わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!

ふみきり

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第十二章 悪役令嬢爆誕

8 わたくし良い子ではないですわ

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 アレシュに嫌がらせ現場を見られた翌日、アリツェはドミニクの訪問を受けていた。

「ねぇ、アリツェ。最近ボクに構ってくれないけれど、もしかしてクリスティーナの件で何かあったのかい?」

 ドミニクは不安げな表情でアリツェの顔を覗き込む。

「え? いえ、おほほ……」

 何と答えたものか迷い、アリツェは笑ってごまかした。

「むぅ、なんだか怪しいな。……実はね、アレシュの奴が、アリツェのことを悪く言うんで困っているんだ」

 ため息をつきながら、「まったく、あいつはまだ子供なんだから」とこぼす。

 どうやら昨日のクリスティーナの部屋の前での一件を受けて、アレシュはさっそくドミニクに告げ口に行ったらしい。なんとも行動が早い。

「君がクリスティーナをいじめているだなんてありえない妄想を語って、正直、辟易としている」

 ドミニクは両手を広げて、頭を振った。

「もし本当にわたくしがクリスティーナ様をいじめているとしたら、ドミニクはどういたしますか?」

 ドミニクの反応を確かめたくて、アリツェは鎌をかけた。ドミニクはどんな答えを返すだろうか。

「ははっ、そんな話、真に受けるわけないじゃないか。アリツェの性格はよく知っている。君に、そんな大それた真似はできないよ」

 ドミニクは一笑に付した。

「あら、わたくし、ドミニクが思っているほど良い子ではないですわ。裏の顔も、持っているんですのよ」

 アリツェはもう一歩踏み込んでみた。

「はっは、面白い冗談だね、アリツェ。アレシュの奴、どうやらあの性悪聖女を気に入ってしまったみたいなんだ。それで、君のことを悪く言っているんだろうな」

 それでもドミニクは笑い飛ばし、アリツェの言葉を本気にしなかった。

「はぁ……」

 今のドミニクの様子を見て、アリツェは何を言っても無駄だと悟った。

 ここまで信用してくれるのは、婚約者として嬉しい気持ちはもちろんある。だが、今この状況では、ちょっと好ましくはない。ドミニクの言動から、クリスティーナへの嫌がらせがまったく功を奏していないとわかる。

「まぁ、アレシュに何と言われようと、ボクはアリツェ一筋なのに変わりはないからね」

 ドミニクはニコリとアリツェに微笑みかけ、腕を伸ばしてアリツェの体を抱きしめた。

「あぅぅ、ドミニク、いけません」

 ドミニクの突然の行動に、アリツェはなすがままとなる。

「ふふ、今は二人っきりなんだ。いいじゃないか」

 アリツェの耳元に、ドミニクは優しく言葉をかけた。アリツェはもう、抵抗する気力を完全に失った。

(あぁ……、ドミニクに悪い印象を与えるはずが、まったく効果が出ていませんわ……)






 ドミニクはアリツェを解放すると、そのまま自室へと帰っていった。アリツェはその様子を部屋の入口で見送る。すると、すぐさまどこからかクリスティーナが現れて、ドミニクの腕にまとわりつき始めた。

「またクリスティーナ様がドミニクに付きまとっていらっしゃいますわね」

 神出鬼没のクリスティーナに、アリツェは苦笑した。

(積極的なのはいいけれど、まったく歯牙にもかけられていないよな、あれ)

「なんだか哀れに思えてきますわね」

 悠太の厳しい一言に、アリツェも同感だった。はたから見ている分には、クリスティーナの態度は痛々しかった。

(このままじゃ何も変わらないぞ、アリツェ。ドミニクの気持ちはアリツェから離れる気配はないな)

 クリスティーナが腕を絡めようが、しな垂れかかろうが、ドミニクはまったく動じる様子がない。

 ドミニクの態度にアリツェは嬉しさから胸が熱くなるが、どうにか気持ちを押しとどめた。自分を殺さなければいけないと、アリツェは頭を振る。

「うーん、どういたしましょうか。先に外堀を埋めてしまいますか?」

 これまでのやり取りで、今までの生ぬるい嫌がらせではクリスティーナはまったく動じないとわかった。また、ドミニクもドミニクで、アリツェへの愛が深く、生半可な作戦では気持ちを動かせそうにない。

 であるならば、別の手段を用いなければいけないとアリツェは思い始めた。
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