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第八章 皇帝親征
20 辺境伯邸へ一緒に行こう
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「でも不思議だよね、どうして一人っ子だなんて嘘の情報が流れているんだろう?」
出生の謎が一つ解けた。ラディムとアリツェは双子だった。
だが、新たな謎ができた。双子の事実をなぜ周囲に隠しているのか。
「これは、本格的に辺境伯家を調べたほうがよさそうだな……」
悠太は腕を組んで考え込んだ。
双子という事実に、優里菜もいろいろと考えさせられる部分がある。
人格がない悠太の記憶。転生処置の際に何らかのトラブルがあったとすれば、この双子という事実が原因の一つなのかもしれない。
「あっと、そうだそうだ。私だけが一方的に悠太君のリアルネームを知っているのも不公平だよね。私の本名は片倉優里菜。ゲームキャラと同じだから、今までどおりに呼んでオッケーだよ」
「了解だ。よろしく頼むよ、優里菜」
優里菜は悠太と微笑みあった。
「じゃ、一緒に辺境伯家に潜入する? ラディム君もミアちゃんのおかげでかなり隠密行動は得意だよ」
潜入に人数が増えるのは好ましくないが、悠太の転生体であれば話は別だ。高度な精霊術を使えるはずなので、かえって安全性が増すと優里菜は睨んだ。
「え? ミアだって!?」
悠太は驚きの声を上げた。
「実は、こっちにはペスがいるんだ」
悠太は後方を指さした。優里菜が目を凝らすと、ドミニクの脇で子犬が一匹おとなしくお座りをしている。優里菜の記憶の中にある、『精霊たちの憂鬱』でカレル・プリンツが従えていたかつての使い魔ペスに、間違いがなかった。
「なんだか、訳が分からないね」
ラディムとアリツェの間で、悠太が二つに分裂してばらばらに入り込んだような印象を受ける。これも双子になった影響だろうか。
「このままここで悩んでいても仕方がない。辺境伯家の調査だ!」
話はこれで終わりだと言わんばかりに、悠太は手をパンパンと叩いた。
「じゃあ、ラディム君のほうでうまいこと皇帝陛下の足止め工作をしておくよ。数日の猶予を作るから、その間に潜り込もう。明日、深夜にまたこの場所で」
両軍が交戦状態にならないよう、ベルナルドをうまく誘導しなければいけない。
せっかく悠太という強い味方もでき、潜入作戦の成功確率が大分上がっている。開戦で絶好の機会をふいにするわけにはいかなかった。
「あ、まった。足止めはお願いしたいんだが、辺境伯家へ潜入する必要はないぞ。オレたちは精霊教の大司教から、現辺境伯への紹介状をもらってきている。すんなり中に入れてもらえるはずだ」
悠太は懐から何やら書状を取り出し、ひらひらと振った。どうやら今話した紹介状のようだ。
「それは僥倖だね。わかったよ、悠太君。じゃあ、足止めはしておくから、紹介状のほうはよろしくね」
悠太に出会うまでは、街の警備の厳しさを嘆きつつ、どうしたものかと悩んでいた。だが、これでどうやら万事、うまく解決しそうだ。優里菜は自らの幸運に破顔した。
「まかせとけ!」
悠太は薄い胸をそらしながらポンッと叩く。
「え、えっと……。君はアリツェ、だよね?」
悠太の背後から戸惑いの声が漏れてきた。ドミニクだ。すっかり蚊帳の外に置かれ、困惑している。
「あ、ドミニク様。突然の事態に混乱されていらっしゃいますよね。ご心配なさらないでくださいませ。確かにわたくしはアリツェですわ。詳しい話は、またあとでいたします。ドミニク様にもご理解いただけるよう、きちんと説明いたしますわ」
悠太は慌てて口調を戻し、ドミニクに弁明を始めた。
優里菜はその様子を眺めながら、どうベルナルドを説得すべきか思案し始めた。
中央大陸歴八一三年一月――。
ついに運命の兄妹が再会を果たした。
世界は、大きく動きはじめた――――。
第二部 精霊を憎みし少年 ――完――
出生の謎が一つ解けた。ラディムとアリツェは双子だった。
だが、新たな謎ができた。双子の事実をなぜ周囲に隠しているのか。
「これは、本格的に辺境伯家を調べたほうがよさそうだな……」
悠太は腕を組んで考え込んだ。
双子という事実に、優里菜もいろいろと考えさせられる部分がある。
人格がない悠太の記憶。転生処置の際に何らかのトラブルがあったとすれば、この双子という事実が原因の一つなのかもしれない。
「あっと、そうだそうだ。私だけが一方的に悠太君のリアルネームを知っているのも不公平だよね。私の本名は片倉優里菜。ゲームキャラと同じだから、今までどおりに呼んでオッケーだよ」
「了解だ。よろしく頼むよ、優里菜」
優里菜は悠太と微笑みあった。
「じゃ、一緒に辺境伯家に潜入する? ラディム君もミアちゃんのおかげでかなり隠密行動は得意だよ」
潜入に人数が増えるのは好ましくないが、悠太の転生体であれば話は別だ。高度な精霊術を使えるはずなので、かえって安全性が増すと優里菜は睨んだ。
「え? ミアだって!?」
悠太は驚きの声を上げた。
「実は、こっちにはペスがいるんだ」
悠太は後方を指さした。優里菜が目を凝らすと、ドミニクの脇で子犬が一匹おとなしくお座りをしている。優里菜の記憶の中にある、『精霊たちの憂鬱』でカレル・プリンツが従えていたかつての使い魔ペスに、間違いがなかった。
「なんだか、訳が分からないね」
ラディムとアリツェの間で、悠太が二つに分裂してばらばらに入り込んだような印象を受ける。これも双子になった影響だろうか。
「このままここで悩んでいても仕方がない。辺境伯家の調査だ!」
話はこれで終わりだと言わんばかりに、悠太は手をパンパンと叩いた。
「じゃあ、ラディム君のほうでうまいこと皇帝陛下の足止め工作をしておくよ。数日の猶予を作るから、その間に潜り込もう。明日、深夜にまたこの場所で」
両軍が交戦状態にならないよう、ベルナルドをうまく誘導しなければいけない。
せっかく悠太という強い味方もでき、潜入作戦の成功確率が大分上がっている。開戦で絶好の機会をふいにするわけにはいかなかった。
「あ、まった。足止めはお願いしたいんだが、辺境伯家へ潜入する必要はないぞ。オレたちは精霊教の大司教から、現辺境伯への紹介状をもらってきている。すんなり中に入れてもらえるはずだ」
悠太は懐から何やら書状を取り出し、ひらひらと振った。どうやら今話した紹介状のようだ。
「それは僥倖だね。わかったよ、悠太君。じゃあ、足止めはしておくから、紹介状のほうはよろしくね」
悠太に出会うまでは、街の警備の厳しさを嘆きつつ、どうしたものかと悩んでいた。だが、これでどうやら万事、うまく解決しそうだ。優里菜は自らの幸運に破顔した。
「まかせとけ!」
悠太は薄い胸をそらしながらポンッと叩く。
「え、えっと……。君はアリツェ、だよね?」
悠太の背後から戸惑いの声が漏れてきた。ドミニクだ。すっかり蚊帳の外に置かれ、困惑している。
「あ、ドミニク様。突然の事態に混乱されていらっしゃいますよね。ご心配なさらないでくださいませ。確かにわたくしはアリツェですわ。詳しい話は、またあとでいたします。ドミニク様にもご理解いただけるよう、きちんと説明いたしますわ」
悠太は慌てて口調を戻し、ドミニクに弁明を始めた。
優里菜はその様子を眺めながら、どうベルナルドを説得すべきか思案し始めた。
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