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「抱いて頂戴ぇセル」
薄闇の寝室へと入ってきたキャシーはそう言って俺の承諾等関係なく羽織っていたガウンを脱げば、その下は薄いカーテン越しより入る月の光でもわかるくらいに自身の身体のラインが分かる程の薄絹を、然も緻密且つ上品なレースを惜しげもなく贅沢に使われた夜着は、品を損なう事なく奔放な女性らしさを最大限に生かした大胆なデザインのもの。
多分それを纏い俺へ恥ずかしげに頬を染め上げれば可愛らしくも懇願する相手がキャシーではなく貴女であれば、俺はどれ程に幸せだった事だろう。
そして何故俺は実の妹であるキャシーに夜伽を懇願と言う命令をされなければいけないのだ。
キスやハグ……キャシーの望む言葉までは許容範囲として受け入れてもいた。
俺達の境遇が境遇だけに、また愛する貴女の命を盾に取られれば受け入れざるを得ない。
しかしそこまでだっっ。
それ以上は如何に俺だとてそれ以上の行為は到底受け入れ難いし受け入れたくはない!!
だが相手は俺の事を知り尽くし異常なまでに俺へ執着するキャサリンなのである。
当然俺が彼女を抱く事に異を唱えるのは想定内だった様だ。
「いいの? 今宵私を抱かなければあの小娘は死ぬわよ。配下の者へ私が夜明け以前に部屋へ戻ればあの小娘を殺すように命令を出してあるわ。アレは私の命令以外誰の命令も受け入れはしない。もし私が明朝破瓜の印を持って私室へ戻らなければ、あの小娘はアレの手に掛かって死ぬわよ」
「キャシー冗談はよせ。今ならば何も聞かなかった事に――――」
「ふふ、何故この様な事を冗談だと決めつけられるの? 誰よりも、そう父様よりも優秀過ぎるエセルがどうしてこれを冗談なんて言葉で片付けようとするのかしら」
「キャシー」
「それとも――――あの小娘を傷つけなければわからないのかしら……ね」
「キャシーいい加減に……!!」
「そういい加減にするのは貴方よエセル。貴方の恋人は私なの。あの小娘はただの政略だけ、名ばかりの婚約者なの。それすらも私が我慢してあげていると言うのにも拘らずエセル、恋人である私が今この瞬間貴方の愛を欲しているのよ。貴方は私の身体を抱いて愛してくれればあの小娘は死なずに済むわ」
最悪だ――――。
キャサリンの言う様に確かに子飼いの配下は存在する。
あれは今より六年前になるだろうか。
キャシーが外出先で偶然拾ったと言って連れてきたのが一人の少女だった。
漆黒の髪と恐怖と緊張に染められた大きな黒い瞳を持つガリガリに痩せた少女。
ここより海を渡った遠い東の端にある国より連れ去られたのだと言う異国の少女。
俺達兄妹よりも三歳は年下なのに何故か大人よりも強く、そしてある程度の教養や知識も備わっていた正体不明の少女。
その彼女の名は咲弥。
咲弥はキャシーに拾われた瞬間彼女を自身の主として認めていた。
そうして拾われた日よりキャシーの専従侍女兼護衛にまた隠密として仕えている。
また咲弥は色々な意味で実に優秀だった。
本来ならば俺の配下にしたいとも思ったのだがしかし――――。
「殿下は私を拾って下さってはおりません。私を拾いここへ連れて来て下さったのはキャサリン様なのです。私はご恩へ報いる為だけにこの国へ留まっているのです。そして今私の仕えるべき御方はキャサリン様以外誰も存在は致しません」
曇りのない眼で、王太子相手だと言うのにも拘らずに堂々と咲弥はそう宣ったのだ。
まあその清々しいまでの物言いに俺自身何も言い返せなかったしまた、咲弥の言う通り彼女を拾ったのはキャシーなのだ。
でもそれからだった。
キャシーの周りで色々と異変――――が起こったのは……。
薄闇の寝室へと入ってきたキャシーはそう言って俺の承諾等関係なく羽織っていたガウンを脱げば、その下は薄いカーテン越しより入る月の光でもわかるくらいに自身の身体のラインが分かる程の薄絹を、然も緻密且つ上品なレースを惜しげもなく贅沢に使われた夜着は、品を損なう事なく奔放な女性らしさを最大限に生かした大胆なデザインのもの。
多分それを纏い俺へ恥ずかしげに頬を染め上げれば可愛らしくも懇願する相手がキャシーではなく貴女であれば、俺はどれ程に幸せだった事だろう。
そして何故俺は実の妹であるキャシーに夜伽を懇願と言う命令をされなければいけないのだ。
キスやハグ……キャシーの望む言葉までは許容範囲として受け入れてもいた。
俺達の境遇が境遇だけに、また愛する貴女の命を盾に取られれば受け入れざるを得ない。
しかしそこまでだっっ。
それ以上は如何に俺だとてそれ以上の行為は到底受け入れ難いし受け入れたくはない!!
だが相手は俺の事を知り尽くし異常なまでに俺へ執着するキャサリンなのである。
当然俺が彼女を抱く事に異を唱えるのは想定内だった様だ。
「いいの? 今宵私を抱かなければあの小娘は死ぬわよ。配下の者へ私が夜明け以前に部屋へ戻ればあの小娘を殺すように命令を出してあるわ。アレは私の命令以外誰の命令も受け入れはしない。もし私が明朝破瓜の印を持って私室へ戻らなければ、あの小娘はアレの手に掛かって死ぬわよ」
「キャシー冗談はよせ。今ならば何も聞かなかった事に――――」
「ふふ、何故この様な事を冗談だと決めつけられるの? 誰よりも、そう父様よりも優秀過ぎるエセルがどうしてこれを冗談なんて言葉で片付けようとするのかしら」
「キャシー」
「それとも――――あの小娘を傷つけなければわからないのかしら……ね」
「キャシーいい加減に……!!」
「そういい加減にするのは貴方よエセル。貴方の恋人は私なの。あの小娘はただの政略だけ、名ばかりの婚約者なの。それすらも私が我慢してあげていると言うのにも拘らずエセル、恋人である私が今この瞬間貴方の愛を欲しているのよ。貴方は私の身体を抱いて愛してくれればあの小娘は死なずに済むわ」
最悪だ――――。
キャサリンの言う様に確かに子飼いの配下は存在する。
あれは今より六年前になるだろうか。
キャシーが外出先で偶然拾ったと言って連れてきたのが一人の少女だった。
漆黒の髪と恐怖と緊張に染められた大きな黒い瞳を持つガリガリに痩せた少女。
ここより海を渡った遠い東の端にある国より連れ去られたのだと言う異国の少女。
俺達兄妹よりも三歳は年下なのに何故か大人よりも強く、そしてある程度の教養や知識も備わっていた正体不明の少女。
その彼女の名は咲弥。
咲弥はキャシーに拾われた瞬間彼女を自身の主として認めていた。
そうして拾われた日よりキャシーの専従侍女兼護衛にまた隠密として仕えている。
また咲弥は色々な意味で実に優秀だった。
本来ならば俺の配下にしたいとも思ったのだがしかし――――。
「殿下は私を拾って下さってはおりません。私を拾いここへ連れて来て下さったのはキャサリン様なのです。私はご恩へ報いる為だけにこの国へ留まっているのです。そして今私の仕えるべき御方はキャサリン様以外誰も存在は致しません」
曇りのない眼で、王太子相手だと言うのにも拘らずに堂々と咲弥はそう宣ったのだ。
まあその清々しいまでの物言いに俺自身何も言い返せなかったしまた、咲弥の言う通り彼女を拾ったのはキャシーなのだ。
でもそれからだった。
キャシーの周りで色々と異変――――が起こったのは……。
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