しあわせのあしどり

伊澄(ism)

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理人はおれの家に寄っていくというので一緒に車から降ろして貰った。
先輩には感謝してもし足りない、が、なんだか恥ずかしくて、ありがとうございました、と素っ気なく言って終わってしまった。こんなだから愛想がないって言われるんだよな……。特別無愛想なつもりは無いんだけれど。
理人が荷物を持ってくれていたので、鍵を開けて扉を開く。

「お邪魔しまーす。」

「ただいま……。」

二度と帰らなかったかもしれない家に生きて帰ってきた。
ふう、疲れた。
体力が落ちている。それでなくても貧弱な身体が、よわよわである。いやだいやだ。
ベッドに寝そべる。
荷物の整理は明日でいいや。
まだ腹は痛い。それはそうか、ナイフが刺さったんだもんな……。
窓の外を見る。まだ明るい。
眠くなってきた。

「理人……?眠いから、おれ寝るかも。」

「いいよ、寝て。俺、宿題とか夕飯の準備とかやってるから。」

「うん……。」

理人がカバンからなにか出している。宿題だろうか。そんな様子を眺めながら眠りに落ちた。

暗い。何も見えない。
誰かに押さえつけられていて動けない、アイツだ。アイツが来たんだ!!
逃げなきゃ、早く逃げないとまた刺されて……。
身体が動かない、助けて!
助けて!
誰か!
理人……!
理人!!!

「……うた、光太!起きて!」

「あ!ああ!あっ!」

「夢だよ。大丈夫、夢だから。」

ああ、夢か、じゃあここはどこ?
暗い……っ!!

「暗い!暗いよ!ここ、……どこ!?嫌だっ!暗い……!!」

バタバタと足音がして、パッと世界が明るくなった。
理人が電気をつけたのだった。
頭が混乱している。
夢とリアルの境界が曖昧になっている。
落ち着け、落ち着け。

「家だよ、光太の家。わかる?」

「家……。」

ようやく少し息が整ってきた。
少しずつ視覚が認識し始める。

「家……。夢、か……。」

痛む腹と頭を抱える。
心臓がドクンドクンとものすごい勢いで跳ね返っている。

「光太、落ち着いた?」

「うん、……少し、嫌な夢を見たみたい……。」

ごめん、俺も寝ちゃってて、起こすの遅くなった。と理人がベッドサイドに戻ってくる。
じっとりとかいた汗がクーラーで冷えてきた。
窓の外はすっかり暗くなっていた。
慌てて立ち上がってカーテンを閉める、手が震えている。

「だいじょうぶ?」

「だいじょうぶ、夢見が悪かったんだ。」

だいじょうぶ、だいじょうぶ。
夢見が悪かっただけだ。
だいじょうぶ、と心の中で何度も何度も繰り返す。
心臓は相変わらずドクンドクンと激しく鼓動を打っている。
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