シーン・グラムーンがハンデを乗り越えて幸せになる

家紋武範

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第47話 叙爵

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 シーンとアルベルトの馬車は王宮の門で停められ、係りに馬車を任せると二人は徒歩で王宮へと入っていった。
 そのまま玉座へ向かい、アルベルトは武官の立つほうへ。シーンは国王の前にひれ伏した。

「愚臣シーン、お召しにより陛下に拝謁致します」
「勇士シーンよ! よくぞ参った。心待ちにしておったぞ。面を上げよ」

 シーンは許されて顔を上げ立ち上がる。国王は笑顔でシーンへ今回の功績を述べた。

「勇士シーンは単身サイルへと乗り込み、賊将ベルゴールとその一族郎党二十余首を上げ、ギリアム王太子を救助せしめたことは誠に顕著である。これらを踏まえて余はそなたにふさわしい褒賞を与えなければなるまい」
「愚臣にはもったいないお言葉。ありがたき幸せに存じます」

「勇士シーンには、褒賞金として金貨10箱、並びに女神白金章、そして白鷺大勲章を贈る!」
「ありがとうございます」

 金貨一箱には720枚入っている。それが10箱なので7,200枚である。
 二つの勲章は国家を救ったものに贈られる上位勲章であった。
 国王はさらに続けた。

「此度の勇猛な働きは古の勇者モッズやクリフォード。オウルズと並ぶものであった。栄光を称えて建国以来四人目の勇者称号を与える!」

 居合わせたもの全てが歓声を贈る。国王はまだまだ続ける。

「勇者称号を持つものは、金貨千枚の年金が贈られることが規定にある。さらに、爵位を公爵とし、封地を与えるよう定められている。勇者シーンにはグラムーンを除いたバイバル州、並びにビジュルを除いたサイル州を与え、バイバル公爵を名乗ることを許す」

 それに対し大臣たちは声を合わせて祝賀の声を上げた。

「バイバル公爵、勇者シーン、おめでとうございます!」

 シーンはそれに頭を下げて応えた。そこに国王はさらにシーンに言葉を掛けた。

「勇者シーンは、グラムーン伯爵領をそのうちに世襲するのであろう。そうなるとバイバル州、サイル州合わせて18郡の領主となる。子々孫々まで、栄誉を楽しむがよい」
「はい。ありがたき幸せに存じます」

 この国では、父の爵位と領地を世襲する。重複したものは子孫や親族に引き継げる。また自身の直属の部下にも領地を与えることが出来るのだ。
 そのため爵位を得、領地が増えればよい人材が集まってくるのだ。

「勇者にはそれなりの職務が必要だ。勇者シーンには、我が国四軍のうちの東を守備する軍団長を命ずる。また白銀の鎧と駿馬、軍部の近くに大きな邸宅を授けよう」
「愚臣シーン、君命をお受け致します」

 国王は褒賞の目録と、叙爵と任官の書を係の書記官にシーンに渡させ、一つ咳払いをして続ける。

「シーンよ。そなたは知っておるか?」
「なにをでございましょう?」

「実はな、我が国の宰相の娘は都の名花と呼ばれるほどの佳人であるとか。その名をサンドラと申す」
「ああ。存じております」

「その娘を、名家の令息はこぞって求婚するものの、みな断ってしまったそうだ」
「左様でありますか」

 シーンはさして興味もなさそうに答えた。
 だがギリアムは父である国王がサンドラを勧めるのだろうと思い慌てた。シーンを尊敬するものの、未だにサンドラの気持ちを捨てきれていなかったのだ。

「陛下に進言致します」
「ギリアムか。申せ」

「勇者シーンは、愛する妻がおります。トロル討伐の際、正妻に認めて欲しいと言った彼女でございます。彼は私を救いに来たときでも、彼女を傍らに置き抱き締めておりました。勇者にサンドラの話は不要かと」

 それを聞いた国王は、そうかそうかと頷きながらシーンへと話を続ける。

「そんな大事な妻がいるのだな。なるほどな。そのサンドラだが勇者称号を受けたものの嫁になりたいそうなのだ。余の姪だからな。シーンの元に行くのならば嬉しい限りだが、サンドラを妾にするつもりはないか?」

 だがシーンははっきりと声を上げて答えた。

「愚臣はサンドラを妾にするつもりなどありません!」

 余りにも大きな声なので、みんな驚いて辺りは静寂が支配した。
 国王はその迫力に身を引いてしまっていたが、シーンに伝えた。

「左様か。では本日は以上である。なにか質問はあるか?」
「さすれば一つお伺いがございます」

「申してみよ」
「先ほど邸宅のお話しを頂きましたが、それは本日から住んでもよろしいのでしょうか? また家族と暮らしてもよろしいですか?」

「うむ。すでに使用人が入り家具も準備してある。何かあれば使用人に問うといい」
「ありがたき幸せ。ではさっそく妻を迎え入れましょう」

 そう言ってシーンは、アルベルトを伴って国王から暇乞いをして玉座の間から去っていった。

 国王は、シーンの英雄ぶりを褒め称えると大臣たちはそれに同調して声を上げた。
 そこにギリアムが進み出る。

「陛下にお願いがございます」
「おおギリアムか。どうした申してみよ」

「私はサンドラを好いております。先ほどの勇者シーンの言葉を聞きますに、サンドラには全く気がありません。私は勇者にはなれませんでしたが、やはり彼女を諦めきれません。私はサンドラを妃として迎えたく存じます」
「うむ。勇者シーンがサンドラを娶らないならばよいだろう。サンドラを妃に迎えるのを許そう」

「ありがたき幸せ! では早速結納金を用意して本日迎えに参ります!」
「なんと今日か。そなたはせっかちであるな」

「はい。ではこれにて。ぐずぐずしてはおられません」

 ギリアムは国王と大臣に暇乞いをすると、駆けるように出ていってしまった。



 シーンはアルベルトとともに王宮をでる。アルベルトは我が子シーンの出世を喜び、馬車までの道のりをずっと上機嫌だった。

「いやぁまさか我が子が公爵となるとは。ワシは鼻が高い。シーンよ。いや閣下とお呼びしたほうがよいかな? バイバル公」
「いえいえ。私はいつまでも父の子です。そのような他人行儀はお止めください」

「それもこれもエイミーが病気を治してくれたからたからだな。エイミーには感謝してもしきれんよ。君は国家の重責、東軍団長となったが、休暇の折りには北都ノートストに出向いて、義父パイソーン伯爵にお礼を言わねばならんぞ? その前に手紙だ。私は勇者称号を受けましたーとな?」
「ええその通りですね、父上」

 二人は馬車にたどり着いて、アルベルトが先に乗り込んだが、シーンはその扉を閉めてしまった。
 アルベルトは窓を開けてシーンに訪ねる。

「どうしたシーン。共に都の屋敷に帰ろうではないか。お前は母ジュノンに本日の報告をしなくてはならん」
「それが父上、私はこの後に少し用があります。本日は陛下から頂いた邸宅に泊まるつもりです」

「おう左様か。では明日屋敷に来るのか?」
「ええ。明日いろいろご報告致します」

「そうかそうか」

 アルベルトは御者に馬車を出させた。シーンはそれを見送った後に歩き出した。
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