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第26話 使用人
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シーンとエイミーは、たくさんある部屋を見て、今日はここで寝ると決めていた場所に下男と御者に持ってきた荷物を運ばせていた。そこには、一抱えほどの大きさの箱が三つ。中には金貨が入っていた。
これはトロル討伐のご褒美でもらった金貨の箱。シーンはアルベルトから持っていくようにと三箱渡されていた。
この国の貨幣は三種類に分かれている。銅貨、銀貨、金貨の順で価値が高い。
銀貨一枚で小麦が5キログラム入った袋が一つ。
鶏なら4羽。豚一頭で銀貨三枚。
銅貨は銀貨の10分の一。
金貨は銀貨の10倍で、牛一頭三枚で取引される。
領民たちは主に物々交換で、昔グラムーン家から与えられた農具や家畜を大事に扱っているのだろう。
金貨の箱には一箱720枚入っていた。それが三つ。相当な量だ。シーンはお金を自分のために使おうなんてこれっぽっちも思っていなかった。
領地経営など考えず、領民のためになることにお金を使ってしまおうと思っていたのだ。
次の日からシーンとエイミーは大忙しだった。屋敷にしまわれていた小さなオモチャみたいな馬車を引っ張り出して御者に運転させて領地の端から端まで家々を回った。
領民は領主の巡察ということで、おのおの出迎えて歓待した。
シーンはそれぞれの家々を見て回り、農作業用の牛や馬のいない家には、それを入れる柵を作っておきなさいと命じ、鶏小屋や豚を入れる小屋を作るように言って回った。
これには領民たちも、あの約束を本当に守られるつもりなのだと目を丸くしたものの、まさか守られるわけはあるまいと思うものが大半だった。
一週間もすると、都から使用人たちが集まってきた。顔なじみのものもいれば、新しく来たものもいる。シーンとエイミーは、それぞれを楽しそうに下男部屋に案内した。
初めて来たものは、自ら部屋に案内するなんてこんなご主人は初めてと驚いていた。
しかし、一人だけ雰囲気が違うものがいた。
細いメガネに、尖ったヒゲ。痩せ型のスーツ姿で眉間に皺が寄っている。見た目がすでに厳しそうだが、シーンとエイミーは同じように歓待した。
「ウオッホン。ご主人さまでいらっしゃいますか。私はウォールと申します」
「ようこそ、ウォール」
「グラムーン伯爵さまより、こちらの家宰を任すと言われて参ったのです。当年とって29歳。前はトニウェル子爵のお屋敷で厄介になっておりましたが、紹介を受け参りました。屋敷の管理は私にお任せ下さい。また領地経営も私が勤めます」
「そうか。よろしく頼むよ」
ウォールが来たことで、シーンとエイミーはそれにまかせて、都と同じように駆け回って遊んだ。といっても領民がしている仕事に気付くと、そこに駆けて行って手伝いをするのだ。干し草をまとめたり、農作業へ行く、牛の尻を棒で叩いたり。領民たちは、あれが国の英雄。それが子どものように手伝いをしてくれると、恐れ入りながらも微笑ましく見ていたのだ。
家宰のウォールは良く家をまとめた。しかし領地の経営は今のままでも充分に収益があると関心を示さなかった。
その裏で、シーンは領民との約束を果たすべく、都から商人を呼ぶ算段をしていた。下男のトマスに馬を貸し、畜産の商人や、農具の商人をつれてくるよう命じたのである。
トマスは早速馬に乗り、都を目指して走っていった。
これはトロル討伐のご褒美でもらった金貨の箱。シーンはアルベルトから持っていくようにと三箱渡されていた。
この国の貨幣は三種類に分かれている。銅貨、銀貨、金貨の順で価値が高い。
銀貨一枚で小麦が5キログラム入った袋が一つ。
鶏なら4羽。豚一頭で銀貨三枚。
銅貨は銀貨の10分の一。
金貨は銀貨の10倍で、牛一頭三枚で取引される。
領民たちは主に物々交換で、昔グラムーン家から与えられた農具や家畜を大事に扱っているのだろう。
金貨の箱には一箱720枚入っていた。それが三つ。相当な量だ。シーンはお金を自分のために使おうなんてこれっぽっちも思っていなかった。
領地経営など考えず、領民のためになることにお金を使ってしまおうと思っていたのだ。
次の日からシーンとエイミーは大忙しだった。屋敷にしまわれていた小さなオモチャみたいな馬車を引っ張り出して御者に運転させて領地の端から端まで家々を回った。
領民は領主の巡察ということで、おのおの出迎えて歓待した。
シーンはそれぞれの家々を見て回り、農作業用の牛や馬のいない家には、それを入れる柵を作っておきなさいと命じ、鶏小屋や豚を入れる小屋を作るように言って回った。
これには領民たちも、あの約束を本当に守られるつもりなのだと目を丸くしたものの、まさか守られるわけはあるまいと思うものが大半だった。
一週間もすると、都から使用人たちが集まってきた。顔なじみのものもいれば、新しく来たものもいる。シーンとエイミーは、それぞれを楽しそうに下男部屋に案内した。
初めて来たものは、自ら部屋に案内するなんてこんなご主人は初めてと驚いていた。
しかし、一人だけ雰囲気が違うものがいた。
細いメガネに、尖ったヒゲ。痩せ型のスーツ姿で眉間に皺が寄っている。見た目がすでに厳しそうだが、シーンとエイミーは同じように歓待した。
「ウオッホン。ご主人さまでいらっしゃいますか。私はウォールと申します」
「ようこそ、ウォール」
「グラムーン伯爵さまより、こちらの家宰を任すと言われて参ったのです。当年とって29歳。前はトニウェル子爵のお屋敷で厄介になっておりましたが、紹介を受け参りました。屋敷の管理は私にお任せ下さい。また領地経営も私が勤めます」
「そうか。よろしく頼むよ」
ウォールが来たことで、シーンとエイミーはそれにまかせて、都と同じように駆け回って遊んだ。といっても領民がしている仕事に気付くと、そこに駆けて行って手伝いをするのだ。干し草をまとめたり、農作業へ行く、牛の尻を棒で叩いたり。領民たちは、あれが国の英雄。それが子どものように手伝いをしてくれると、恐れ入りながらも微笑ましく見ていたのだ。
家宰のウォールは良く家をまとめた。しかし領地の経営は今のままでも充分に収益があると関心を示さなかった。
その裏で、シーンは領民との約束を果たすべく、都から商人を呼ぶ算段をしていた。下男のトマスに馬を貸し、畜産の商人や、農具の商人をつれてくるよう命じたのである。
トマスは早速馬に乗り、都を目指して走っていった。
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