御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki

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「何……をっっ」

 狂喜……まさにその文字そのものだった。
 
 まだ俺と同じ12歳の子供なのにキャシーの様相は既に成人した女が纏うもの。

 いや、断じて普通の成人女性の纏う色ではない。
 妹の、キャシーが纏う色は道ならぬ恋に狂えば自身の恋の障害となるであろう貴女へ、純粋に……そこはまだ未成熟な子供だからこそが持つ純粋な悪意に迷う事無くそれこそが正しいと言わんばかりの無垢なる殺意。

 まだ殺意を抱くだけならば可愛いのかもしれない。
 恐らく……これはキャシーの双子の兄である俺だからこそ彼女の心が理解出来る。

 そう間違いない。
 キャシーは間違いなくこのままだと貴女を殺すだろう。
 それも微笑みながら然も愉しげに貴女をっ、この俺の目の前で貴女のまだいとけない身体を真紅へと染め上げてしまう。

 それだけは絶対に阻止をしなければいけない!!


 これはある意味国王夫妻である両親よりも厄介な問題である。
 俺の両親また貴女の両親である公爵夫妻は慾に塗れてはいるけれどもだ。
 キャシーの様な純粋なまでの悪意は感じられない。
 何しろある程度の慾さえ満たせば満足する部類の生き物だからな。
 それだからこそ俺は両親達の意のままに動くと見せかけ、俺自身が成人をし力や仲間を十分に持った時点で彼らを強引に表舞台より引き摺り下ろさんと画策し始めたと言うのにだっっ。
 
 まさか、ほんの身近な所で愛する貴女の存在を今にも抹殺せんと動き出そうとするキャシーへ俺は初めて恐怖を抱いてしまった。

 同じ胎より生まれし妹相手にだっっ。

 そう今まで抱いていた兄妹としての情が一瞬にして霧散してしまう程にキャサリン、お前がとても大きな怪物に見えてしまったのだよ。

 だが怪物となったお前を恐れていては俺の命よりも大切なエリザベスを護る事なんて出来はしない。
 貴女をどの方法で殺そうかと愉しげに、そして本気で考えているキャシーを目の前にして俺は脳を高速回転させればこの状況を打破する方法を何としても見つけ出さねばいけない。


 いや別に何も悩む必要等ないのだ。
 何故なら答えは最初からそこにある。
 ただ俺がそれを受け入れればエリザベス、貴女を永遠に失わずに済むのだから……。 
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