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やる気のない彼氏
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彼の部屋に恋人同士が二人。
彼の方は、秋野友飛。
彼女の方は、照山紅葉。
二人は高校三年生だ。受験勉強と言って二人きりになることを親に許された。
だが二人っきりになるのだ。
勉強なんてしてられない。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……うわ! デュラハンだ! マジかよ。やっべぇ!」
「……………………」
「……ふふふ。なんの備えもしてないと思ったか? いくぞ! 炎の結界!」
「……………………」
「イチ、ニー、サン……。……あ、あれ……?」
「……………………」
「あ! そーだ! ガチャでいいの出たからデッキ変えてたんだ! くっそぉ~!」
友飛の方は一人、スマホを片手にソーシャルゲームをしながら一人実況をしていた。
紅葉の方はそれをつまらなそうに見ている。
「ねぇ~……。どこか行かない?」
「どこってどこ?」
「だから家の中じゃないところ」
「行って来いよ」
「なんで一人で……。駅は? みんないるかもよ? 中学時代の友達とか」
「……いーよ。めんどい。行かない」
「もう!」
紅葉は呆れてしまった。最近いつもこうだ。
部活をやっていたころの友飛はかっこよかった。
だが夏の県大会出場を賭けた試合でまさかの弱小校に敗れた。
友飛はそれを自分のせいだと思ってる。
人に会うのを嫌いすべてにやる気を失って、ソーシャルゲームばかりに溺れていた。
彼女である紅葉はなんとか友飛にやる気を起こさせたかった。
「服とか買いに行かない? 秋物も安くなってるでしょ?」
「ふーん。……やべ! ガブリエル死んだ!」
「毒だよ。家の中にばっかりいるの……」
「だよな~。そーれーハイパーポーション!」
「後輩たち試合だってよ? 見に行かない?」
「ム~リ~! 大友情の絆ァ!」
紅葉はその手のひらを広げてスマホの画面を覆った。
「バカ! やめろ!」
「……バカ? バカはどっちよ! いつまでもクヨクヨしてさ」
友飛は無言でスマホを立てて画面で紅葉の顔を隠した。
ゲームの世界に逃げたい。ここだけが今の友飛生きる場所なのだ。
「ねぇ? 私たち付き合ってるんだよね?」
「……そうだよ」
少しばかり重い声で友飛が答える。
それを聞いて紅葉は立ち上がって、上着のボタンを外し始めた。
友飛は最初スマホに夢中で紅葉が何をしているか分からなかったが明らかに衣服のこすれる音だ。服を脱ぐ音だ。思わずスマホから顔を横にずらして紅葉の方を見た。
天岩戸ではないが、スマホから大きく顔を出して二度見した。
彼女はスカートに手をかけて下着だけになった。そして上の下着も自ら外して胸をあらわにした。
友飛は言葉もでない。生唾を飲み込んでその姿に釘づけ。
初めて見る紅葉の体に魅入っていた。
紅葉はかまわず両手を広げて全てをさらしていた。
「友飛も脱ぎなよ」
「お、おう」
友飛も慌てて立ち上がり、足を絡ませながらドタバタと服を脱ぎ恥ずかし気に紅葉の前に立った。
「手をどけて」
「う、うん……」
心臓が破裂しそうだ。突然の出来事。
友飛の頭の中にはゲームの「ゲ」の字もなかった。
「キスもしたことないでしょ? 私たち」
「う、うん」
「……して……」
友飛は紅葉の素肌に……肩に手を置いた。
吐息しか聞こえない。紅葉に息がかかるのを恐れてただ息をひそめて唇に顔を近づけた。
唇を当てる。最初はわずかな時間。
そして、もう一度。今度は少し長く。
友飛は、大きく息を吸い込んで体と体がつかないようにして長い間紅葉の唇を吸い続けた。
そして紅葉の胸に手を伸ばす……。
「ぅおっと! そこまで!」
紅葉は友飛の腕を打ち払った。
友飛は驚いて紅葉の顔を見る。
紅葉は、友飛の顔を睨みつけて下着をつけ始めた。
友飛の頭の中にはクエスチョンマークがいっぱいだ。
脱がせと言うことか? わずかにそう思ったが紅葉の言葉はまったく逆だった。
「お別れのキス」
「え? ちょっとちょっとちょっと」
「やる気のない人に魅力はないよ。もしもまだ好きなら告白から再チャレンジしてください!」
紅葉はそういいながら服を全部着てしまった。
「好きだよ! だから……」
「だから……何? 裸で言われても説得力ないんだけど」
そう言われれば友飛はまだ裸だった。
急いでパンツをはいたが、その間に紅葉はドアノブに手をかけて容赦なく部屋から出てしまおうとした。
「あーーー! 待って! 待って! 待って!」
「知らなーい。ゲームでもしてれば?」
「しないしないしないしない」
「信じられない。その気があればデートに誘ってくるでしょ」
そう言って紅葉は出て行ってしまった。
ドシン
友飛の家の中に大きな音が響いた。紅葉を追いかけようと急いでデニムに足を通した拍子に転んだのだ。
その間に紅葉は家から出た。
玄関のドアが閉まる音だ。友飛は転んだまま腕をバタつかせて急いでその紅葉の姿を窓から眺めながらスマホを手に取った。
「オーケーグーグリ。この辺の秋のデートスポットを教えて!」
『大通りの銀杏並木はいかがでしょう』
【おしまい】
彼の方は、秋野友飛。
彼女の方は、照山紅葉。
二人は高校三年生だ。受験勉強と言って二人きりになることを親に許された。
だが二人っきりになるのだ。
勉強なんてしてられない。
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……うわ! デュラハンだ! マジかよ。やっべぇ!」
「……………………」
「……ふふふ。なんの備えもしてないと思ったか? いくぞ! 炎の結界!」
「……………………」
「イチ、ニー、サン……。……あ、あれ……?」
「……………………」
「あ! そーだ! ガチャでいいの出たからデッキ変えてたんだ! くっそぉ~!」
友飛の方は一人、スマホを片手にソーシャルゲームをしながら一人実況をしていた。
紅葉の方はそれをつまらなそうに見ている。
「ねぇ~……。どこか行かない?」
「どこってどこ?」
「だから家の中じゃないところ」
「行って来いよ」
「なんで一人で……。駅は? みんないるかもよ? 中学時代の友達とか」
「……いーよ。めんどい。行かない」
「もう!」
紅葉は呆れてしまった。最近いつもこうだ。
部活をやっていたころの友飛はかっこよかった。
だが夏の県大会出場を賭けた試合でまさかの弱小校に敗れた。
友飛はそれを自分のせいだと思ってる。
人に会うのを嫌いすべてにやる気を失って、ソーシャルゲームばかりに溺れていた。
彼女である紅葉はなんとか友飛にやる気を起こさせたかった。
「服とか買いに行かない? 秋物も安くなってるでしょ?」
「ふーん。……やべ! ガブリエル死んだ!」
「毒だよ。家の中にばっかりいるの……」
「だよな~。そーれーハイパーポーション!」
「後輩たち試合だってよ? 見に行かない?」
「ム~リ~! 大友情の絆ァ!」
紅葉はその手のひらを広げてスマホの画面を覆った。
「バカ! やめろ!」
「……バカ? バカはどっちよ! いつまでもクヨクヨしてさ」
友飛は無言でスマホを立てて画面で紅葉の顔を隠した。
ゲームの世界に逃げたい。ここだけが今の友飛生きる場所なのだ。
「ねぇ? 私たち付き合ってるんだよね?」
「……そうだよ」
少しばかり重い声で友飛が答える。
それを聞いて紅葉は立ち上がって、上着のボタンを外し始めた。
友飛は最初スマホに夢中で紅葉が何をしているか分からなかったが明らかに衣服のこすれる音だ。服を脱ぐ音だ。思わずスマホから顔を横にずらして紅葉の方を見た。
天岩戸ではないが、スマホから大きく顔を出して二度見した。
彼女はスカートに手をかけて下着だけになった。そして上の下着も自ら外して胸をあらわにした。
友飛は言葉もでない。生唾を飲み込んでその姿に釘づけ。
初めて見る紅葉の体に魅入っていた。
紅葉はかまわず両手を広げて全てをさらしていた。
「友飛も脱ぎなよ」
「お、おう」
友飛も慌てて立ち上がり、足を絡ませながらドタバタと服を脱ぎ恥ずかし気に紅葉の前に立った。
「手をどけて」
「う、うん……」
心臓が破裂しそうだ。突然の出来事。
友飛の頭の中にはゲームの「ゲ」の字もなかった。
「キスもしたことないでしょ? 私たち」
「う、うん」
「……して……」
友飛は紅葉の素肌に……肩に手を置いた。
吐息しか聞こえない。紅葉に息がかかるのを恐れてただ息をひそめて唇に顔を近づけた。
唇を当てる。最初はわずかな時間。
そして、もう一度。今度は少し長く。
友飛は、大きく息を吸い込んで体と体がつかないようにして長い間紅葉の唇を吸い続けた。
そして紅葉の胸に手を伸ばす……。
「ぅおっと! そこまで!」
紅葉は友飛の腕を打ち払った。
友飛は驚いて紅葉の顔を見る。
紅葉は、友飛の顔を睨みつけて下着をつけ始めた。
友飛の頭の中にはクエスチョンマークがいっぱいだ。
脱がせと言うことか? わずかにそう思ったが紅葉の言葉はまったく逆だった。
「お別れのキス」
「え? ちょっとちょっとちょっと」
「やる気のない人に魅力はないよ。もしもまだ好きなら告白から再チャレンジしてください!」
紅葉はそういいながら服を全部着てしまった。
「好きだよ! だから……」
「だから……何? 裸で言われても説得力ないんだけど」
そう言われれば友飛はまだ裸だった。
急いでパンツをはいたが、その間に紅葉はドアノブに手をかけて容赦なく部屋から出てしまおうとした。
「あーーー! 待って! 待って! 待って!」
「知らなーい。ゲームでもしてれば?」
「しないしないしないしない」
「信じられない。その気があればデートに誘ってくるでしょ」
そう言って紅葉は出て行ってしまった。
ドシン
友飛の家の中に大きな音が響いた。紅葉を追いかけようと急いでデニムに足を通した拍子に転んだのだ。
その間に紅葉は家から出た。
玄関のドアが閉まる音だ。友飛は転んだまま腕をバタつかせて急いでその紅葉の姿を窓から眺めながらスマホを手に取った。
「オーケーグーグリ。この辺の秋のデートスポットを教えて!」
『大通りの銀杏並木はいかがでしょう』
【おしまい】
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