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第六章 一人の少女と一匹の猫
4 『生命力』を持っているのか
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「……殿下、少しよろしいですか?」
「ん? なんだ、ザハリアーシュ」
何事だとラディムは訝しんだ。
「その娘、どうやら『生命力』持ちですぞ。私の持っている簡易『生命力』測定器が反応しております」
「なんだって!?」
驚いたラディムは、思わず素っ頓狂な声を上げた。
ザハリアーシュは右腕につけた腕輪をポンポンと触っている。その腕輪が測定器なのだろう。何やら鈍く明滅している。『生命力』に反応しているのだろうか。
『生命力』持ちは相当に珍しい。現時点でラディムと同世代の子供にしか見られないからだ。そういった意味では、確かに、ラディムとほぼ同い年に見えるこの少女が、『生命力』を持っていてもおかしくはない。
「ですので、我々で囲うべきです。精霊教の連中に連れていかれれば、精霊使いにされてしまいます。もちろん、皇宮に連れて行くわけにもいきませんから、世界再生教の教会に預けるのが一番かと」
それ以外にありませぬぞ、と言いたげに、ザハリアーシュはラディムに詰め寄った。
確かに、精霊教に連れていかれてしまえば大変だ。『生命力』――精霊教では『霊素』だったか――を持っている以上、目をつけられれば間違いなく勧誘される。この国で精霊教に関わればどうなるかは、半年前の精霊教取り締まりで、ラディムもよくわかっていた。せっかく助けたのだ。この少女にそんな目には合ってほしくない。
「教会か? 孤児院じゃないのか?」
孤児院ではなく教会に預ける。つまり、ザハリアーシュは少女を世界再生教の聖職者にさせるつもりなのだろうか。
「はい。今、教会では『生命力』持ちを、魔術が使える『導師』にしようと教育中です。あの娘にとっても、教会で導師を目指せば安定した地位を得られますし、よろしいかと思いますが」
数少ない魔術を行使できる生命力持ちとして、優遇された生活が見込める、とザハリアーシュは言う。
「うん……、悪くない話だな。よし、提案してみよう」
下手な職に就くよりも、よほど良い暮らしができるだろうと、ラディムも思った。
「おい、お前。世界再生教の教会に入る気はないか?」
「……世界再生教?」
よくわかっていないのか、少女はきょとんとしている。
ラディムは少女に一から、世界再生教についてと少女の生命力についてを説明した。
「……わかった。その教会で導師を目指してみるよ」
ラディムの説明に納得したのか、少女は少し微笑んだ。
「私はマリエ。マリエ・バールコヴァ」
マリエは立ち上がり、ラディムに右手を差し出した。どうやら握手を求めているようだ。
「私はこの国の第一皇子、ラディム・ギーゼブレヒトだ」
応えるため、ラディムも立ち上がり、右手を出してマリエの手を握った。
「お、皇子様!?」
調子はずれな大声を上げるマリエ。ラディムが告げた事実が信じられないのか、せっかく立ち上がったのに、またへなへなと力なく座り込んだ。
「こちらから身分を隠して近づいたんだ、気を使わなくていい」
マリエの腕を引っぱり立たせてやると、ラディムは笑った。
「は、はいっ。本当に、ありがとうございました。この御恩は一生涯忘れません!」
マリエは恐縮しきりに頭を下げた。言葉遣いも丁寧なものに変わっている。
出会いはラディムの気まぐれだった。だが、このラディムの気まぐれによって、少女マリエの人生は大きく変わることになる。
本来ならばただの町娘として終わるはずだった。しかし、偶然にも『生命力』持ちとして見出された。マリエの将来は、非常に明るいものに変わっていった。
「ん? なんだ、ザハリアーシュ」
何事だとラディムは訝しんだ。
「その娘、どうやら『生命力』持ちですぞ。私の持っている簡易『生命力』測定器が反応しております」
「なんだって!?」
驚いたラディムは、思わず素っ頓狂な声を上げた。
ザハリアーシュは右腕につけた腕輪をポンポンと触っている。その腕輪が測定器なのだろう。何やら鈍く明滅している。『生命力』に反応しているのだろうか。
『生命力』持ちは相当に珍しい。現時点でラディムと同世代の子供にしか見られないからだ。そういった意味では、確かに、ラディムとほぼ同い年に見えるこの少女が、『生命力』を持っていてもおかしくはない。
「ですので、我々で囲うべきです。精霊教の連中に連れていかれれば、精霊使いにされてしまいます。もちろん、皇宮に連れて行くわけにもいきませんから、世界再生教の教会に預けるのが一番かと」
それ以外にありませぬぞ、と言いたげに、ザハリアーシュはラディムに詰め寄った。
確かに、精霊教に連れていかれてしまえば大変だ。『生命力』――精霊教では『霊素』だったか――を持っている以上、目をつけられれば間違いなく勧誘される。この国で精霊教に関わればどうなるかは、半年前の精霊教取り締まりで、ラディムもよくわかっていた。せっかく助けたのだ。この少女にそんな目には合ってほしくない。
「教会か? 孤児院じゃないのか?」
孤児院ではなく教会に預ける。つまり、ザハリアーシュは少女を世界再生教の聖職者にさせるつもりなのだろうか。
「はい。今、教会では『生命力』持ちを、魔術が使える『導師』にしようと教育中です。あの娘にとっても、教会で導師を目指せば安定した地位を得られますし、よろしいかと思いますが」
数少ない魔術を行使できる生命力持ちとして、優遇された生活が見込める、とザハリアーシュは言う。
「うん……、悪くない話だな。よし、提案してみよう」
下手な職に就くよりも、よほど良い暮らしができるだろうと、ラディムも思った。
「おい、お前。世界再生教の教会に入る気はないか?」
「……世界再生教?」
よくわかっていないのか、少女はきょとんとしている。
ラディムは少女に一から、世界再生教についてと少女の生命力についてを説明した。
「……わかった。その教会で導師を目指してみるよ」
ラディムの説明に納得したのか、少女は少し微笑んだ。
「私はマリエ。マリエ・バールコヴァ」
マリエは立ち上がり、ラディムに右手を差し出した。どうやら握手を求めているようだ。
「私はこの国の第一皇子、ラディム・ギーゼブレヒトだ」
応えるため、ラディムも立ち上がり、右手を出してマリエの手を握った。
「お、皇子様!?」
調子はずれな大声を上げるマリエ。ラディムが告げた事実が信じられないのか、せっかく立ち上がったのに、またへなへなと力なく座り込んだ。
「こちらから身分を隠して近づいたんだ、気を使わなくていい」
マリエの腕を引っぱり立たせてやると、ラディムは笑った。
「は、はいっ。本当に、ありがとうございました。この御恩は一生涯忘れません!」
マリエは恐縮しきりに頭を下げた。言葉遣いも丁寧なものに変わっている。
出会いはラディムの気まぐれだった。だが、このラディムの気まぐれによって、少女マリエの人生は大きく変わることになる。
本来ならばただの町娘として終わるはずだった。しかし、偶然にも『生命力』持ちとして見出された。マリエの将来は、非常に明るいものに変わっていった。
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