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第十五章 再会
8 ザハリアーシュの腕輪の出所はどこでしょうか?
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「知り合いと言いますか、同じ教会の同僚だったんですよ。その時に先任だった私が、彼の面倒を大分見ましてね。お礼にこの腕輪をいただいたのですが、気に入って普段から身につけていたのです」
ラディムの問いにトマーシュは首肯した。
「で、ある時気付いたんですよ。いわゆる霊素持ちの子に近づくと、この腕輪がほんのりと熱を帯びるのを。今もほら、こうやってアリツェとラディム様に反応しています」
トマーシュはアリツェとラディムに腕輪を触らせた。確かに触れてみると、ほんのりと温かい。トマーシュの体温を受けての温かさではない。何か人工的なものを感じる。
「なるほど……。つまり、アリツェに初めて会った際、その腕輪が熱を持ったから、アリツェが霊素を持っていると判断したと」
「えぇ、そのとおりです」
腕輪をやさしく撫でながらトマーシュは答えた。
「いったい、その腕輪は何なんだろうな。ザハリアーシュの奴はどこで見つけてきたのやら」
ラディムは腕を組んで考え込んでいる。
触らせてもらった感じでは、霊素のようなものは感じられない。もともと霊素実装前からこの世界にあるアイテムだから、当たり前の話ではあるが。
この世界のベースのゲームシステムには、実装されていなかっただけで、もともと『霊素』が存在していた。いつ『霊素』が実装されても大丈夫なように、システム側があらかじめ用意していた『霊素』測定用の、何らかの特殊アイテムだろうか。効果の特殊性からも、もしかしたらいずれかのボス初回撃破ボーナスアイテムあたりの可能性もある。
ラディムも同じ考えに至ったのか、ボスだの初回撃破ボーナスだのの単語をつぶやく声が漏れてきた。この世界にもボス指定された特殊な動物がおり、初回撃破ボーナスがあるのも判明している。ラディムの話では、祖父にあたる前皇帝が母ユリナ・ギーゼブレヒトに与えた『精霊王の証』も、古代の地下遺跡探索の際に倒した守護者から入手したものだという。
「すみません、私もこの腕輪の出自については、まったく聞いていないんです」
トマーシュはすまなそうに頭を振った。
「今度会ったときに、問い詰めたいな」
「でもお兄様、会うとしたら戦場ですわ。難しいのでは?」
会って話すにしても、相手は皇帝と並ぶ今回の戦争の最大の障害と目される人物だ。現実的ではないとアリツェは思う。
「ま、ダメなら仕方がない。聞けたら僥倖ってことで」
ラディムは軽く笑い飛ばした。確かに、今あれこれと考えたところで意味はない。アリツェも腕輪の件はいったん頭の片隅に寄せておいた。
(おいアリツェ、ここいらで一回、各人のステータスを確認してみたらどうだ?)
めずらしく悠太が話に割り込んできた。最近は人格を表に出さないのでアリツェは少し心配していたが、こうして声をかけてもらえると少しほっとする。
(そうですわね、精霊術を使う機会も多かったですし、だいぶ成長したかもしれませんわ)
最近はゆっくりとステータスを確認する余裕がなかった。いい機会だ、ここでじっくりと成長具合を見てみるのもよさそうだ。双子のラディムとの比較もしてみたい。
「実は、この世界には『ステータス表示』という名の技能才能が有りますわ。皆様、ご存じでしょうか」
アリツェはさっそく話題をステータスに切り替えた。
「噂には聞いたことがあるねぇ……。院長先生はどうだい?」
エマは腕を組みながら思案気にし、隣のトマーシュに振った。
「私も、エマと同じですね。もしかしてアリツェ、その技能才能を持っているのですか?」
トマーシュの言葉に、やはりトマーシュ自身は『ステータス表示』の技能才能は持っておらず、霊素感知はあの不思議な腕輪の効果のみによって判断をしたのだと、改めて確信した。
「はい。戦闘などの際に、相手と自分との客観的な力の差がわかるので、大変便利ですわ」
アリツェはうなずいた。
「アリツェはその技能を選択していたのか。優里菜の奴は選んでいなかったみたいだから、私には無理だな」
ラディムは少し残念そうな声を漏らす。そういえば、ラディムの技能才能がなんであるか、聞いたことがなかった。技能才能はステータス表示では確認できないので、直接本人に確認するよりほかはない。いったい何を取得しているのか、興味を惹かれる。
「少し、皆さまの状況を見させていただきますわ。あ、もちろん悪用は致しませんので、ご安心くださいませ」
アリツェは断りを入れ、トマーシュやエマのステータスを確認しようとした。
「なぁ、アリツェ。やり方、私にも教えてはくれないか? 無駄だと思うけれど、試してみたい」
アリツェがエマの姿を注視しようとすると、ラディムが割って入ってきた。
「もちろんですわ。やり方は簡単です。確認したい人物を見つめて、ステータス表示と心の中で叫ぶだけですわ」
技能才能がない以上無理だとは思ったが、試すだけなら何の問題もない。アリツェは素直に同意した。
「自分のデータを見たいときは?」
「目を閉じて行えば大丈夫ですわ」
アリツェは実際に目を閉じて見せた。
「なるほど、では、ちょっとアリツェに対して……」
ラディムはアリツェの顔をじっと見つめた。すると――。
「え!?」
驚愕の表情を浮かべ、ラディムは叫んだ。
ラディムの問いにトマーシュは首肯した。
「で、ある時気付いたんですよ。いわゆる霊素持ちの子に近づくと、この腕輪がほんのりと熱を帯びるのを。今もほら、こうやってアリツェとラディム様に反応しています」
トマーシュはアリツェとラディムに腕輪を触らせた。確かに触れてみると、ほんのりと温かい。トマーシュの体温を受けての温かさではない。何か人工的なものを感じる。
「なるほど……。つまり、アリツェに初めて会った際、その腕輪が熱を持ったから、アリツェが霊素を持っていると判断したと」
「えぇ、そのとおりです」
腕輪をやさしく撫でながらトマーシュは答えた。
「いったい、その腕輪は何なんだろうな。ザハリアーシュの奴はどこで見つけてきたのやら」
ラディムは腕を組んで考え込んでいる。
触らせてもらった感じでは、霊素のようなものは感じられない。もともと霊素実装前からこの世界にあるアイテムだから、当たり前の話ではあるが。
この世界のベースのゲームシステムには、実装されていなかっただけで、もともと『霊素』が存在していた。いつ『霊素』が実装されても大丈夫なように、システム側があらかじめ用意していた『霊素』測定用の、何らかの特殊アイテムだろうか。効果の特殊性からも、もしかしたらいずれかのボス初回撃破ボーナスアイテムあたりの可能性もある。
ラディムも同じ考えに至ったのか、ボスだの初回撃破ボーナスだのの単語をつぶやく声が漏れてきた。この世界にもボス指定された特殊な動物がおり、初回撃破ボーナスがあるのも判明している。ラディムの話では、祖父にあたる前皇帝が母ユリナ・ギーゼブレヒトに与えた『精霊王の証』も、古代の地下遺跡探索の際に倒した守護者から入手したものだという。
「すみません、私もこの腕輪の出自については、まったく聞いていないんです」
トマーシュはすまなそうに頭を振った。
「今度会ったときに、問い詰めたいな」
「でもお兄様、会うとしたら戦場ですわ。難しいのでは?」
会って話すにしても、相手は皇帝と並ぶ今回の戦争の最大の障害と目される人物だ。現実的ではないとアリツェは思う。
「ま、ダメなら仕方がない。聞けたら僥倖ってことで」
ラディムは軽く笑い飛ばした。確かに、今あれこれと考えたところで意味はない。アリツェも腕輪の件はいったん頭の片隅に寄せておいた。
(おいアリツェ、ここいらで一回、各人のステータスを確認してみたらどうだ?)
めずらしく悠太が話に割り込んできた。最近は人格を表に出さないのでアリツェは少し心配していたが、こうして声をかけてもらえると少しほっとする。
(そうですわね、精霊術を使う機会も多かったですし、だいぶ成長したかもしれませんわ)
最近はゆっくりとステータスを確認する余裕がなかった。いい機会だ、ここでじっくりと成長具合を見てみるのもよさそうだ。双子のラディムとの比較もしてみたい。
「実は、この世界には『ステータス表示』という名の技能才能が有りますわ。皆様、ご存じでしょうか」
アリツェはさっそく話題をステータスに切り替えた。
「噂には聞いたことがあるねぇ……。院長先生はどうだい?」
エマは腕を組みながら思案気にし、隣のトマーシュに振った。
「私も、エマと同じですね。もしかしてアリツェ、その技能才能を持っているのですか?」
トマーシュの言葉に、やはりトマーシュ自身は『ステータス表示』の技能才能は持っておらず、霊素感知はあの不思議な腕輪の効果のみによって判断をしたのだと、改めて確信した。
「はい。戦闘などの際に、相手と自分との客観的な力の差がわかるので、大変便利ですわ」
アリツェはうなずいた。
「アリツェはその技能を選択していたのか。優里菜の奴は選んでいなかったみたいだから、私には無理だな」
ラディムは少し残念そうな声を漏らす。そういえば、ラディムの技能才能がなんであるか、聞いたことがなかった。技能才能はステータス表示では確認できないので、直接本人に確認するよりほかはない。いったい何を取得しているのか、興味を惹かれる。
「少し、皆さまの状況を見させていただきますわ。あ、もちろん悪用は致しませんので、ご安心くださいませ」
アリツェは断りを入れ、トマーシュやエマのステータスを確認しようとした。
「なぁ、アリツェ。やり方、私にも教えてはくれないか? 無駄だと思うけれど、試してみたい」
アリツェがエマの姿を注視しようとすると、ラディムが割って入ってきた。
「もちろんですわ。やり方は簡単です。確認したい人物を見つめて、ステータス表示と心の中で叫ぶだけですわ」
技能才能がない以上無理だとは思ったが、試すだけなら何の問題もない。アリツェは素直に同意した。
「自分のデータを見たいときは?」
「目を閉じて行えば大丈夫ですわ」
アリツェは実際に目を閉じて見せた。
「なるほど、では、ちょっとアリツェに対して……」
ラディムはアリツェの顔をじっと見つめた。すると――。
「え!?」
驚愕の表情を浮かべ、ラディムは叫んだ。
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