こんな僕を、

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豊満な胸に顔を押し付けられて歩かれると、
緩やかに眠気が来る。

寝ようとしても、どうしてもお腹が減って寝れないので勉強をしていたから、ここ最近はだいぶ寝不足だった。

『すぅ…すぅ…』

いつの間にか柔らかい感触を手に感じながら眠っていた。


食欲をそそるいい匂いがする。

"今日の夜ごはんはなんだろ"

『お母さん、何作ってるの?』

「天津飯よ」

『ボクの好きなやつ!やったー、どのくらいで出来る?』

「そうねぇ、あと30分くらいかしら」

『待てないよー』

むぅと頬を膨らませる隼人に呆れたように笑う母。

仲の良い家族

「あ、そろそろ部屋に行きなさい」

『どうして?』

「優斗が帰ってくるじゃない、夜ご飯も自分で用意しなさいって言ったでしょ」


いつも隼人が見る夢。

ふと目を開けると家の照明とは違うものが付けられている天井が目に入る。

"どこ…?


あ、あのお姉さんの…"

どうやら自分が寝ているのはリビングのソファのようだった。

後ろの方から笑い声や喋る声が密かに聞こえてきて身体を起こした。

『お姉さん……と、おばさん…』

「あらぁ!起きたのね!そろそろ夜ご飯出来るわよ!隼人くんお腹空いてると思ってはやめに作っておいたの!」

時計を見るとまだ夜ご飯には早い午後4時少し前。

"5時間以上寝てたのか"

『え…ここど』

「そんなのはいーから!出来たわよ!
座って座って!」

そう急かされてソファから沢山の椅子が並べてある所に座るとおばさんが何かを運んでくる。

皿に乗ったオムライスだった。
ケチャップがかけてあって出来立てなんだろう。
少し湯気が出ている。

我慢できずにスプーンを持ってばくばくと食べていく。

母のはいつも卵が半熟だが、それとは違って綺麗な黄色が、中にぱんぱんに詰まった具材がごろごろと入ったケチャップライスを包んでいる。

食べているのにもっともっと、とせがむように何度もお腹が鳴る。


"おいしい、おいしいっ…"
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