こんな僕を、

003

文字の大きさ
上 下
9 / 17

1

しおりを挟む
隼人は学校から家に帰り、リュックを置いたあと近くのスーパーに行った。

主婦達がたくさんいてガヤガヤとしているなかで隼人はポケットに入れた3000円を握りしめて入り口にある野菜コーナーの前に突っ立っていた。

料理は作れないし何を買ったら良いのかまるで分からないのだ。

"んむむ…"

取り敢えずパンコーナーに行ってみる。

"どれが一番を安くてお腹に溜まるだろう"

そんなことを考えてパンとにらめっこしていると、左から甲高い声が響いた。

「あらぁ!小見さんとこの隼人くんじゃない!」

『ぇっ』

「こんな時間に何してるのぉ?学校でしょう?」

「高木さん?どうなさったんですか?」

「この子小見さんとこの隼人くんでしょ?
なんでこんな時間にスーパーにいるのかと思って話しかけたのよ」

「はぁ、なるほど」

後ろから大人しそうな若い女の人が出てくる。
もうどうしたら良いのか分からない。

『ぅ、あ、えっと』

誰かは分からないがきっと学校の生徒の保護者だろう、カゴに沢山の食材が積み上げられていた。

ぎゅるるるるるるぅぅ……

先程からずっとなっているお腹の音がおばさんとお姉さんの前で鳴ってしまった。

「ご飯、食べてないの?」

お姉さんに聞かれ、食べていないので取り敢えず頷いた。

「あらぁ!そうだったのね!

でも学校で給食があるでしょう?
なのになんで…」
「どのくらい食べてないの?」

『え…』

思わずお姉さんの目を見る。
何故そんな質問をするのだろう。

「あ、ごめんね…お姉さんも最近あんまりご飯食べてないから気になっちゃって、仲間見つけちゃったって思ってつい聞いちゃった…」

"…

女性とはそうゆうものなのだろうか?
いや、女性だからや男性だからは殆ど関係ないと聞いた気がする…ということはこの人の趣味が仲間を見つけることなのか…"

隼人は分かるようでよくわからん考えで納得し、答えた。

『いや、別に大丈夫…今日で…8日食べてない』

「そう…何も?」

お姉さんはにこりと笑って質問を更に続けた。

コク

今度は頷いて返した。

"お腹すいた、もうなんでもいいから買おう"

『またね、おばさん、お姉さん』

そういって目の前の大きいパンを3つ取ってレジに向かった。

"すごく並んでる…今度からはコンビニにしようかな…"

「ちょっと待って」

肩に何かの重さが急に乗ってきて何だ?と後ろを見るとお姉さんが隼人の肩に手を乗せていた。

『何?ボクこれ買いたいんだ』

さすがにもうお腹が限界だと訴えてきている。

「お姉さんについてきなさい」

にこりと笑顔でお姉さんはそう言うと、ボクの手の中にあったパンを元あった場所に戻した。

『ちょっ!なにすんだよ!』

イラッとしてパンをまた手に取ろうとするがお姉さんは片手でボクをだき抱えてまだ決めていなかったのか何も入っていないカゴをもう片手で押し、多分出口に向かっていく。

「あ、ちょっと、私も行くわよぉ!

七瀬さぁん!」

後ろから何かを言っている人がいるが隼人はそれには気づかずにお姉さんの肩を押した。

『離せ!』

「大丈夫、もっと良いものただで食べさせてあげるから」

『え』

そう言われて豊満な胸に顔を押し付けさせられた。

"…それは良い提案だけどただより怖いものはないと教科書に書いてあった…だけど…


いざとなったら逃げれるし、行ってみても損ないか!"

隼人は考えても分からないことに関してはとても楽観的になる。
それに寝不足と空腹で思考力も格段に低下していた。

何よりお姉さんは美人。
無意識ではあるがこれも悪くないと思ってしまった。

"柔らかい………"
しおりを挟む

処理中です...