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第五章 帝国の皇子
11 事後処理、そして決意
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「彼らは……、いったいどうなるのです?」
地下牢で取り調べを受けるのはわかるが、その後の信者たちの行く末がどうなるのか気になった。
「このまま入れ墨を入れられ、まとめて東の国境に捨て置かれる。実質は、フェイシア王国への追放だな」
さすがに命までは奪わないのか。精霊教が禁教化されていないフェイシア王国へ行けるようにとの、温情措置ともとれる。
「少し、甘いのかもしれないな。見せしめに皆殺しにするべきなのかもしれない。だが、さすがにそこまですれば、フェイシア王国以外の精霊教を受け入れている国との関係も、一気に悪化しかねない。大国フェイシアと対峙しつつその他の国とも戦う余裕は、今の帝国にはない。政治の難しいところだな」
ベルナルドの優しさ、というわけでもなかった。外交関係を見据えての処置のようだ。
徹底的に処断をしたい。だが、対外関係を考えればそこまでするのもうまくない。両者のバランスを見た結果、追放という結論に達したのだろう。
ただ、一つ懸念があった。追放された彼らが、帝国に対する恨みでどのような行動をとるかがわからない点だ。積極的に王国内の精霊教会と連携を取って、帝国に害をなす可能性も無きにしも非ずだ。帝国全土から追放される精霊教徒の総数は、果たしてどれほどの数になるだろうか。将来に禍根を残さないことを、ラディムは祈った。
「あとは、一部の暴力行為に走った者については、かわいそうだが……」
頭を振るベルナルド。つまり、死刑ということか。
「そうですか……」
徹底的な処遇が必要だとはいえ、ラディムの心は少し重い。
「今回の作戦で、ミュニホフ内の精霊教は一掃された。同じ作戦が帝国内各地で同時進行されている。一月もすれば、この帝国から精霊教は完全に排除されるだろう」
重苦しい雰囲気を払うように、少し誇らしげにベルナルドは語る。
「これで、帝国の安寧は守られるのですね?」
「そうだ。ただ、帝国外の精霊教もどうにかしなければ、いずれ世界は崩壊するだろう」
ベルナルドは頷いた。ただ、その表情は少し硬くなる。
「はい……」
『世界は崩壊する』と聞き、ラディムも顔が引き締まる。
まだまだ、これで終わりではないのだ。事は帝国内にとどまらない。世界的な問題だった。
「我が帝国は、世界の崩壊を防ぐためにも、この大陸から精霊教を消し去らなければならない。場合によっては武力に訴えてでもだ。今後、他国に干渉をする必要も出よう」
ベルナルドは少し間を置くと、ラディムの肩をつかみ、鋭く見据えた。
「ラディム、お前もいずれ、戦場に立つかもしれない。心しておくように」
「はい、陛下……」
戦場に立つ……。皇家の人間であれば、避けては通れない道。しかも、ラディムは数少ない『生命力』持ち。戦いに引っ張り出されないわけがなかった。
初陣がいつになるかはわからない。だが、このタイミングでベルナルドはラディムに告げた。意味するところは、おそらく――。
(帝国外の精霊教掃討作戦……。おそらくは、プリンツ辺境伯領への侵攻、か。そこが、私の初陣になるのだろうな)
改めて覚悟を決めなければならない時が、もうすぐ来る。ラディムはそう直感した。
ベルナルドの言葉通り、一月後、帝国政府から精霊教が一掃されたとの宣言が出された。
帝国による精霊教徒の追放処置は、フェイシア王国を大いに刺激した。受け入れる側に立つプリンツ辺境伯領が、いくら精霊教を篤く信奉している地域だとはいえ、いきなり数千人規模の難民が押しかけてくれば混乱は必至だったからだ。
辺境伯家はフェイシア王家を通じて正式に帝国へ抗議を出したが、ベルナルドは無視を決め込んだ。間違いなくベルナルドはプリンツ辺境伯領へ侵攻するつもりだと、この時ラディムは確信した。
地下牢で取り調べを受けるのはわかるが、その後の信者たちの行く末がどうなるのか気になった。
「このまま入れ墨を入れられ、まとめて東の国境に捨て置かれる。実質は、フェイシア王国への追放だな」
さすがに命までは奪わないのか。精霊教が禁教化されていないフェイシア王国へ行けるようにとの、温情措置ともとれる。
「少し、甘いのかもしれないな。見せしめに皆殺しにするべきなのかもしれない。だが、さすがにそこまですれば、フェイシア王国以外の精霊教を受け入れている国との関係も、一気に悪化しかねない。大国フェイシアと対峙しつつその他の国とも戦う余裕は、今の帝国にはない。政治の難しいところだな」
ベルナルドの優しさ、というわけでもなかった。外交関係を見据えての処置のようだ。
徹底的に処断をしたい。だが、対外関係を考えればそこまでするのもうまくない。両者のバランスを見た結果、追放という結論に達したのだろう。
ただ、一つ懸念があった。追放された彼らが、帝国に対する恨みでどのような行動をとるかがわからない点だ。積極的に王国内の精霊教会と連携を取って、帝国に害をなす可能性も無きにしも非ずだ。帝国全土から追放される精霊教徒の総数は、果たしてどれほどの数になるだろうか。将来に禍根を残さないことを、ラディムは祈った。
「あとは、一部の暴力行為に走った者については、かわいそうだが……」
頭を振るベルナルド。つまり、死刑ということか。
「そうですか……」
徹底的な処遇が必要だとはいえ、ラディムの心は少し重い。
「今回の作戦で、ミュニホフ内の精霊教は一掃された。同じ作戦が帝国内各地で同時進行されている。一月もすれば、この帝国から精霊教は完全に排除されるだろう」
重苦しい雰囲気を払うように、少し誇らしげにベルナルドは語る。
「これで、帝国の安寧は守られるのですね?」
「そうだ。ただ、帝国外の精霊教もどうにかしなければ、いずれ世界は崩壊するだろう」
ベルナルドは頷いた。ただ、その表情は少し硬くなる。
「はい……」
『世界は崩壊する』と聞き、ラディムも顔が引き締まる。
まだまだ、これで終わりではないのだ。事は帝国内にとどまらない。世界的な問題だった。
「我が帝国は、世界の崩壊を防ぐためにも、この大陸から精霊教を消し去らなければならない。場合によっては武力に訴えてでもだ。今後、他国に干渉をする必要も出よう」
ベルナルドは少し間を置くと、ラディムの肩をつかみ、鋭く見据えた。
「ラディム、お前もいずれ、戦場に立つかもしれない。心しておくように」
「はい、陛下……」
戦場に立つ……。皇家の人間であれば、避けては通れない道。しかも、ラディムは数少ない『生命力』持ち。戦いに引っ張り出されないわけがなかった。
初陣がいつになるかはわからない。だが、このタイミングでベルナルドはラディムに告げた。意味するところは、おそらく――。
(帝国外の精霊教掃討作戦……。おそらくは、プリンツ辺境伯領への侵攻、か。そこが、私の初陣になるのだろうな)
改めて覚悟を決めなければならない時が、もうすぐ来る。ラディムはそう直感した。
ベルナルドの言葉通り、一月後、帝国政府から精霊教が一掃されたとの宣言が出された。
帝国による精霊教徒の追放処置は、フェイシア王国を大いに刺激した。受け入れる側に立つプリンツ辺境伯領が、いくら精霊教を篤く信奉している地域だとはいえ、いきなり数千人規模の難民が押しかけてくれば混乱は必至だったからだ。
辺境伯家はフェイシア王家を通じて正式に帝国へ抗議を出したが、ベルナルドは無視を決め込んだ。間違いなくベルナルドはプリンツ辺境伯領へ侵攻するつもりだと、この時ラディムは確信した。
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