わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!

ふみきり

文字の大きさ
137 / 272
第十二章 悪役令嬢爆誕

8 わたくし良い子ではないですわ

しおりを挟む
 アレシュに嫌がらせ現場を見られた翌日、アリツェはドミニクの訪問を受けていた。

「ねぇ、アリツェ。最近ボクに構ってくれないけれど、もしかしてクリスティーナの件で何かあったのかい?」

 ドミニクは不安げな表情でアリツェの顔を覗き込む。

「え? いえ、おほほ……」

 何と答えたものか迷い、アリツェは笑ってごまかした。

「むぅ、なんだか怪しいな。……実はね、アレシュの奴が、アリツェのことを悪く言うんで困っているんだ」

 ため息をつきながら、「まったく、あいつはまだ子供なんだから」とこぼす。

 どうやら昨日のクリスティーナの部屋の前での一件を受けて、アレシュはさっそくドミニクに告げ口に行ったらしい。なんとも行動が早い。

「君がクリスティーナをいじめているだなんてありえない妄想を語って、正直、辟易としている」

 ドミニクは両手を広げて、頭を振った。

「もし本当にわたくしがクリスティーナ様をいじめているとしたら、ドミニクはどういたしますか?」

 ドミニクの反応を確かめたくて、アリツェは鎌をかけた。ドミニクはどんな答えを返すだろうか。

「ははっ、そんな話、真に受けるわけないじゃないか。アリツェの性格はよく知っている。君に、そんな大それた真似はできないよ」

 ドミニクは一笑に付した。

「あら、わたくし、ドミニクが思っているほど良い子ではないですわ。裏の顔も、持っているんですのよ」

 アリツェはもう一歩踏み込んでみた。

「はっは、面白い冗談だね、アリツェ。アレシュの奴、どうやらあの性悪聖女を気に入ってしまったみたいなんだ。それで、君のことを悪く言っているんだろうな」

 それでもドミニクは笑い飛ばし、アリツェの言葉を本気にしなかった。

「はぁ……」

 今のドミニクの様子を見て、アリツェは何を言っても無駄だと悟った。

 ここまで信用してくれるのは、婚約者として嬉しい気持ちはもちろんある。だが、今この状況では、ちょっと好ましくはない。ドミニクの言動から、クリスティーナへの嫌がらせがまったく功を奏していないとわかる。

「まぁ、アレシュに何と言われようと、ボクはアリツェ一筋なのに変わりはないからね」

 ドミニクはニコリとアリツェに微笑みかけ、腕を伸ばしてアリツェの体を抱きしめた。

「あぅぅ、ドミニク、いけません」

 ドミニクの突然の行動に、アリツェはなすがままとなる。

「ふふ、今は二人っきりなんだ。いいじゃないか」

 アリツェの耳元に、ドミニクは優しく言葉をかけた。アリツェはもう、抵抗する気力を完全に失った。

(あぁ……、ドミニクに悪い印象を与えるはずが、まったく効果が出ていませんわ……)






 ドミニクはアリツェを解放すると、そのまま自室へと帰っていった。アリツェはその様子を部屋の入口で見送る。すると、すぐさまどこからかクリスティーナが現れて、ドミニクの腕にまとわりつき始めた。

「またクリスティーナ様がドミニクに付きまとっていらっしゃいますわね」

 神出鬼没のクリスティーナに、アリツェは苦笑した。

(積極的なのはいいけれど、まったく歯牙にもかけられていないよな、あれ)

「なんだか哀れに思えてきますわね」

 悠太の厳しい一言に、アリツェも同感だった。はたから見ている分には、クリスティーナの態度は痛々しかった。

(このままじゃ何も変わらないぞ、アリツェ。ドミニクの気持ちはアリツェから離れる気配はないな)

 クリスティーナが腕を絡めようが、しな垂れかかろうが、ドミニクはまったく動じる様子がない。

 ドミニクの態度にアリツェは嬉しさから胸が熱くなるが、どうにか気持ちを押しとどめた。自分を殺さなければいけないと、アリツェは頭を振る。

「うーん、どういたしましょうか。先に外堀を埋めてしまいますか?」

 これまでのやり取りで、今までの生ぬるい嫌がらせではクリスティーナはまったく動じないとわかった。また、ドミニクもドミニクで、アリツェへの愛が深く、生半可な作戦では気持ちを動かせそうにない。

 であるならば、別の手段を用いなければいけないとアリツェは思い始めた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...