝てたら、俺がこの部活に入ってやる。」と、臆面もなく言い放った。
呆れる者がほとんどだったが、血の気の多い数人の男子部員はそれを聞いて「はぁッ?誰だお前?!」や「調子にのりやがって、ふざけるな!」や「誰がお前なんか部活に入れるか!」など罵声を発した。
真竹やそれ以外の部員たちも、言葉として発しはしないものの、『一人除いて』怒りの感情を露骨に表情に出している。
皆まだ高校生とはいえ、県内トップクラスの選手が集まっている部だ。本気で剣技に取り組んできた者特有の闘気はハンパじゃない。大の大人でも、怯んでしまいそうなほどだ。
だが雪人は、ニャーニャーと鳴き続ける猫の集団でも見るかのように、「五月蝿い」とばかりに眉をひそめるのみ。
怒鳴っていた男子の部員一人がその雪人の態度にブチ切れ、「この道場から出ていけッ!」と雪人に掴みかかった。
…が。
「ッ!?」
見た目線の細い体つきのくせに、雪人の体はその場からピクリともしない。
「………なに、この手?」
そう言った雪人の腕が、反対に掴みかかった部員の首に伸びてきたかと思うと…。
…ダンッ!!
片手で首を絞め、のし掛かるように後ろに押し倒したッ。
それはまるで剣道の「突き」のような威力と俊敏な動きで、その部員は身構えのことも出来ずに板の間の床に沈んだ。
この行動が更に部員たちを殺気立たせる。
…が、雪人はそこにいる全員よりも怒れる殺気を込めて言う。
「俺は、この中で「一番強いヤツ」って言ったはずだぞッ!弱いカスがのこのこシャシャリ出てくるんじゃねぇよッ!!」
床に倒された男子部員はその濃厚な殺気に当てられ、一瞬にして戦意喪失し顔が青ざめていく。
道場内はそれで重く静まり返った……。
「わかった。じゃあ私が相手をしよう。…たが私が勝ったら、君には一生この道場に来ないでほしい。」
そう言いながら部員たちの前に出てきたのは、この剣道部の部長で主将の佐々木だった。
けれど雪人は「お前でもねぇな…。」とポツリと呟く。そしてグルッと部員全員を見渡した。
そのなか、雪人の視線が『標的』を見つけるとニヤリと笑い、それに向かって一直線に突進していった。
その際、佐々木主将の横をすり抜けながら、持っていた竹刀を引き抜くように奪う。
「ッ?!」
呆気に取られる佐々木主将。……少しも反応できなかった…。
雪人はそのまま部員たちを押し退けるように掻き分け、最後尾の道場の隅まで来た。そして…。
「なぁお前、俺と殺ろうぜッ!」
「…………えっ?」
ポカンと口を開ける刀夜に向かって、ニヤと笑った。
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