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クインスロメン王国
第38話 デュラハンとの戦い
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グレイブは面白そうに自分のあごを撫でさすった。
「ほぉ、これはデュラハンか。初めて見た」
デュラハンとは、まさにこの見た目だ。
首無しの重騎馬に股がった首無しの騎士。生あるものに死を宣告し立ち去ると言う。
そして期日には自分がその者の命を奪うと伝えられている。
デュラハンが腰を抜かしているハーツに背中を向け立ち去ろうとするのをグレイブは止めた。
「待て待て。君はすでにこの世の者ではない。なぜ迷い人に危害を加えようとするのか?」
デュラハンは振り返り、グレイブの方に首を差し出した。
「もう一人いたのか。貴様は誰だ」
「オレはグレイブだ。君が迷っているのなら成仏する手伝いをしよう」
「いらぬお世話だ。小賢しい人間め」
「人間? 自分は人間だったのではないのか?」
デュラハンの首は不気味に笑った。
「明日また来よう」
グレイブの質問には答えず、ただハーツに死の宣告を与えただけだ。グレイブはこの亡霊に恐れもせず馬の尻尾を掴んで止めた。当然、馬は後脚で蹴り上げて来たが、瞬時に自慢の拳で馬の脚が折れるほど打ち殴った。
「なっ!」
デュラハンが一声上げて馬ごとよろめく。
何が起こったかわからない様子だ。ひ弱い人間が自分を恐れもせず、馬の後脚の蹴りすら殴りつけるとは。
「オレの部下の寿命を減らすと言うのだな。そんなことはさせぬ。代わりにオレの寿命を占ってみるがいい」
グレイブの言葉にデュラハンは笑った。
「不遜な。寿命は天から示されるもの。天とは即ち儂だ。貴様の命数は残り……」
デュラハンは最初笑っていたが首をかしげる。どんなに命があろうとも自分が寿命を決められる能力がある。
命を奪うのはこのデュラハンの権利だ。
だが、目の前の男からは命の数が見えない。
先の見えない通路のように、寿命の先が暗くかすんで見えないのだ。
「さぁ、どうだ。オレの命はあと何日なんだ?」
「貴様の……貴様の命は……」
「面白い。さぁ言ってみろ。何日なんだ?」
「それは今だ!」
デュラハンは素早く腰の剣を抜き去り、グレイブの首を目掛けて振り下ろして来た。
だがこの勝負はすでにグレイブの勝ちだ。
デュラハンは冷静さをかいた。グレイブはデュラハンがどんな手で攻めてくるか想像していた。
グレイブが親指で大剣の鍔を弾くと勢いよく伸びてデュラハンの剣撃を跳ね返した。
その反動でグレイブの剣は鞘に元通り収まる。
デュラハンは馬ごとよろめいてしまった。
グレイブが次の手を打つのに充分な時間。
彼は親指で大剣がおさめられている鞘のロックを外すと、簡単にスランと音を立てて抜けきった。
姫を片手に持っていないので、本気の両手持ち。
楽しそうに、正眼の構えがいいか、上段の構えがいいか、八双の構えがいいか、大剣と体の向きを変えながらデュラハンが体勢を整えるのを待った。
「こ、小僧!」
デュラハンが歯ぎしりをしながら剣を持ち直す頃に、グレイブは大剣を脇構えへと移していた。
これは、左足を前とし右側に両手を下げ剣先は遥か後ろ。
剣の長さを判別するのが難しく、相手は間合いを測るのが難しい。
そして敵は馬上。剣を振り上げたり、馬の脚を斬ってしまうのにはとても良い形だった。
だが左側は無防備に見える。デュラハンは馬を回してそちらに寄ろうとするが、グレイブは軸足をそのままに回転し、弱点に攻め入られないようにしていた。
デュラハンはイラつき、『いやぁ!』と声を上げ馬を飛び上がらせ、頭上から斬り込もうとしたがグレイブの思うつぼだった。
剣速が早い。風の音が後からついてくるようだ。
振り上げられた大剣に馬とデュラハンは鎧ごと叩き潰され、地面に転がり落ちてしまった。
「ほぉ、これはデュラハンか。初めて見た」
デュラハンとは、まさにこの見た目だ。
首無しの重騎馬に股がった首無しの騎士。生あるものに死を宣告し立ち去ると言う。
そして期日には自分がその者の命を奪うと伝えられている。
デュラハンが腰を抜かしているハーツに背中を向け立ち去ろうとするのをグレイブは止めた。
「待て待て。君はすでにこの世の者ではない。なぜ迷い人に危害を加えようとするのか?」
デュラハンは振り返り、グレイブの方に首を差し出した。
「もう一人いたのか。貴様は誰だ」
「オレはグレイブだ。君が迷っているのなら成仏する手伝いをしよう」
「いらぬお世話だ。小賢しい人間め」
「人間? 自分は人間だったのではないのか?」
デュラハンの首は不気味に笑った。
「明日また来よう」
グレイブの質問には答えず、ただハーツに死の宣告を与えただけだ。グレイブはこの亡霊に恐れもせず馬の尻尾を掴んで止めた。当然、馬は後脚で蹴り上げて来たが、瞬時に自慢の拳で馬の脚が折れるほど打ち殴った。
「なっ!」
デュラハンが一声上げて馬ごとよろめく。
何が起こったかわからない様子だ。ひ弱い人間が自分を恐れもせず、馬の後脚の蹴りすら殴りつけるとは。
「オレの部下の寿命を減らすと言うのだな。そんなことはさせぬ。代わりにオレの寿命を占ってみるがいい」
グレイブの言葉にデュラハンは笑った。
「不遜な。寿命は天から示されるもの。天とは即ち儂だ。貴様の命数は残り……」
デュラハンは最初笑っていたが首をかしげる。どんなに命があろうとも自分が寿命を決められる能力がある。
命を奪うのはこのデュラハンの権利だ。
だが、目の前の男からは命の数が見えない。
先の見えない通路のように、寿命の先が暗くかすんで見えないのだ。
「さぁ、どうだ。オレの命はあと何日なんだ?」
「貴様の……貴様の命は……」
「面白い。さぁ言ってみろ。何日なんだ?」
「それは今だ!」
デュラハンは素早く腰の剣を抜き去り、グレイブの首を目掛けて振り下ろして来た。
だがこの勝負はすでにグレイブの勝ちだ。
デュラハンは冷静さをかいた。グレイブはデュラハンがどんな手で攻めてくるか想像していた。
グレイブが親指で大剣の鍔を弾くと勢いよく伸びてデュラハンの剣撃を跳ね返した。
その反動でグレイブの剣は鞘に元通り収まる。
デュラハンは馬ごとよろめいてしまった。
グレイブが次の手を打つのに充分な時間。
彼は親指で大剣がおさめられている鞘のロックを外すと、簡単にスランと音を立てて抜けきった。
姫を片手に持っていないので、本気の両手持ち。
楽しそうに、正眼の構えがいいか、上段の構えがいいか、八双の構えがいいか、大剣と体の向きを変えながらデュラハンが体勢を整えるのを待った。
「こ、小僧!」
デュラハンが歯ぎしりをしながら剣を持ち直す頃に、グレイブは大剣を脇構えへと移していた。
これは、左足を前とし右側に両手を下げ剣先は遥か後ろ。
剣の長さを判別するのが難しく、相手は間合いを測るのが難しい。
そして敵は馬上。剣を振り上げたり、馬の脚を斬ってしまうのにはとても良い形だった。
だが左側は無防備に見える。デュラハンは馬を回してそちらに寄ろうとするが、グレイブは軸足をそのままに回転し、弱点に攻め入られないようにしていた。
デュラハンはイラつき、『いやぁ!』と声を上げ馬を飛び上がらせ、頭上から斬り込もうとしたがグレイブの思うつぼだった。
剣速が早い。風の音が後からついてくるようだ。
振り上げられた大剣に馬とデュラハンは鎧ごと叩き潰され、地面に転がり落ちてしまった。
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