シンデレラになりたくて

家紋武範

文字の大きさ
2 / 6

第2話 まるでシンデレラ

しおりを挟む
 私はワインに酔って真っ赤になっていた。鳥飼さんは楽しそうに微笑んでいた。

「では夜も遅いしお送りしましょう」

 遅い? まだ九時台ですけど?
 つか、あなたワイン注いでおいて一口も飲んでない? 私のこと送るため?
 いやいや、このワイン高いんでしょ?
 ディスカウントショップの安ワインじゃないよね? どんだけ金持ち。
 ウェイターさんが、鳥飼さんに伝票持ってきた。両目視力1.5を舐めるんじゃないわよ?

 えーと、90,000円?

 どゆこと? そんなに満腹頂いてませんけど? ボッタクリですか? 割り勘でも私、半分出せないよ鳥飼さん。逃げる合図をくれ!

「じゃカードで」
「かしこまりました」

 さらりとカード出した。クーポン券も出してない。オラ、かける! ちっとは見習えよな? これが男ってもんだよ。

 それからスマートに近所まで送ってくれて車の中。ちょっと間を置いて鳥飼さんは話し出した。

「詩織さんさえよかったら結婚を前提にお付き合いして欲しいです」

 なんて迷いのない真っ直ぐな顔──!
 そんな顔で、声で言われたら。

「あ、あの。私でよかったら」
「え。あ。はは。よかった」

 照れてる。初々しい。何かしら。この新鮮な感じ。かけると中一の頃なんて……。

「二人ともいつも一緒だよね?」
「まーな」
「まーねぇ」

「付き合っちゃえば?」

 友人の言葉に、私は思春期だったし何も言えなかったけど、かけるが即座に

「いいよなぁ。シオ」
「え? ま、まぁ……ね」

 って応えちゃって、それからずっとだもんね。別にギクシャクとかなかった。それがかけるだったからな。

 私は鳥飼さんの車から降りて帰りながらそんなことを考えていた。
 自宅の隣の家の二階の灯りを見ると電気が点いてる。アイツ居やがるのか。

 家の中に入って家族共通スペースの衣裳部屋に入り私は着替え、風呂の準備をした。髪を下ろして化粧を落とし自分の部屋へ。
 電気を点けてベッドに腰を下ろすと、窓ガラスを長い棒のようなもので叩かれる。またいつもの調子だ。私は窓を開けた。

 そこにはかけるの顔。なんの因果かお隣さんの幼馴染み。それとほぼ24年間一緒にいる。内12年間は恋人だったんだよな。
 私は呆れた顔でかけるの顔を見ると、歯を見せてニッと笑う。なぜか私も合わせて少し微笑んでしまった。

「仲直り。いいだろ? そっちいっていいか?」
「んー。まぁいいけど」

 つい応えた。アイツは自分の家の屋根に足を下ろして、屋根づたいに私の部屋にくる。このままアイツはいつものように私をベッドに倒して──。

 いかーん! いつものアイツのペース。私はかけるが来る前に窓を閉めてカーテンを閉じた。
 当然のようにかけるは窓を叩く。

「なにしてんだよ。窓開けろって」
「忘れてた。私怒ってるんだからね!」

「ああ、だから仲直りだろ? シオの好きなやつ」
「やめて。アンタに合わせてただけで別に好きじゃない」

「なんだよ。悪い冗談だな。開けろって」
「しつこい。帰れよ」

「なんなんだよ。歩道に転がされたのは俺だろ? なのに謝るのはいっつも俺のほうで。性格悪いぞ?」

 は、はあ? 歩道に転ばしたのは理由があるからでしょうに! それを性格悪いとかってマジ無いんだけどコイツ。

 私はムカついてベッドに横になり電気を消した。

「あ! オイ! なんだよコイツ」

 こっちのセリフだよ。せっかく鳥飼さんとの思い出でいい気分だったのに台無し。かけるごときがしゃしゃり出る隙間なんて無いんですからね。





 鳥飼さんとの日常はとても楽しい。トークアプリもマメに送ってくれる。休憩中の映えるカフェアートとか、可愛いオブジェとか、センスも抜群。
 私はもっと鳥飼さんのことが知りたくて、新婚旅行から帰ってきたであろう隼人にメッセージを送った。

「ねぇ。結婚式に来てた鳥飼さんってどんな人?」
「ああ先輩? 雲の上の人だな。親は資産家だし、先輩自身大学二年の頃からビジネス始めて、数社の役員やりながら自分でまた新しい会社をやってるみたい」

「隼人とどんな繋がり?」
「サークルの先輩だったんだよ。後輩の面倒見もいいしね。尊敬も憧れもあるよ」

「結婚式に来てくれたって、仲いいの?」
「んー。そんなにかな? 面倒見てくれたしお世話になったから義理で招待したけど、まさか来てくれるとは」

 んー……、隼人は尊敬してるけど、あんまり話に盛り上がりがないな。

「嫌い?」
「嫌いではない。尊敬してるし。ただ余りにも雲の上の人過ぎて引くって感じかな?」

 引く!? そんなのあるんだ。でも金持ち過ぎると、たしかに一般ピーポーはついて行けないよね。そんな感じかな。





 そしてまたもや金曜日、鳥飼さんからのお誘い! 会社終わったら食事に行きましょうって! やったぜ。うぇーい。
 でも服がこれか。会社に着てくるスーツ。悪くはないけど、デートの格好じゃないよね。これは家に帰ってから着替えるべきだな。
 鳥飼さんに着替える旨をメッセージで送るとすぐに返信だった。

「では食事の前に服を買いに行きましょう」

 ってマジかオイ! 家に帰って着替えるより合理的だよね、たしかに。
 調子に乗った私は、了解と返信をした。

 待ち合わせの場所に行くと、前の車と違う黒い巨大なSUVだった。これも外車ね。デカすぎて、乗れるか不安だったけど鳥飼さんは車内で手を伸ばして私を車に引っ張り上げて乗せると、スイスイと高級ブティックへ──。

 店員を呼んで、彼女に似合うものを着せてくれ~、かしこまりました~の流れで私にはいつの間にか高級スーツが着せられており、手にはロゴマーク入りの高級バッグ。足には高級靴の一目でセレブと分かる格好に早変わり。

 嘘でしょ。まるでシンデレラ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

処理中です...