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第十二章 悪役令嬢爆誕
7 なんでこうも次から次と困った方が……
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その日の夕方、アリツェはペスを伴い、精霊術で身を隠しつつクリスティーナの与えられている客室に足を踏み入れた。
「さて、これがクリスティーナ様のバッグですか。……なんだか泥棒のようで、気分が悪いですわね」
アリツェの目の前には、純白の生地に金糸で縁取りがなされた肩掛けのバッグが置かれている。バッグの蓋部分には精霊王の刺繍が施されているので、どうやら精霊教会からの支給品のようだった。
(別に本当に盗むわけじゃない。気にするな)
悠太はクリスティーナのバッグを目立たないところに隠すよう、アリツェに指示を出していた。
「そうはおっしゃいますが、悠太様……」
本人のいないところで持ち物を勝手に持ち出す行為に、アリツェはどうしても抵抗感があった。
(っとまずい、人が来そうだ。とっととやっちまうぞ)
アリツェの葛藤をよそに、悠太は急かす。
「あぁ、こんなことに精霊術――今は、魔術ですか――、を使うだなんて……」
貴重な精霊術をバカげた真似に使う愚かさに、めまいを覚える。
(よしよし、うまくいったな。探しているぞ、クリスティーナの奴)
悠太は声を弾ませた。
「ちょっと、私のバッグはどこっ! 確かにここにしまっておいたはずなのに!」
部屋に戻ったクリスティーナは、自分のバッグが見当たらず、きょろきょろと周囲を漁っている。
とその時、一匹の猫がクリスティーナの傍にやってきて鳴いた。
「え? なに? 霊素を感じる?」
クリスティーナは動きを止め、きょとんとした表情を浮かべている。
(げ、やばい! 精霊術で仕組んだのが、相手の使い魔にバレたぞ!)
悠太はその様子を見て、慌てたような声を上げた。
どうやらあの猫はクリスティーナの使い魔のようだ。
(ちょ、悠太様! クリスティーナ様がこちらに向かって来ますわ!)
使い魔の猫に導かれ、クリスティーナがアリツェの潜伏している部屋の隅に向かってきた。
(こりゃ下手に小細工しない方がいいな。三十六計逃げるに如かずだ)
(まったく! 悠太様の言いなりにするんじゃありませんでしたわ!)
悠太の言うがまま、アリツェはその場をそそくさと退散した。
「逃げられたわ! まったく、あのちんちくりん、いったい何のつもりかしら!」
背後でクリスティーナの怒号が響いた。
「……それにしても、これを見つけられなくて幸いだったわ」
(何か見られたくないものでもあったのでしょうか?)
アリツェはクリスティーナが最後につぶやいた言葉が気になった。バッグに何かやましいものでも隠していたのだろうか。
(さてね。まぁ、いったんこの場は離れよう)
いずれにしても今は状況が悪かった。悠太の言うように、アリツェはクリスティーナの部屋から足早に逃げ出した。
「アリツェめ、許せない! クリスティーナ様に嫌がらせだなんて、性格が悪いにもほどがある!」
逃げ出す途中、廊下の片隅で聞き慣れた声を聞いた。
(おい、あれアレシュじゃないか?)
悠太が声のする方に意識を向けた。アリツェも声の方向へ視線を向けると、ドミニクの弟、アレシュ王子が物陰からクリスティーナの部屋の様子をうかがっていた。
(はぁぁー、なんでこうも次から次と困った方が現れるのでしょうか)
クリスティーナを随分と気に入っていた様子だったが、まさか部屋を盗み見するほどとは思わなかった。
「クリスティーナ様、ボクが絶対に、あの性悪女から守って見せます!」
アレシュはぐっとこぶしを握り締め、力強く声を上げた。
(目を輝かせながら何やら宣言しているぞ、あいつ)
悠太は呆れた声でつぶやく。
(邪魔をされなければいいのですが……)
ああいった手合いは、自分の思い込みで突っ走る傾向があるとアリツェは思っている。計画を妨害されやしないかと、一抹の不安がよぎった。
「さて、これがクリスティーナ様のバッグですか。……なんだか泥棒のようで、気分が悪いですわね」
アリツェの目の前には、純白の生地に金糸で縁取りがなされた肩掛けのバッグが置かれている。バッグの蓋部分には精霊王の刺繍が施されているので、どうやら精霊教会からの支給品のようだった。
(別に本当に盗むわけじゃない。気にするな)
悠太はクリスティーナのバッグを目立たないところに隠すよう、アリツェに指示を出していた。
「そうはおっしゃいますが、悠太様……」
本人のいないところで持ち物を勝手に持ち出す行為に、アリツェはどうしても抵抗感があった。
(っとまずい、人が来そうだ。とっととやっちまうぞ)
アリツェの葛藤をよそに、悠太は急かす。
「あぁ、こんなことに精霊術――今は、魔術ですか――、を使うだなんて……」
貴重な精霊術をバカげた真似に使う愚かさに、めまいを覚える。
(よしよし、うまくいったな。探しているぞ、クリスティーナの奴)
悠太は声を弾ませた。
「ちょっと、私のバッグはどこっ! 確かにここにしまっておいたはずなのに!」
部屋に戻ったクリスティーナは、自分のバッグが見当たらず、きょろきょろと周囲を漁っている。
とその時、一匹の猫がクリスティーナの傍にやってきて鳴いた。
「え? なに? 霊素を感じる?」
クリスティーナは動きを止め、きょとんとした表情を浮かべている。
(げ、やばい! 精霊術で仕組んだのが、相手の使い魔にバレたぞ!)
悠太はその様子を見て、慌てたような声を上げた。
どうやらあの猫はクリスティーナの使い魔のようだ。
(ちょ、悠太様! クリスティーナ様がこちらに向かって来ますわ!)
使い魔の猫に導かれ、クリスティーナがアリツェの潜伏している部屋の隅に向かってきた。
(こりゃ下手に小細工しない方がいいな。三十六計逃げるに如かずだ)
(まったく! 悠太様の言いなりにするんじゃありませんでしたわ!)
悠太の言うがまま、アリツェはその場をそそくさと退散した。
「逃げられたわ! まったく、あのちんちくりん、いったい何のつもりかしら!」
背後でクリスティーナの怒号が響いた。
「……それにしても、これを見つけられなくて幸いだったわ」
(何か見られたくないものでもあったのでしょうか?)
アリツェはクリスティーナが最後につぶやいた言葉が気になった。バッグに何かやましいものでも隠していたのだろうか。
(さてね。まぁ、いったんこの場は離れよう)
いずれにしても今は状況が悪かった。悠太の言うように、アリツェはクリスティーナの部屋から足早に逃げ出した。
「アリツェめ、許せない! クリスティーナ様に嫌がらせだなんて、性格が悪いにもほどがある!」
逃げ出す途中、廊下の片隅で聞き慣れた声を聞いた。
(おい、あれアレシュじゃないか?)
悠太が声のする方に意識を向けた。アリツェも声の方向へ視線を向けると、ドミニクの弟、アレシュ王子が物陰からクリスティーナの部屋の様子をうかがっていた。
(はぁぁー、なんでこうも次から次と困った方が現れるのでしょうか)
クリスティーナを随分と気に入っていた様子だったが、まさか部屋を盗み見するほどとは思わなかった。
「クリスティーナ様、ボクが絶対に、あの性悪女から守って見せます!」
アレシュはぐっとこぶしを握り締め、力強く声を上げた。
(目を輝かせながら何やら宣言しているぞ、あいつ)
悠太は呆れた声でつぶやく。
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