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いざ決戦! 真夏の鈴鹿8耐
2022年FIM世界耐久選手権第3戦 第43回コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース
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昨日の予選から一夜明けて迎えた、鈴鹿8耐の決勝。今回は終日晴れという事と3年ぶりの開催という事で、感染症が流行ってる中にも関わらず、4万4000人のバイク、モータースポーツ好きな皆が鈴鹿サーキットに来てくれた。昔は10万人単位の観客数を動員した事もあったり、台風直撃の中やったりと数多くのドラマを生み出したりもしてるのが鈴鹿8耐でもある。今回の8耐の見所はなんと言っても、ウチらワークス「Liella!」の活躍である。初日からトップタイムやトップ3に食い込む速さを見せており、8年ぶりの制覇に向けて幸先良いスタートをしている。そして、直接的なライバルとなるのが、3年前の覇者カワサキワークス。2連覇に向けて気合いは十分との事だ。ただYARTヤマハだって勝ちを狙ってる為、油断は出来ない。静岡からも多くの友達や仲間が俺達のことを応援しに、遥々鈴鹿までやって来てくれた。ピットウォークの時間になると、Liella!のピットには、静岡から来た友達や、果ては学校でお世話になった先生まで来てくれた。学校でお世話になった先生方からも、「8耐総合優勝に向けて頑張ってね!!応援してるよ!!」とメッセージを貰ったりもした。午前10:40になり、8耐のスタート進行。国歌斉唱や、開会宣言等が行われて厳かな空気の中、8耐が幕を開けた。午前11時29分30秒、遂にスタートカウントダウンが始まった。実況が「観客の皆さん!30秒前からのカウントダウン行くよ!!Are you Ready!!」と言うと皆して、「30!29!28!27!26!25!24!23!22!21!20!19!18!17!16!15!14!13!12!11!10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!スタート!」と聞こえたと同時に、俺は我先にと、スターティングサークルから一目散にバイクの所へとダッシュして、跨りエンジンをかけてスタート。そして1コーナーへと向かい、ホールショットは俺が死守。その背後にはTSRが居る。その後ろには静岡からの刺客、エスパルス。俺は、「まずは自分の仕事をこなすだけ!!話はそれから!!」と言い聞かせていた。早くも2周目には、なんと伊藤真一さんち所(アステモホンダ)とハルクプロが接触してしまい、誰もがリタイヤだなと声を揃えて言うと思いきや、なんと2台揃って完走に向けて懸命な修復作業が始まったとの事。これにより、セーフティカーラン。そして、レース再開と同時にフルスロットル。そこから、1時間10分後に最初のピットイン。これで俺のファーストスティントは終わり、セカンドスティントに向けて、身体を休ませることにした。ライダーチェンジは星奈。俺は、交代前に「今のペース保持すれば行けるけど、燃費もガソリン満タンとはいえ多少気遣いながら走ってもらうと助かるし、タイヤも一緒な感じで。あとは、自分のペースでレースを引っ掻き回して良いから!そんじゃ!あとは頼んだ!!頑張れよ!星奈!行ってらっしゃい!」と言って、背中をポンッと叩いて送り出した。星奈も順調なペースでレースをリードしている。2時間というロングランを終えて、美海にバトンタッチ。これで3人がファーストスティントを消化した事になる。そして、美海が戻って来て、俺に交代。遂に夜になった。マーシャルポストから「Right ON!!」というボードが出されて、ライトを点灯。ここまでノーミスかつノントラブルで走ってる為、あとは、ミスせずゴールまで走るのみとなった。実はレース前に、星奈には「ナイトセッション時は、1時間のショートスティントになるけど良い?」と聞いて、本人から了解を得てる為、美海がファーストスティントを終えた後に、星奈を16~17時の1時間だけ乗せてから、俺がラストとなる19:30までの2時間30分というロングスティントを敢行するという作戦だ。実はこれ、前日から色々話し合って決めた作戦であり、監督でもあり、2002年のロードレース世界選手権MotoGPクラスで、当時そのクラスで最初の日本人ウィナーでもあり、年間3位を獲得した「8耐のレジェンドライダー」でもある宇川徹さんからもOK貰っていたりもしている。そして、美海がピットイン。これで、美海のラストスティントが終わったのと、星奈のラストスティントが始まった。本当に僅かな時間でも、リードを広げたいという思いで、この作戦を敢行している。そして1時間後、星奈がピットイン。俺の2時間30分という「精神衛生上あまり良いとは言いきれない」超ロングスティントが始まった。星奈からも「あとは任せたよ!輝!3年前の悔しさを晴らしてきて!行ってらっしゃい!」と言われ、背中をポンッと叩いてもらい、バイクに跨ってピットアウト。さぁここから、8耐名物の「光の宴」が始まった。暗闇に包まれし鈴鹿サーキット。その暗闇を切り裂くかのように、走ってるマシン全てのライトがサーキット全体を包み込む。勿論俺もその1人だが、夜ということで人一倍集中力を高めつつ走っていた。背後にはTSRの美幸が居る。藤井監督もやるねぇ。彼女を最後の「切り札」として取っておくなんて。だけど、レースの女神はどうやら、俺らワークスのLiella!の方に味方してくれてるみたい。そして、レースも残り1時間を切った。ホームストレートでは、サイリウムが色とりどりに輝いて俺をお出迎えしてくれていた。そこからレース終了まで残り少なくなって来た。俺は午後19時29分30秒から「予定通り」とも言えよう「時間稼ぎ」の為に、少しペースを落としつつも、「終わりのカウントダウン始めるよ!Are you Ready!!」と実況が流れて「29!28!27!26!25!24!23!22!20!19!18!17!16!15!14!13!12!11!10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!0!」という皆のカウントダウンが、メット越しに聞こえた瞬間と同時に、チェッカーが振られて、トップで帰って来たのは、「HRC Team Liella! MORIWAKI FireBlade Racing」のマシン。即ち俺達の事だった。俺は、「勝負あり!勝ったァ!!」とメットの中で叫んで、誠真がMoto2デビューした2018年開幕戦カタールGPで優勝した時と同じ渾身のガッツポーズで喜びを爆発させた。そして、2022年8月7日、午後19時30分00秒、FIM世界耐久選手権第3戦 第43回コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレースの幕が閉じた。優勝は、8年ぶりの総合優勝となった、ウチらホンダワークスのHRC Team Liella!。俺は、ウィニングランを終えてパルクフェルメに帰還して皆と抱き合ったり「やったァァァァ!!!」と叫んだりもした。そして、悲願の8耐制覇も達成した。全てが終わって、全てを出せるだけ出し切って、全身全霊全力全開フルスロットルでこの8時間を駆け抜けた俺は、思い切って美海に告白したら、美海からもOK貰って、晴れてカップルとしても成立する事が出来たりもした。そして、優勝した記念に3人のヘルメットも交換しあったりした。俺のヘルメット「OGK Kabuto F17 始まりは君の空 Hikaru Kanon Edition」は、美海に。美海のヘルメット「Arai RX-7GP 始まりは君の空 Miu KeKe Edition」は星奈に。星奈の「Arai RX-7GP 始まりは君の空 Kirana Sumire Edition」は、美海に手渡された。そして、ヘルメットの中には、直筆の手紙とサインとテディベアを入れたりもしている。手紙の内容は、人それぞれだけど、お互いに敬意と感謝を表している内容になったりしている。俺の場合は、「美海へ、俺と初めて一緒のチームになった時の事覚えてるかな?初めてのスーパーバイク世界選手権、初めて走るサーキット、何もかもが初めて尽くしで迷ったよね。俺も久しぶりのWSBKで分からない事だらけだったよ。でも、この2人なら大丈夫!いける!!と思った。特に今でも心の支えとなってるのが、同士討ちしちゃった後に、励ましてくれたよね。それが今でも俺の心の支えになってるんだ。いや、今の一番の心の支えは美海なんだよ。カーナンバーの由来聞いた時も美海らしいなって思ったよ。8と1はひっくり返しても変わる事は無い。それを聞いた時は何とも美海らしさ全開だなって思ったよ。そしてレース本番は、すごく豪快なライディングだったね。見てて凄くカッコ良かったよ。あと…俺は、これを伝えたかったんだ。美海、俺は、美海の事を1人のライダーとしてもそうだし、1人の女性としても好き。もし良ければですが、俺と付き合ってください!」と書いた手紙と直筆サインをセットで渡している。美海も俺とすごく内容が似たり寄ったりの手紙とサインをセットで渡してくれた。実は星奈にも手紙とサインを渡している。そう、俺と星奈はMoto2時代にチームメイトになってからの関係だ。しかも唯一の国産シャシのNTSを使っていたRWレーシングに在籍していた時からの付き合いでもある。その為、お互いの事をかなり知り尽くしている。だから、美海に惚れてる事を一発で見抜いたりと言う事も平気で出来るのだ。ただ唯一の欠点というかなんというか、8耐になると彼女はドーラになるのだ。「40秒で支度しな!!」というのが出たりと色々仕切ったりしちゃう時がある。そして、レースとなると、目の色が変わったりと色々すごいライダーだ。それと、今回の告白も実は星奈が一枚噛んでいる。実はあの同士討ちしちゃった後に星奈が「いつまでもグズグズしてるとあの子、他の男に取られるよ。それが嫌なら、早めに手を打った方がいいよ。その方がお互いの為にもなるよ。」とアドバイスしてくれたおかげで告白する事にした。ちなみに美海には「ねぇ、美海ちゃん?いきなりだけど、好きな人とか居るの?」と聞いた際に、美海は「き…星奈ちゃん!?何いきなり!?ビックリしちゃったよ。でも、居るよ!好きな人!」と星奈に返すと「その好きな人って誰?」と聞き返して、美海は「やっぱり、輝くんかな。すごく優しいし、マンダリカのテストで転倒した時も先ず最初に来てくれたのが、輝くんだった。理由を聞いてもかなり素っ気ない答えだったけど。そして、開幕戦で私がリタイアした時も、全てが終わってから、悔しくて泣いてた私の所へと来てくれて「良く頑張ったね。お疲れ様。次は2人でポディウムに立とうね。」って言いながら優しく抱きしめてくれたの。あそこまでチームメイトの事を大切にしてくれる人初めてだったから…」と星奈に言うと、星奈は「そういう事ね。いつか実るといいね。その想い。それとさっき言った、かなり素っ気ない答えだったというのには理由があるの。今からそれを話すけど良い?」と美海に聞いて、美海も「良いよ。」と言って、星奈は4年前の2018年ロードレース世界選手権Moto2クラス第18戦マレーシアGPの決勝時に起こった事を話し始めた。「あれは、確か4年前のマレーシアGP決勝で起きた事だったね。あの時ちょうど輝とはチームメイトだったの。私も、あと2戦頑張れば今シーズンが、ルーキーイヤーが終わる!ってルンルンだったの。そんなテンションで迎えた決勝。このレースが輝のレース人生「全て」を変えてしまったの。私もあの事故を目の当たりにしたんだよ。輝の「親友」でもあり、私の友達でもあったライダーが死ぬ瞬間を。多分本人が一番辛いと思うよ。ちょうど起きたのが高速コーナー。その時は複数のマシンと激しくトップを競り合ってた。その時に誠真のマシンは、バランスを崩して激しく転倒。転倒の衝撃でヘルメットが脱げて、顔が見えてた。その時に輝がレースを放棄してまで、誠真の所へと向かって、色々処置してたの。その後マーシャルと医療班が来て、緊急措置を行ってた。けど、誠真の意識は戻らなかった。そして、医療班の人が首を横に振って、輝に彼の死を告げたの。その時に「俺があともう少し早く来てれば…」って、彼を助けれなかった事を今でも悔やんでるの。私も誠真の死を知ったのはレース後だった。すごく辛かった。けど、一番辛かったのは、あの場に居合わせた輝なんだと思う。だから美海ちゃんがコケた時に素早く来てくれたのはそれが理由だよ。もうあの時みたいな光景は輝本人が見たくもないし、見せたくもない。それが本心よ。それ見た時に本っ当、輝らしいなって。」と過去にあった事を美海に話してくれた。そんな事も話せる仲でもあったりというのが星奈と美海の関係である。というより、女子会開いてるのが2人の恒例行事である。ちなみに過去に一度だけTwitterでそれやってるのを見て、俺が面白半分でリプ送ったら、星奈にシバかれそうになったりとかもあったりもした。「お前はPixivで画像とかでも見とけ!」とリプが来たりもして結構カオスで面白かった。だけど、それが出来るのもお互いにお互いの事を理解してるからでもあったりする。そんな事もあった鈴鹿8耐は、大歓声の中、終わりを告げた。
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