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第七章 封じられた記憶
4 この夢は、いったいなんだ?
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(ん……。なんだ、ここは……。夢?)
ひと月前に見た奇妙な夢と同じような感覚だった。夢だけれど、夢ではない。現実感はあるが、しかし、ここが夢の中であることもわかる。
ただ、先月見た夢とは違って、周りは一面の白。床も壁も天井もない。ただの白。
そんな不可思議な空間に、ラディムは浮いていた。
(誰か、いる?)
眼前に何かの気配を感じた。目を凝らすと、どうやら人のようだった。
(あっちゃー、転生先が男の子? ヴァーツラフさん、ちょっと話が違うよぉー)
どこか愛嬌のある声が、ラディムの脳裏に直接響いてくる。
(ん? 女?)
シルエットがはっきりとしてきた。どうやら相手は女のようだった。
(どうも、こんばんは。君は、えっと……、ラディム君。だよね?)
なぜかその女はラディムの名を知っていた。ラディムは身構えた。
(あぁ、私はラディムだ。で、あなたは誰?)
(私? 私は片倉優里菜。あ、ユリナ・カタクラって言ったほうがいいのかな)
知らない女のはずだ。だが――。
(ユリナ? 私の母上と同じ名前だな。姓は違うようだが)
偶然だろうか。ラディムの母ユリナ・ギーゼブレヒトと、姓は違うものの名前が一致している。
(私はね、あなたの母親なの。と同時に、私はあなた自身でもある)
突然、女が理解しがたいことを口にし始めた。
(何を言っているのだ? 確かに私の母の名はユリナというが、あなたとは別人のはずだ。まず年齢が全然違うだろう。あなたは私よりも少し上、くらいに見えるぞ)
目の前の女が母のはずがない。女はどう見ても十五、六歳くらいにしか見えなかった。ラディムの母のユリナはすでに二十代後半なので、ありえない。
(んー、なんて説明すればいいのかなぁ? おかしいなぁ、本当ならあなたの人格とうまい具合にまじりあうはずなのに……。もう少し時間がかかるのかなぁ? 確か二か月くらいかかるって言われたような気がするし)
(?? 本当に、何を言っているのだ?)
ラディムの理解の範囲を超えていた。人格とかまじりあうとか、いったい何の話だろう。
(ほら、ゆっくりと記憶の底を覗いてみて。……そうそう、そんな感じで)
(なん……だ、これ??)
ラディムは愕然とした。知らない記憶が突然、脳裏に浮かび出した。
(それ、私の記憶。その記憶を見てくれれば、今のこの状況もわかるでしょ?)
(あ、ああ……。なんとなくだが、わかった。まったく信じられないけれど)
流れ込んできた記憶があまりにも膨大で、ラディムはまだすべてを処理しきれなかった。頭が激しく痛む。
夢の中のはずだが、痛覚がまるで現実味を帯びている。
だが、表層部分の記憶からだけでも、何となくではあったが、目の前の優里菜が何を言わんとしているのか理解はできた。
片倉優里菜のこと。VRMMO『精霊たちの憂鬱』のこと。管理者ヴァーツラフのこと。優里菜がテストプレイヤーとして転生をしたこと。
ところどころ聞きなれない単語があったため、理解は完全ではない。詳細は時間のある時に、落ち着いて深層の記憶を探らなければ、おそらくはダメだろう。
(ヴァーツラフ君が言うには、二か月くらいで君と私の人格は違和感なくまじりあうそうだよ。それまで、ちょと辛抱してね)
まじりあったとして、いったいどんな人格になるというのだろう。帝国の第一皇子としてふさわしい人格が、果たして残っているのだろうか。
何より気になるのは、精霊教のことだ。優里菜の記憶では、精霊の存在は悪として認識されていなかった。これはいったいどういうことだろうか。
(うう……。頭が割れそうに痛いな……)
深く考えようとすると、脳が拒絶する。ダメだ、これ以上は考えられない。
(ごめんなさい、いきなりで負荷がかかっているみたいだね。今日はもうゆっくり休んで。またおいおい、お話ししましょう)
優里菜はラディムに優しく声をかけた。
そのまま、ラディムは意識を失った――。
ひと月前に見た奇妙な夢と同じような感覚だった。夢だけれど、夢ではない。現実感はあるが、しかし、ここが夢の中であることもわかる。
ただ、先月見た夢とは違って、周りは一面の白。床も壁も天井もない。ただの白。
そんな不可思議な空間に、ラディムは浮いていた。
(誰か、いる?)
眼前に何かの気配を感じた。目を凝らすと、どうやら人のようだった。
(あっちゃー、転生先が男の子? ヴァーツラフさん、ちょっと話が違うよぉー)
どこか愛嬌のある声が、ラディムの脳裏に直接響いてくる。
(ん? 女?)
シルエットがはっきりとしてきた。どうやら相手は女のようだった。
(どうも、こんばんは。君は、えっと……、ラディム君。だよね?)
なぜかその女はラディムの名を知っていた。ラディムは身構えた。
(あぁ、私はラディムだ。で、あなたは誰?)
(私? 私は片倉優里菜。あ、ユリナ・カタクラって言ったほうがいいのかな)
知らない女のはずだ。だが――。
(ユリナ? 私の母上と同じ名前だな。姓は違うようだが)
偶然だろうか。ラディムの母ユリナ・ギーゼブレヒトと、姓は違うものの名前が一致している。
(私はね、あなたの母親なの。と同時に、私はあなた自身でもある)
突然、女が理解しがたいことを口にし始めた。
(何を言っているのだ? 確かに私の母の名はユリナというが、あなたとは別人のはずだ。まず年齢が全然違うだろう。あなたは私よりも少し上、くらいに見えるぞ)
目の前の女が母のはずがない。女はどう見ても十五、六歳くらいにしか見えなかった。ラディムの母のユリナはすでに二十代後半なので、ありえない。
(んー、なんて説明すればいいのかなぁ? おかしいなぁ、本当ならあなたの人格とうまい具合にまじりあうはずなのに……。もう少し時間がかかるのかなぁ? 確か二か月くらいかかるって言われたような気がするし)
(?? 本当に、何を言っているのだ?)
ラディムの理解の範囲を超えていた。人格とかまじりあうとか、いったい何の話だろう。
(ほら、ゆっくりと記憶の底を覗いてみて。……そうそう、そんな感じで)
(なん……だ、これ??)
ラディムは愕然とした。知らない記憶が突然、脳裏に浮かび出した。
(それ、私の記憶。その記憶を見てくれれば、今のこの状況もわかるでしょ?)
(あ、ああ……。なんとなくだが、わかった。まったく信じられないけれど)
流れ込んできた記憶があまりにも膨大で、ラディムはまだすべてを処理しきれなかった。頭が激しく痛む。
夢の中のはずだが、痛覚がまるで現実味を帯びている。
だが、表層部分の記憶からだけでも、何となくではあったが、目の前の優里菜が何を言わんとしているのか理解はできた。
片倉優里菜のこと。VRMMO『精霊たちの憂鬱』のこと。管理者ヴァーツラフのこと。優里菜がテストプレイヤーとして転生をしたこと。
ところどころ聞きなれない単語があったため、理解は完全ではない。詳細は時間のある時に、落ち着いて深層の記憶を探らなければ、おそらくはダメだろう。
(ヴァーツラフ君が言うには、二か月くらいで君と私の人格は違和感なくまじりあうそうだよ。それまで、ちょと辛抱してね)
まじりあったとして、いったいどんな人格になるというのだろう。帝国の第一皇子としてふさわしい人格が、果たして残っているのだろうか。
何より気になるのは、精霊教のことだ。優里菜の記憶では、精霊の存在は悪として認識されていなかった。これはいったいどういうことだろうか。
(うう……。頭が割れそうに痛いな……)
深く考えようとすると、脳が拒絶する。ダメだ、これ以上は考えられない。
(ごめんなさい、いきなりで負荷がかかっているみたいだね。今日はもうゆっくり休んで。またおいおい、お話ししましょう)
優里菜はラディムに優しく声をかけた。
そのまま、ラディムは意識を失った――。
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