これ友達から聞いた話なんだけど──

家紋武範

文字の大きさ
30 / 76

【実話ホラー】集団ヒステリー

しおりを挟む
 私は幽霊を信じない。
 それは私は怖がりのために、一度、小学生の頃に幽霊や地獄のことを考えて夜眠れなくなり、暗い場所にも近付けなくなってしまったことがあったのだ。
 そんな時に、父親が私の手を引いて近所のお墓に連れて行った。そして言ったのだ。

「どうだ。お前が怖がる幽霊や火の玉がどこにある? そんなものはこの世にはないんだ。だから怖がる必要はない」

 なぜかその時、とてもホッとした。また、私が暗がりが怖いというと、お菓子が入っていた鉄の箱を用意して、

「じゃあ、その怖い気持ちをこの箱に入れなさい。そしたらお父さんが裏に埋めてきてやるから」

 と言ったので、怖いという気持ちを箱に向けて放ち(アホ)、父に渡すとスコップを持って裏庭に埋めてくれたのだ。

 その時、とても安心したように記憶している。ようは暗示なのだろうが、当時の父も私の怖がりに頭を悩ませていたのかもしれない。

 そんなこともあって、まあ怖くはあるものの、前ほど恐怖を抱かなくなり、霊という存在も、いない。と思えるようになった。

 元々、視える人ではないので、視えないなら怖くはないよね。という感覚だ。

 また私自身、ホラーを書く上でこのときのえも言われぬ恐怖というのは、とても役に立っている。こうなると怖いだろうと思いながら書くことが出来るからだ。



 話が脱線した。



 さて表題へ戻る。当時、専門学生だった私は、学生寮から学校まで自転車で通っていた。

 その学校からの帰り道である。自転車を走らせて横目に景色が線となる街並みの動きを楽しんでいた。

 しかし『それ』は突如現れた。
 電信柱と植え込みの間に、折った座布団のようなものを被った古い着物の女の子が、その景色に混ざって見えたのだ。

「え?」

 驚いて急ブレーキをかけて振り向くものの、そんなものはいなかった。
 いわゆる『雪ん子』のような格好をしていたのが印象的だったので、脳裏に焼き付いてしまった。



 次の日に学校で、こんなものを見たという話をすると、仲間たちは「幽霊だ」「お化けだ」「お前の先祖だ」とか言っていたが、ちょっと怖いよねぇ。的なのでその話は終わったかのように思われた。
 しかし、放課後付近に、男友達の友人という二人の女が、青い顔をしながらやってきたのだ。

 まあ男友達はA、二人の女はBとCにしよう。
 Aは、そのBとCに先ほどの話をすると、BとCは常々霊感がある、徐霊出来るというタチの人たちで、「きっと昔の戦争で亡くなった人だ。家紋さんが優しい人だと思って、私たちを呼んでくるように頼ったのだ」と脳内変換し、使命感から近付いて来たのだった。

 『雪ん子』のそれは、おそらくは『防空頭巾』で、防空壕に逃げる際に亡くなったのであろうというストーリーを言っていたので、たしかにその都市は、昔大空襲があった場所だったので、その時は若干信じてしまっていた。

 そして私は自転車だが、三人は電車でそこに行くというので、彼らを電車に乗せて私は寮近くの駅まで自転車で迎えに行った。

 まあ私と付き合いのあるかたは知っているが、私はそれなりに無神経なので、その駅からその場所まで3キロくらいあることをまだ言ってなかった。

 なので……と言うとおかしいが、私が駅に迎えに行くと、BがCをベンチに座らせて介抱していたのだ。

 Cは絶えず「寒い……、寒い」といい放ち、Bは「大丈夫? 大丈夫」とやっている。「Bちゃんは私よりも力が強いから大丈夫なんだね」「うん、でも結構この辺は強力だよね」と言っていたのだ。
 Aも、二人の様子に怖がって真っ青だったが、私は気付いてしまった。

 いや学校のある場所だって空襲あったろうし、どうして駅を降りたとたん?
 恐らく彼女たちは、私が言っていた場所がすぐ近くだと思ったので、霊が近くにいると思い込んだ・・・・・のだ。

 そして霊の影響を受けたと言っている。ここでワイのワイの騒いで「わー、霊が視えるんだね、スゴいね」と人にはない力を誉めて欲しいペテン師なのだと。

 意地が悪いが、ここからかなり遠いという話は伏せて、『雪ん子』の見えた場所へと案内し始めた。

 すると道すがら「あそこに二人いる!」だの、「寒い」「頭痛い」だのやっていた。Aはその都度怯えていたが、道半ばまでくると、徐々にそれも少なくなり「家紋さん、まだですか?」と聞く始末。

 いや霊がいる場所分かるんじゃないの? と思いつつも「もう少し」と言って置いた。

 そのうちにBが「あそこに首のない人がいる!」と言い出し、Cも視える。分かる、とか言い出したので、「へー、どんな服装?」と聞くと顔を見合わせて、Cが「洋服」とか答えると、Bも「そうそう」と同調するので「何色?」と聞くとCが「赤……いや血で染まった白かも」とか言っていた。
 その時、Aは私の真意に気付いたようで、少し黙った。そしてBとCも私が疑っていると思い、無口になって雰囲気は悪くなったものの、その場所へは到着した。

「ここだけど」

 というと、Bは手を合わせて「わぁ」とか言っていたが、Cは「えー私は何も感じないなぁ」と主張がバラついた。Bも合わせた手を下ろして「私も」とか言い出し、「じゃあ何もいないの? 気のせい?」と言うと、面倒臭そうに「そうじゃない」とか言って街中にカラオケに行くと言ってAを率いて帰っていってしまった。



 自分には目に見えない力があると思い込んでしまった人々とは、これからもそのまま生きていくのだろうか?
 なんにしろ、あの『雪ん子』は本当に気のせいだったのだろうか?

 そして自分の意地の悪い性格。これがホントに怖い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...