シンデレラになりたくて

家紋武範

文字の大きさ
1 / 6

第1話 幼馴染みと結婚するしかないのかなぁ

しおりを挟む
 私もいい歳だ。恋人のかけるとは中一の時、周りに囃されて付き合いだして、それからずるずると12年。はぁ何年だか言えちゃう自分が悲しい。
 共通の友人同士がカップルになって、ソイツらの結婚式。見事に先越されました~。
 新郎の隼人に言われた。

「次はお前らだな」

 って、そんなこと言われたのはひと組やふた組じゃないけどさ。

 かけるは友人代表をつとめた後、二次会、三次会まで私を小間使いにしながら取り仕切り、散々盛り上げていた。他の友だちは「彼氏が迎えに来てる」「旦那が待ってる」「子供の面倒見なきゃ」って帰っちゃって。
 終盤は売れ残りの男女だけ。はしゃぎ屋のアイツに接客に任せて、私はカウンターで一息ついてた。
 その隣りに人影。見ると、えーと、誰だ? あ。隼人の大学時代の先輩さんか。

「一人ですか?」

 ひ、一人て。たしかにかけると離れたから一人ではあるけど、今までかけるの隣で動いてましたけど?
 ……はは。何を構えてるの私。口説かれるわけないか。この人も疲れたから話し相手が欲しいだけかな?

「お友だち元気がいいですね。でも私はこうして美人と二人で呑むほうが好きかな?」

 と、友だち? あ、まともには紹介してないか。知ってる連中ばかりだから別に紹介とかしてないし。友だちはみんな帰っちゃったし。
 そしてなんですか? 美人ですと? いやーん。お上手。そんなこと言われたの……。え? 初めて? ウソだろ。かけるなんてそんなこと言ったことないぞ?
 そーか、そーか、私、美人だったか。いや自覚はあった! ありましたけど言われたことなかった! かけるのヤツの飼い殺しは私に男を近づけなかったもんね。いや居心地よすぎて、私も離れなかったところはあったけどさ……。

「これ、私の名刺です」
鳥飼とりかいさんですか──。え? しゃ、社長さん?」

「小さい会社ですけどね。もしよかったら今度夕食でも。そちらのお名前は?」
「は、はい! 詩織しおりです!」

「詩織さんですか。今日お会いできて良かったです」
「うぉ~……。そうですか」

 私はなぜか唸りながら、その鳥飼さんの名刺をバッグにしまった。

 それからかけるの仕切りによって、無事三次会も終了。かけるははしゃいで、招待客を見送った。私はちょっとドキドキしながら鳥飼さんの背中を見送っていた。

 その帰り道、かけるは縁石に登って楽しそうにキャッキャ言ってたけど、立ち止まってため息をついた。

「はぁ~。シオ」

 シオはかけるが私の名前、詩織を略して呼ぶときの愛称だ。私はそれに振り向く。ため息をついた後、いつものように歯を見せてニカッと笑う。

「俺らも結婚すっか?」

 はぁ!?
 なに、そのヒマだから「コンビニ行ってくるわ」的な感覚! かけるにとってプロポーズってそんなレベルなの? さんざん人を待たしといて!
 他の人ならなんていうだろ? ──鳥飼さんなら……。

「なんなの? その言い方」
「う? い、いや、もうそろそろかなと思って」

「そろそろなんてとっくに通り過ぎましたけど? 私を何歳だと思ってんの?」
「それは~、えーと……25?」

「まだ誕生日来てない! 24!」
「24だ。24。知ってた。知ってた」

「いっつも自分のことばっかり! 自分が25だから安易に25って言った!」
「どうした。今日はおかしいぞ?」

「私は美人ですか!?」
「は? 何言ってんの?」

「どうなの? 私美人?」
「うわ~。必死だなお前」

 ブッチーン。キレた。いくら居心地がよかったからって、こんな男にいつまでもくっついているべきじゃなかった。

「帰る」
「帰るって同じ道じゃねーか」

「タクシー!」
「お。いいねぇ」

 私はちょうど来たタクシーを呼び止めた。すぐに中央に乗り込むと、かけるがさも当然のように乗り込もうとするので、歩道側に突き飛ばした。

「運転手さん。行っちゃって」
「あの。お連れ様は?」

「行って」
「はい……」

 家に帰るとかけるからすごい着信があった。どっちが必死よ。アンタなんて、こっちから願い下げ。





 それから数日のこと。私は高級ホテルのレストランでキョロキョロしていた。

「まさかご連絡頂けるなんて」
「い、いえ。でもこんな高そうなところ……逃げるときには合図をくださいね?」

「プッ。面白いかたですね。詩織さんは」

 いやマジ、かけるとはファミレスばっかだったから。ボーナス時は食べ放題の焼き肉とか食べに行くのが通例となってたけど、こんな本格レストランなんて初めて。
 当然、鳥飼さんが迎えに来てくれた。ヘビのロゴマークの真っ赤な外車。カッコいい!

 いや、居酒屋とかかなと思ってたよ。フルコースなんて食べたことないし、テーブルマナーなんて知らないんですけど。見たことない料理だなぁ。基本好き嫌いないからいいけど。

「誤解して欲しくないのですが……」
「はひ?」

 しまった。口に入れたまま返事してしまった! ちょっと! 私は鳥飼さんの前では美人なのよ? はしたない真似はしないようにしないと。

「私、普段こんなことしません。詩織さんだからお誘いしたんです。詩織さんを見て感じました。これが運命なんだって」

 う、運命ですと?
 何言ってんのこの人~! いや私は美人です。美人ですけれども!

 かけるのバカに付き合って公立三流高校出で、スキルもなにもないですよ? 大学ももちろんFランです。かけると同じの。

 くぉい! かけるよ! さっきから人の回想にちょろちょろ出てくんじゃねーよ! お前なんて虫ケラが及びもつかねぇような人と食事してんだからよ!

「そんな。買い被りすぎですよ」
「いえ。そんなことはありません」

「私、何の取り柄もないバカですし」
「あなたは──。ただ私についてきてくれればいいんです。なんの心配もさせませんよ」

 すっげぇ自信。イケメンだし、金あるし、こりゃ運が回ってきたぞぅ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...