40 / 79
クインスロメン王国
第40話 精霊強化
しおりを挟む
馬車で三日間。棘の魔女を求めてキャンプをしながら進んだ。
やがて深い森に差し掛かるとグレイブは馬車を停めさせた。
「さて、ここからは私とハーツで行くことにしよう。ガッツとレイバは魔物や山賊に襲われないよう、近くの集落で信用ある女傭兵を雇って姫と己の身を守り、宿で寝るように」
そう言って、金袋を渡した。
「それから、それぞれにボトルを渡しておく」
ガッツとレイバには、荷物入れのステイルと物真似フオティ、目くらましを使うスパリグと、影の液体シャルドウネ。
いざとなったら、目くらましや物真似フォティで難局を乗り切れとのことだ。
「ハーツにはこれだ」
それはまだ、物語が始まってからグレイブが開けていない6本目のボトルだった。
「こ、これは?」
「それには鎧の精霊ヴリュトが入っている。長い髪の毛の鎧で、あらゆる物理攻撃や魔法攻撃を避けるんだ。重くはない。ただ時間は3分ほどだ。そして一度使うと疲れてしまってすぐには使い直せない。私はこの通り不死だから余り使わないんだ。それはハーツが持っていていい。レイバ。後ほど得意のレザークラフトでハーツのベルトにボトルホルダーを作ってやってくれ」
「へぇ。お安いご用でやす」
「よし。ではハーツ行くぞ」
「へぇ!」
ハーツは取り敢えず、鎧の精霊ヴリュトが入ったボトルをズボンのポケットに入れ、簡易的なキャンプ道具を背負ってグレイブに続いて森の中に入って行った。
森の中は暗く深い。グレイブはたいまつに火を点けて、何十年も使われていない道の跡を辿って進んで行った。
木の枝や蜘蛛の巣が二人の進路に邪魔をする。
それをハーツが先に進み、得意の二刀流で切ったり退かしたりしながら二人は進行した。
人家の跡らしき場所で暖を取り、キャンプを行った。
森は二人に飢えや渇きは与えなかった。
人がいなくなって久しいのであろう。
森の生き物は簡単にグレイブやハーツに捕まり、彼らの食料となった。
やがて森の植物に変化がある。
棘の量が多くなり始めたのだ。
しばらくすると棘だらけで、その固い刺に邪魔され二人は先に進めなくなった。
その棘の森の向こうには高い塔が見える。
それも棘の蔦に覆われているようだった。
目的地はあそこだ。
「ほう。どうやらあそこのようだな」
「ええ。アニキ。ですがこれじゃ前に進めませんぜ?」
「ああ。切ってしまうにも幅や高さがある。難しいな。いかがしたものだろう」
その時だった。強い突風が二人を襲う。
グレイブはすかさず大剣を抜いて地面に突き刺し踏ん張る。
ハーツはその腰にしがみついた。
「アニキ! こりゃ普通の風じゃありやせん!」
「どうやらそのようだな」
風が通り過ぎたと思ったら、今度は逆方向から吹いてきた。
今度はもっと力強い。
どうやら二人を棘の森に吹き飛ばし、刺をもって串刺しにしてしまうつもりだ。
「ははーん。棘の魔女が使う風の精霊らしい。今までの勇士達はこれに飛ばされて森の肥やしになったんだな」
「アニキ! 悠長なことをおっしゃってる場合じゃございやせん! あっしらも同じ運命ですぜ!」
「まぁ見ていよ。この勝負オレたちの勝ちで、この森を抜ける算段も見つかった」
「はぁ!?」
グレイブは腰のボトルに手を伸ばす。
ポンっと勢いよい音が鳴ると、目の前につむじ風の精霊、カヴェルーネが飛び出してきた。
カヴェルーネは突風が来るたびに回転すると、それを飲み込んでしまうようだった。
たちまち突風はカヴェルーネと同化し、カヴェルーネの大きさは二倍以上となってしまった。
「あ、アニキ。これは……」
「この風の精霊たちは同化し合う。カヴェルーネは今まで三体の風の精霊と同化して今の大きさになったのだ。これで四体目。力も強くなり、大きさも増したようだな」
「すげ! アニキはやっぱりすげぇでやす!」
「カヴェルーネ。この棘の森を根こそぎ破壊してしまえ!」
グレイブが命ずると、カヴェルーネは風速何十メートルという台風のように大きく回転し、棘の塔までの棘の森を薙ぎ倒してしまった。
「ふーん。想像したよりはまだ少し弱いな。まだまだ大きくなりそうだ」
グレイブはカヴェルーネをボトルへしまい、抜いた大剣を腰に戻すと、ハーツと共に塔までの道を急いだ。
やがて深い森に差し掛かるとグレイブは馬車を停めさせた。
「さて、ここからは私とハーツで行くことにしよう。ガッツとレイバは魔物や山賊に襲われないよう、近くの集落で信用ある女傭兵を雇って姫と己の身を守り、宿で寝るように」
そう言って、金袋を渡した。
「それから、それぞれにボトルを渡しておく」
ガッツとレイバには、荷物入れのステイルと物真似フオティ、目くらましを使うスパリグと、影の液体シャルドウネ。
いざとなったら、目くらましや物真似フォティで難局を乗り切れとのことだ。
「ハーツにはこれだ」
それはまだ、物語が始まってからグレイブが開けていない6本目のボトルだった。
「こ、これは?」
「それには鎧の精霊ヴリュトが入っている。長い髪の毛の鎧で、あらゆる物理攻撃や魔法攻撃を避けるんだ。重くはない。ただ時間は3分ほどだ。そして一度使うと疲れてしまってすぐには使い直せない。私はこの通り不死だから余り使わないんだ。それはハーツが持っていていい。レイバ。後ほど得意のレザークラフトでハーツのベルトにボトルホルダーを作ってやってくれ」
「へぇ。お安いご用でやす」
「よし。ではハーツ行くぞ」
「へぇ!」
ハーツは取り敢えず、鎧の精霊ヴリュトが入ったボトルをズボンのポケットに入れ、簡易的なキャンプ道具を背負ってグレイブに続いて森の中に入って行った。
森の中は暗く深い。グレイブはたいまつに火を点けて、何十年も使われていない道の跡を辿って進んで行った。
木の枝や蜘蛛の巣が二人の進路に邪魔をする。
それをハーツが先に進み、得意の二刀流で切ったり退かしたりしながら二人は進行した。
人家の跡らしき場所で暖を取り、キャンプを行った。
森は二人に飢えや渇きは与えなかった。
人がいなくなって久しいのであろう。
森の生き物は簡単にグレイブやハーツに捕まり、彼らの食料となった。
やがて森の植物に変化がある。
棘の量が多くなり始めたのだ。
しばらくすると棘だらけで、その固い刺に邪魔され二人は先に進めなくなった。
その棘の森の向こうには高い塔が見える。
それも棘の蔦に覆われているようだった。
目的地はあそこだ。
「ほう。どうやらあそこのようだな」
「ええ。アニキ。ですがこれじゃ前に進めませんぜ?」
「ああ。切ってしまうにも幅や高さがある。難しいな。いかがしたものだろう」
その時だった。強い突風が二人を襲う。
グレイブはすかさず大剣を抜いて地面に突き刺し踏ん張る。
ハーツはその腰にしがみついた。
「アニキ! こりゃ普通の風じゃありやせん!」
「どうやらそのようだな」
風が通り過ぎたと思ったら、今度は逆方向から吹いてきた。
今度はもっと力強い。
どうやら二人を棘の森に吹き飛ばし、刺をもって串刺しにしてしまうつもりだ。
「ははーん。棘の魔女が使う風の精霊らしい。今までの勇士達はこれに飛ばされて森の肥やしになったんだな」
「アニキ! 悠長なことをおっしゃってる場合じゃございやせん! あっしらも同じ運命ですぜ!」
「まぁ見ていよ。この勝負オレたちの勝ちで、この森を抜ける算段も見つかった」
「はぁ!?」
グレイブは腰のボトルに手を伸ばす。
ポンっと勢いよい音が鳴ると、目の前につむじ風の精霊、カヴェルーネが飛び出してきた。
カヴェルーネは突風が来るたびに回転すると、それを飲み込んでしまうようだった。
たちまち突風はカヴェルーネと同化し、カヴェルーネの大きさは二倍以上となってしまった。
「あ、アニキ。これは……」
「この風の精霊たちは同化し合う。カヴェルーネは今まで三体の風の精霊と同化して今の大きさになったのだ。これで四体目。力も強くなり、大きさも増したようだな」
「すげ! アニキはやっぱりすげぇでやす!」
「カヴェルーネ。この棘の森を根こそぎ破壊してしまえ!」
グレイブが命ずると、カヴェルーネは風速何十メートルという台風のように大きく回転し、棘の塔までの棘の森を薙ぎ倒してしまった。
「ふーん。想像したよりはまだ少し弱いな。まだまだ大きくなりそうだ」
グレイブはカヴェルーネをボトルへしまい、抜いた大剣を腰に戻すと、ハーツと共に塔までの道を急いだ。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる