右手に剣、左手にカエル姫

家紋武範

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クインスロメン王国

第35話 魔女への戦略

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道中はやはり想像した以上のものだった。
女尊男卑じょそんだんひと言うべきだろうか?
男には人権のようなものが存在しない。
一人のものを一つの村でかわりばんこに共有するというものだ。
そこには愛は存在しないし、男性の自由は存在しない。

危機的状況にあるのだから増える為に男は我慢しろと言ったものだ。
戦争捕虜の扱いはもっとヒドい。
外出の自由がない。
すでに国元には戦死が伝えられ、その実情は一つの集落の窓もない建物に幽閉されている。
村の娘が排卵日となるとその時だけ出され、交合することを許されるのだ。

100人に一人生まれるかどうかの男は、少年や老人の年齢の差など関係なく、とにかくそういう扱いだった。


その呪いのいばらの魔女を討伐しようと言うものはいなかったのか?
そうではない。諸外国から勇士を募り、何度も討伐隊を結成したらしいが、ことごとく戻ってこなかったらしい。

まず住んでいる場所が、深い森を越え途中から全ての植物がいばらとなるらしい。
何百年も手入れされておらず、太い樹木のようなこの棘は切り倒すことなど並大抵でない。
それを越えると高い塔があり、そこに住んでいると言う。

デラエア姫に呪いをかけた“黒の森の魔女”の話でも一度触れたが、魔法を使えると言うのは負のエネルギーが必要なのだ。
怒り、妬み、恨み、苦しみに染まってしまったもの。
そういうものが大魔導士の素質を持っている。

学問があり、悪魔なども召喚出来るが人と言うより「魔」に近い。
世間から隔絶し、話や情など通用しないのだ。
嫌らしい、利己的なものが多い。
自分の利益の為に人を恨み、呪われたものたちを笑う。
それが魔女、魔法使いと呼ばれるものになるなのだ。
ましてや諸外国の勇士が倒され続けたと言うのは、恐ろしい強さ。そして人を人と思わぬ卑怯さももっているのだろう。

グレイブには魔法の備えがなく、出来れば正面から魔法使いに当たりたくはない。
だが今後、姫の為に“黒の森の魔女”と戦うことにもなるだろう。
それには経験が必要だ。国一つを呪う魔女との闘い。
恐ろしいが、グレイブには腰のボトルがあった。そこには頼もしい精霊たちが納められているのだ。

それが頼りだ。
1本目、影の液体「シャルドウネ」
2本目、光の妖精「スパリグ」
3本目、物真似「フオティ」
4本目、竜巻の精霊「カヴェルーネ」
5本目、倉庫の「ステイル」
7本目、小魔王「ビンテジ」
8本目、不死王「デスキング」
9本目、土の妖精「ボウルド」
10本目、雷鎚いかづちの妖精「リスリグ」
11本目、「地獄の門」

まだ6本目は開けられていない。今後、登場するが身を守る精霊が入っている。
この中で魔法として使えるのは4本目の「カヴェルーネ」、10本目の「リスリグ」であろう。
11本目の「地獄の門」もいいかも知れないが、使い方が悪いと自分たちが送られてしまうかも知れない。そこは慎重に行かねばならぬと考えた。


一行は集落での休息は避け、人の立ち寄らぬ場所でキャンプをしながらこの国の王都を目指した。
たくさん買い込んだ食糧はまだ余裕がある。
水も、革袋に入れたものがたくさんステイルの中に納められている。デライア姫のカエルの肌を万一にも干上がらせはしない。
物資は充分だ。その中でガッツの料理に舌つづみを打つ。
楽しい旅だ。

その中で、グレイブはハーツへ剣術を教えた。自分の大剣ではない。ハーツにはその膂力りょりょくがないと見定めたのだ。
だが動きが素早い。軽量の武器がよい。
短刀、細身の長剣、滑車を使わなくても引ける簡易なボウガン

ハーツは刃渡り60cmほどの短刀を好んだ。
それを二本。つまり二刀流。
器用なレイバはハーツのために、馬車の手すりにボウガンを設置してくれた。
これで簡単に引き抜いて、馬車を走らせながら敵と戦うことも可能だ。

ハーツが戦力になることが目に見えて分かり、グレイブも頼りに思ったが顔には出さなかった。
まだ、姫との旅路の厄介者と思っている。
ハーツもそれは気になっており、いずれ手柄を立てて見直してもらおうと思っていた。
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