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本編
1 婚約破棄を宣言される (改)
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「アリス・リルバーンお前との婚約は今日この場にて破棄とする!!」
ここは王宮の中にある大ホール。
現在第一王子の誕生を祝う為の舞踏会が催されている。
国王ご夫妻は急遽決まった外遊故に欠席されている。
だからこそこの好機を見逃さず、あの阿呆はこのふざけた茶番劇を仕組んだのだろう。
ムカつくが昔からあの阿呆は策を弄する事に誰よりも長けていた。
王宮の大ホールには沢山の王侯貴族達が美々しく着飾り、それぞれに宴を楽し……いやそこは普通に熾烈な社交戦を行っていた時である。
突如雛壇より高らかに、そして一際大きな声で朗々と叫ぶのはこの国の第一王子様。
私はその王子様よりたった今婚約を破棄されたらしい。
何故この様に行き成り衆目の面前で婚約を破棄されたかと言えばよ。
昨今貴族平民を問わず流行しているアレだ。
つまりこの国の王子様にとって私ではない真実の愛のお相手とやらを見つけただけではない。
あろう事かどうやら私は彼らの言う悪役令嬢で、その真実の愛の相手を王子を想う余りの嫉妬心により貴族令嬢にあるまじく感情に任せありとあらゆる方法を用い彼女を虐げたらしい。
でもこれこそはっきり言って冤罪だ。
先ず私自身身にその様な記憶はない。
抑々私と王子の婚約は政略であり、そこに愛なんてものは1㎜も存在しない。
第一王族と有力貴族との婚姻何てその様なものでしょ。
愛や恋なんてものは国民の暮らしや国の安寧の前では些末でしかない。
それが王族と貴族の常識であり私、王国の北壁と称えられるノースモア公爵家の娘アリス・リルバーンの立ち位置なの。
まぁ時には?
非常に稀ではあるが純愛なるものも存在はしている。
ただし何度も言うがその切っ掛けはあくまでも政略によるものが多い。
婚約後お互いの努力による関係構築によって奇跡的に愛が育まれたのでしょうね。
しかし何度も言うが私と王子の間で愛なんてものはミジンコ一匹すらも芽生えてはいない。
いやいやあの状況で芽生える方が可笑しいでしょ。
そして私はドMではない!!
あの阿呆王子との婚約が調ったのは私が誕生したとほぼ同時だった。
幾ら政略でも生まれて直ぐの赤ん坊に絶望を背負わさないでほしかったわ。
そうして5歳の誕生日の翌日私は故郷を離れ半ば強制的に王宮へ伺候する度に、また自ら進んで受けたくもない妃教育で嫌々王宮へ住まう様となり、何かの拍子でお互いに顔を突き合わせる度によ。
阿呆王子は口を開けば悪口雑言をずっと私へ浴びせ続けてきた。
アホ、愚図ノロマなんてものはまだ可愛らしいし、長年虐げられた私にとってそれは最早悪口でも何でもない。
人格否定何て日常茶飯事……息を吸って吐く様に、自然に吐いてやがりましたわ。
また成長するにつれ自分だけではなく子飼いの貴族子息や令嬢、息の掛かった侍従や侍女に至るまで私への子供じみた嫌がらせのオンパレード。
王宮の庭園にある池に突き落とされたりドレスを汚されるのは普通だったわね。
あぁ教科書やノートが破かれたり紛失するの何て両手の指では数え切れない。
汚水の入ったバケツや綺麗に咲いていただろう花の植木鉢が狙いすましたようなタイミングで落ちてくる事もしばしば。
余りにも虐めの被害が多過ぎて、もう細かな所までは覚えていない。
それに一々苦にしていればよ。
きっと今頃私は今ここにいなかったでしょう。
当然事後にはなるけれどもそれを知った良識のある大人達と国王ご夫妻は報告の度に王子を呼び出す。
しかし呼び出される時には全ての証拠は綺麗に抹消済み。
呼び出した所で諫める為の証拠や証人がいなければだ。
軽い口頭での注意が関の山。
でも真実の意味で悲惨な状況へと追い詰められるのはその後。
両陛下より注意を受けてしまったと、私への嫌がらせは更にエスカレートするのである。
また王子も馬鹿ではない。
一応王族故にありとあらゆる教育は受けている。
性格は至上最悪だけれど、彼の脳みそはある意味まだ死んではいない。
私からすればクソ野郎にしか見えない。
だからあのクソ王子は何時も見える部分には決して傷を負わせない。
悪質な嫌がらせやいじめも時と場所、見られても問題のない者達の前でのみ行われていたわ。
本当に私もよくぞ今まで耐え忍んだものだと自分自身をしっかりと誉めてあげたい。
あ、そうそう今現在私が、王子の真実の愛である彼女へ行ったであろう幾つもの卑劣でお馬鹿な悪行はそっくりそのまま王子と周りにいる腰巾着達へ突き返したい。
因みにその真実のお相手にも……ね。
「聞いておるのかアリス」
おっといけない。
思考の海でスイスイとご機嫌に泳いでいれば阿呆な王子よりお呼びがかかったわ。
本当に何処までも迷惑でクズな存在。
「おいっ、返事くらいしてはどうだ!! あ、それとも何だ。この俺様からの婚約破棄宣言を受け俺に恋い慕う貴様はショッ――――」
「いえ、何も問題御座いませんわ!!」
「な、なら……いい」
これ以上ド阿呆でクソで下らない妄言はもう沢山。
十一年間耐えに耐え忍んだ私の黒歴史。
制約の為に今まで我慢するしかなかったけれどもだ。
何はともあれ向こうから契約を破棄してくれたのですもの。
私にしてみればこれこそラッキーでしかない。
「ではこれにて御前失礼致しますわ。コニー様、貴女と殿下のお幸せを心よりお祈り申し上げますわ。では邪魔者はさっさと退場させて頂きますわね。では皆様御機嫌よう」
あぁ私の役目はこれで終わり。
ごめんなさいね……。
だってもう十分頑張ったのですもの。
私は笑みを湛え優雅にカーテシーをしくるりと踵を返し颯爽と王宮より辞した。
背後でクズでクソな王子達が何やら叫んでいるけれど私にはもう一切関係ないわ。
ここは王宮の中にある大ホール。
現在第一王子の誕生を祝う為の舞踏会が催されている。
国王ご夫妻は急遽決まった外遊故に欠席されている。
だからこそこの好機を見逃さず、あの阿呆はこのふざけた茶番劇を仕組んだのだろう。
ムカつくが昔からあの阿呆は策を弄する事に誰よりも長けていた。
王宮の大ホールには沢山の王侯貴族達が美々しく着飾り、それぞれに宴を楽し……いやそこは普通に熾烈な社交戦を行っていた時である。
突如雛壇より高らかに、そして一際大きな声で朗々と叫ぶのはこの国の第一王子様。
私はその王子様よりたった今婚約を破棄されたらしい。
何故この様に行き成り衆目の面前で婚約を破棄されたかと言えばよ。
昨今貴族平民を問わず流行しているアレだ。
つまりこの国の王子様にとって私ではない真実の愛のお相手とやらを見つけただけではない。
あろう事かどうやら私は彼らの言う悪役令嬢で、その真実の愛の相手を王子を想う余りの嫉妬心により貴族令嬢にあるまじく感情に任せありとあらゆる方法を用い彼女を虐げたらしい。
でもこれこそはっきり言って冤罪だ。
先ず私自身身にその様な記憶はない。
抑々私と王子の婚約は政略であり、そこに愛なんてものは1㎜も存在しない。
第一王族と有力貴族との婚姻何てその様なものでしょ。
愛や恋なんてものは国民の暮らしや国の安寧の前では些末でしかない。
それが王族と貴族の常識であり私、王国の北壁と称えられるノースモア公爵家の娘アリス・リルバーンの立ち位置なの。
まぁ時には?
非常に稀ではあるが純愛なるものも存在はしている。
ただし何度も言うがその切っ掛けはあくまでも政略によるものが多い。
婚約後お互いの努力による関係構築によって奇跡的に愛が育まれたのでしょうね。
しかし何度も言うが私と王子の間で愛なんてものはミジンコ一匹すらも芽生えてはいない。
いやいやあの状況で芽生える方が可笑しいでしょ。
そして私はドMではない!!
あの阿呆王子との婚約が調ったのは私が誕生したとほぼ同時だった。
幾ら政略でも生まれて直ぐの赤ん坊に絶望を背負わさないでほしかったわ。
そうして5歳の誕生日の翌日私は故郷を離れ半ば強制的に王宮へ伺候する度に、また自ら進んで受けたくもない妃教育で嫌々王宮へ住まう様となり、何かの拍子でお互いに顔を突き合わせる度によ。
阿呆王子は口を開けば悪口雑言をずっと私へ浴びせ続けてきた。
アホ、愚図ノロマなんてものはまだ可愛らしいし、長年虐げられた私にとってそれは最早悪口でも何でもない。
人格否定何て日常茶飯事……息を吸って吐く様に、自然に吐いてやがりましたわ。
また成長するにつれ自分だけではなく子飼いの貴族子息や令嬢、息の掛かった侍従や侍女に至るまで私への子供じみた嫌がらせのオンパレード。
王宮の庭園にある池に突き落とされたりドレスを汚されるのは普通だったわね。
あぁ教科書やノートが破かれたり紛失するの何て両手の指では数え切れない。
汚水の入ったバケツや綺麗に咲いていただろう花の植木鉢が狙いすましたようなタイミングで落ちてくる事もしばしば。
余りにも虐めの被害が多過ぎて、もう細かな所までは覚えていない。
それに一々苦にしていればよ。
きっと今頃私は今ここにいなかったでしょう。
当然事後にはなるけれどもそれを知った良識のある大人達と国王ご夫妻は報告の度に王子を呼び出す。
しかし呼び出される時には全ての証拠は綺麗に抹消済み。
呼び出した所で諫める為の証拠や証人がいなければだ。
軽い口頭での注意が関の山。
でも真実の意味で悲惨な状況へと追い詰められるのはその後。
両陛下より注意を受けてしまったと、私への嫌がらせは更にエスカレートするのである。
また王子も馬鹿ではない。
一応王族故にありとあらゆる教育は受けている。
性格は至上最悪だけれど、彼の脳みそはある意味まだ死んではいない。
私からすればクソ野郎にしか見えない。
だからあのクソ王子は何時も見える部分には決して傷を負わせない。
悪質な嫌がらせやいじめも時と場所、見られても問題のない者達の前でのみ行われていたわ。
本当に私もよくぞ今まで耐え忍んだものだと自分自身をしっかりと誉めてあげたい。
あ、そうそう今現在私が、王子の真実の愛である彼女へ行ったであろう幾つもの卑劣でお馬鹿な悪行はそっくりそのまま王子と周りにいる腰巾着達へ突き返したい。
因みにその真実のお相手にも……ね。
「聞いておるのかアリス」
おっといけない。
思考の海でスイスイとご機嫌に泳いでいれば阿呆な王子よりお呼びがかかったわ。
本当に何処までも迷惑でクズな存在。
「おいっ、返事くらいしてはどうだ!! あ、それとも何だ。この俺様からの婚約破棄宣言を受け俺に恋い慕う貴様はショッ――――」
「いえ、何も問題御座いませんわ!!」
「な、なら……いい」
これ以上ド阿呆でクソで下らない妄言はもう沢山。
十一年間耐えに耐え忍んだ私の黒歴史。
制約の為に今まで我慢するしかなかったけれどもだ。
何はともあれ向こうから契約を破棄してくれたのですもの。
私にしてみればこれこそラッキーでしかない。
「ではこれにて御前失礼致しますわ。コニー様、貴女と殿下のお幸せを心よりお祈り申し上げますわ。では邪魔者はさっさと退場させて頂きますわね。では皆様御機嫌よう」
あぁ私の役目はこれで終わり。
ごめんなさいね……。
だってもう十分頑張ったのですもの。
私は笑みを湛え優雅にカーテシーをしくるりと踵を返し颯爽と王宮より辞した。
背後でクズでクソな王子達が何やら叫んでいるけれど私にはもう一切関係ないわ。
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