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第6話 また寝やがった
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グズのラースが用意した寝袋に入り、その上に動物の毛皮をかけてもらった。しかしこの雪の中での野宿は寒い。寒いながらも就寝。
ラースは火を守りながら見張りをするということなので、そうさせることにした。
グズのコイツには火の番、見張りが適任よ。
疲れた体に僅かな食事が効いたのか、そのまま眠りに落ちてしまった。
だが、目を覚ましたのは深夜。それは自分で目を覚ましたのではない。
グズのラースに揺り起こされたのだ。
コイツ……。もしやグズすぎて、夜中のトイレが怖いから付いて来て欲しいなどというのではないだろうか?
イラつく。本当にイラつく。
「姫。姫」
「なによラース。今日は遅いわ。明日にしなさい」
「いえ姫。狼の大群でございます。すぐに木にお登り下さい」
「なんですって!?」
慌てて跳ね起きると、辺りは狼の赤い目玉で囲まれている。
ざっと十数頭が今か今かと襲撃しようとしているではないか!
「ラース! 見張りが聞いて呆れるわ! 一頭二頭の時に起こすべきでしょう」
「はい。そうなのですが、突然あらわれたのでございます。さぁ姫! グズグズしておれません。早く木の上へ!」
「はぁ? 私が木登りですって? 出来るわけないでしょう!」
「さ、さようですか? ではご自分で身を守れますか?」
「あなたはなんのためにいるの? 私を守るためでしょう。私は自分の身を守れません。なんとかなさい!」
「は、はい。かしこまりました!」
ラースは私をまたもや抱きかかえた。
そのまま木登りをするのかと思えば、空高く放り投げたのだ。
最初は何が起ったか分からない。だが、投げられた空の最頂点まで来ると、加速しながら落下する。
「きゃ、きゃぁ!」
私が叫んだ時。地上が真っ赤に光る。
慌ててそのほうを見ると、ラースの前に輝く火の玉が出来上がっていた。
「ボルガッ!」
「ギャン!」
ラースが一声叫ぶと、火球は高速回転し、狼の大群を追い回す。
大半の狼は焼け死に、生き残ったものも蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。
私は、そのまま落下し、落ちたところはラースの腕の上。
彼にがっちりとキャッチされていた。
「ら、ラース。今のは?」
ラースに尋ねると、ラースは完全に疲れて眠そうな顔をしていた。
「魔法にございます。姫。しかしもう休まねば姫を守ることが出来ません。ご無礼ではございますが、しばし休息をとらせて い た だ き ま──」
そういいながらラースは私を優しく地面に置くとそのまま木に寄りかかって高いびきで寝てしまった。
私はラースのまぶたが落ちる様を見ながらそれを慌てて止めようとしたが遅かった。
彼は寝た。私をこんな雪と木しかない真っ暗闇に置き去りにして意識を失ったのだ。無責任にもほどがある。
私は動物の声や鳥の羽の音に怯えながら、たき火を消さないように朝まで起きているほかなかった。
ラースは火を守りながら見張りをするということなので、そうさせることにした。
グズのコイツには火の番、見張りが適任よ。
疲れた体に僅かな食事が効いたのか、そのまま眠りに落ちてしまった。
だが、目を覚ましたのは深夜。それは自分で目を覚ましたのではない。
グズのラースに揺り起こされたのだ。
コイツ……。もしやグズすぎて、夜中のトイレが怖いから付いて来て欲しいなどというのではないだろうか?
イラつく。本当にイラつく。
「姫。姫」
「なによラース。今日は遅いわ。明日にしなさい」
「いえ姫。狼の大群でございます。すぐに木にお登り下さい」
「なんですって!?」
慌てて跳ね起きると、辺りは狼の赤い目玉で囲まれている。
ざっと十数頭が今か今かと襲撃しようとしているではないか!
「ラース! 見張りが聞いて呆れるわ! 一頭二頭の時に起こすべきでしょう」
「はい。そうなのですが、突然あらわれたのでございます。さぁ姫! グズグズしておれません。早く木の上へ!」
「はぁ? 私が木登りですって? 出来るわけないでしょう!」
「さ、さようですか? ではご自分で身を守れますか?」
「あなたはなんのためにいるの? 私を守るためでしょう。私は自分の身を守れません。なんとかなさい!」
「は、はい。かしこまりました!」
ラースは私をまたもや抱きかかえた。
そのまま木登りをするのかと思えば、空高く放り投げたのだ。
最初は何が起ったか分からない。だが、投げられた空の最頂点まで来ると、加速しながら落下する。
「きゃ、きゃぁ!」
私が叫んだ時。地上が真っ赤に光る。
慌ててそのほうを見ると、ラースの前に輝く火の玉が出来上がっていた。
「ボルガッ!」
「ギャン!」
ラースが一声叫ぶと、火球は高速回転し、狼の大群を追い回す。
大半の狼は焼け死に、生き残ったものも蜘蛛の子を散らすように逃げてしまった。
私は、そのまま落下し、落ちたところはラースの腕の上。
彼にがっちりとキャッチされていた。
「ら、ラース。今のは?」
ラースに尋ねると、ラースは完全に疲れて眠そうな顔をしていた。
「魔法にございます。姫。しかしもう休まねば姫を守ることが出来ません。ご無礼ではございますが、しばし休息をとらせて い た だ き ま──」
そういいながらラースは私を優しく地面に置くとそのまま木に寄りかかって高いびきで寝てしまった。
私はラースのまぶたが落ちる様を見ながらそれを慌てて止めようとしたが遅かった。
彼は寝た。私をこんな雪と木しかない真っ暗闇に置き去りにして意識を失ったのだ。無責任にもほどがある。
私は動物の声や鳥の羽の音に怯えながら、たき火を消さないように朝まで起きているほかなかった。
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