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第一章 レント城塞
第二十話 僕は負けない
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「また王配候補? でも、エランは?」
「エランもその一人だが、私はアレインを薦める。彼なら国のために、的確にそなたを補助してくれるだろう」
王が本気でそう言っている事に、憤りを感じる。
どうあっても自分以外に、目を向けさせたいのだ。
王配候補等いりません!
あなたの側にいるだけ満足です!
心の中ではそう叫ぶ。
でも、それを告げれば、王はますます王配候補を増やすだろう。
自分がいない未来にしか、彼は意識を向けていない。
「僕は……」
「私と言ってくれ、その姿でいる時は」
苦笑いしながら、睨み付ける相手に顔を近付けた。
「言ったはずだ、判断するのはそなただ。どう対応する、王太子は?」
王の緑色の瞳が、面白がるように回答を待っている。
判断をするのは、僕?
陛下は僕の意志を、優先してくれるのか?
戸惑いながらアレインを見つめた。
彼は国王軍の騎士隊の頂点にいる人物、騎士達が注目する中で、恥をかかせる訳にはいかない。
でも、王配候補として受け入れる事が出来ないのは、エランは躱す事が出来ても、この男は無理だと思えるからだ。
僕は今、姫君の姿をしている。
きっとオーリンの姿を見ていない騎士も多いはずだ。
本当は長い髪の鬘を取り除きたかったが、しっかりとピンで留められ一人で外すのは不可能だ。
仕方がないので姫君の姿のまま、極力少年らしく振舞う。
「アレイン殿は剣の腕が、国王軍の中で一番強いのか?」
少年口調の話しぶりにも、アレインは驚かず微笑みを崩さない。
「……私より強い者は、陛下の近衛騎士に配属されます。オリアンナ姫の近衛になる者も、私よりは強いでしょう」
「ふふ、謙遜するな。アレインより強いのは、トキ・メリマンぐらいだ」
王の後ろでトキが無表情に頷いた。本当にそうなのだろう。
「アレイン殿に、僕の剣技を鍛えてほしい。僕は国王軍の足手纏いにならないためにも、強くならなければならない!」
その場にいる者達が、不思議なものでも見るように僕を注視した。
おおよそ似つかわしくない物言いに、違和感と面白さを覚えるのだろう。
「強くなる!」とは、姫君が言うセリフではない。
なんとか解ってほしくて、真剣な顔付きでアレインに訴える。
「魔王を倒すまで、王配候補を決める気はない! オリアンナに戻るのは後の事、今はオーリン・トゥール・ブライデインとして存在する!」
その言葉に、アレインは儀礼的ではない微笑みを向けてきた。
「私は剣に関して容赦のない男ですよ。宜しいのですか?」
「構わない! よろしく頼む」
王が額に手を当て呆れている。やがて深い溜息をつき、保護者のように睨み付けてくる。
「エランも保留にするつもりか?」
「はい!」
「オリアンナ姫、王太子の未来をある程度決定しておかなければ、国は安定しない! アルマレークに付け入られるぞ!」
「……付け入られる事はありません。陛下が王として存在される限り、僕はアルマレークとは関わりは持ちません」
「…………私は間もなく消える身だ。そなたの未来は、国の未来であるから、王配選びは最重要事項なのだ。あの男が婚約者である限り、エステラーン王国はアルマレーク共和国に併合される危険がある!」
その言葉に衝撃を受けた。
テオフィルスの満面の笑みと言葉と青い瞳が、危機感をいっそう駆り立てる。
《オリアンナ姫は、俺の婚約者なんだ》
あの時、それが国の危機だと、なぜ気が付かなかった?
僕は狼狽え、後先考えずに本心を口にした。
「僕は陛下の妃になる以外の未来を、考えられません。陛下を人に戻す方法を、必ず見つけ出します! だから消えるなんて、思わないで下さい」
「方法は十五年探して見つからなかった。淡い期待は苦しみを深めるだけだ。今すぐにとは言わないが、もっと現実を見て自分で判断するのだ。良いな?」
僕は仕方なく頷く。
王は手を上げ、騎士達の解散を指示し、僕をトキに預け去って行った。
怒らせたかもしれない……、そう思うと陛下に嫌われたようで怖くなった。
立ち尽くす僕の隣で、まだアレインが僕を見ている事に気付いた。
「殿下のご意志に、賛同します」
「え?」
アレインが僕に微笑み、胸に手を当て、誓いを立てるように僕に告げる。
「十五年探して見つからなかった事も、宝剣の主である殿下になら、見つけ出せるかもしれません。陛下を人に戻す方法を、陛下に負けないで探し出して下さい」
彼の横で、トキが頷く。
僕には同じ目的を共有出来る仲間がいる、そう思うと勇気が湧いてくる。
「……うん。ありがとう、アレインさん。僕は、負けないよ!」
「エランもその一人だが、私はアレインを薦める。彼なら国のために、的確にそなたを補助してくれるだろう」
王が本気でそう言っている事に、憤りを感じる。
どうあっても自分以外に、目を向けさせたいのだ。
王配候補等いりません!
あなたの側にいるだけ満足です!
心の中ではそう叫ぶ。
でも、それを告げれば、王はますます王配候補を増やすだろう。
自分がいない未来にしか、彼は意識を向けていない。
「僕は……」
「私と言ってくれ、その姿でいる時は」
苦笑いしながら、睨み付ける相手に顔を近付けた。
「言ったはずだ、判断するのはそなただ。どう対応する、王太子は?」
王の緑色の瞳が、面白がるように回答を待っている。
判断をするのは、僕?
陛下は僕の意志を、優先してくれるのか?
戸惑いながらアレインを見つめた。
彼は国王軍の騎士隊の頂点にいる人物、騎士達が注目する中で、恥をかかせる訳にはいかない。
でも、王配候補として受け入れる事が出来ないのは、エランは躱す事が出来ても、この男は無理だと思えるからだ。
僕は今、姫君の姿をしている。
きっとオーリンの姿を見ていない騎士も多いはずだ。
本当は長い髪の鬘を取り除きたかったが、しっかりとピンで留められ一人で外すのは不可能だ。
仕方がないので姫君の姿のまま、極力少年らしく振舞う。
「アレイン殿は剣の腕が、国王軍の中で一番強いのか?」
少年口調の話しぶりにも、アレインは驚かず微笑みを崩さない。
「……私より強い者は、陛下の近衛騎士に配属されます。オリアンナ姫の近衛になる者も、私よりは強いでしょう」
「ふふ、謙遜するな。アレインより強いのは、トキ・メリマンぐらいだ」
王の後ろでトキが無表情に頷いた。本当にそうなのだろう。
「アレイン殿に、僕の剣技を鍛えてほしい。僕は国王軍の足手纏いにならないためにも、強くならなければならない!」
その場にいる者達が、不思議なものでも見るように僕を注視した。
おおよそ似つかわしくない物言いに、違和感と面白さを覚えるのだろう。
「強くなる!」とは、姫君が言うセリフではない。
なんとか解ってほしくて、真剣な顔付きでアレインに訴える。
「魔王を倒すまで、王配候補を決める気はない! オリアンナに戻るのは後の事、今はオーリン・トゥール・ブライデインとして存在する!」
その言葉に、アレインは儀礼的ではない微笑みを向けてきた。
「私は剣に関して容赦のない男ですよ。宜しいのですか?」
「構わない! よろしく頼む」
王が額に手を当て呆れている。やがて深い溜息をつき、保護者のように睨み付けてくる。
「エランも保留にするつもりか?」
「はい!」
「オリアンナ姫、王太子の未来をある程度決定しておかなければ、国は安定しない! アルマレークに付け入られるぞ!」
「……付け入られる事はありません。陛下が王として存在される限り、僕はアルマレークとは関わりは持ちません」
「…………私は間もなく消える身だ。そなたの未来は、国の未来であるから、王配選びは最重要事項なのだ。あの男が婚約者である限り、エステラーン王国はアルマレーク共和国に併合される危険がある!」
その言葉に衝撃を受けた。
テオフィルスの満面の笑みと言葉と青い瞳が、危機感をいっそう駆り立てる。
《オリアンナ姫は、俺の婚約者なんだ》
あの時、それが国の危機だと、なぜ気が付かなかった?
僕は狼狽え、後先考えずに本心を口にした。
「僕は陛下の妃になる以外の未来を、考えられません。陛下を人に戻す方法を、必ず見つけ出します! だから消えるなんて、思わないで下さい」
「方法は十五年探して見つからなかった。淡い期待は苦しみを深めるだけだ。今すぐにとは言わないが、もっと現実を見て自分で判断するのだ。良いな?」
僕は仕方なく頷く。
王は手を上げ、騎士達の解散を指示し、僕をトキに預け去って行った。
怒らせたかもしれない……、そう思うと陛下に嫌われたようで怖くなった。
立ち尽くす僕の隣で、まだアレインが僕を見ている事に気付いた。
「殿下のご意志に、賛同します」
「え?」
アレインが僕に微笑み、胸に手を当て、誓いを立てるように僕に告げる。
「十五年探して見つからなかった事も、宝剣の主である殿下になら、見つけ出せるかもしれません。陛下を人に戻す方法を、陛下に負けないで探し出して下さい」
彼の横で、トキが頷く。
僕には同じ目的を共有出来る仲間がいる、そう思うと勇気が湧いてくる。
「……うん。ありがとう、アレインさん。僕は、負けないよ!」
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