わたくし悪役令嬢になりますわ! ですので、お兄様は皇帝になってくださいませ!

ふみきり

文字の大きさ
172 / 272
第十五章 再会

9 お兄様の素体はどこかおかしいですわ

しおりを挟む
 驚愕の表情を浮かべながら、ラディムが固まった。

「どうしましたの?」

 アリツェは訝しみ、ラディムの顔を覗き込む。

「私にも……ステータスが見えた……」

 信じられないといった様子で、ラディムはぽつりとつぶやいた。

「おかしいですわね……。技能才能を持っていない場合には、絶対に見えないはずなのですが」

 ヴァーツラフからの説明では、確かにそういっていたはずだ。だからこそ、わざわざボーナスポイントを消費してまで『ステータス表示』の技能才能を取ったのだ。

「え? なんだって? うん、なるほどね」

 ラディムはうつむきながら、何やらぶつぶつと独り言を言っている。どうやら優里菜と会話をしているようだ。

「優里菜が言うには、なんだか私の身体がおかしいと」

 ラディムは顔を上げ、アリツェに向き直った。

「どういった意味ですの?」

 外から見た感じでは、特におかしなところは見られない。優里菜はいったいどんな違和感を抱いているのだろうか。

「優里菜がヴァーツラフの指示のもと作った素体と、違っている点がいくつか見受けられるって」

「具体的にいいますと?」

 素体設定時に確認できた項目は、ステータスの成長限界と成長速度、出自、そして技能才能だ。そのいずれかに、何らかの問題でもあったのだろうか。

「なぜだか私の体は、優里菜の設定したはずの技能才能を持っていないみたいだ」

「おかしいですわね……」

 アリツェも腕を組んで考え込んだ。アリツェの身体は、悠太の設定したとおりのステータスや技能才能を持って生まれている。ならばなぜ、ラディムの身体は優里菜の設定どおりに生まれていないのだろうか。ここでもやはり、双子になった弊害が現れている?

「本来であれば、私は四つの技能才能、『神童』、『威圧』、『魅力向上』、そして『槍術才能』を持っているはずなのだが……」

「『神童』はわたくしと同じですわね。残りは違いますが」

 アリツェの持つ技能才能は『神童』、『ステータス表示』、『読解』、『健啖』、『ショートスリーパー』の五つだ。ラディムの技能才能が四つということは、どうやら出自をAにしたのだろう。そのため、同じ両親から生まれつつも、帝国皇子として育ったようだ。

「『威圧』と『魅力向上』については、正直よくわからん。第一皇子という立場のせいで、この二つの技能才能の純粋な効果がいまいち測れないんだ」

「たしかに、判断は難しそうですわね」

 ラディムの考えにアリツェも同意した。元々第一皇子という、とりわけ高い身分を持って生まれた以上、『威圧』とは関係なしに相手は平伏するし、『魅力向上』などなくとも地位に惹かれて寄ってくるものは多いだろう。そういった意味では、この二つの技能才能は出自Aとはすこぶる相性が悪いとアリツェは思った。ただ、逆に、一般庶民が成りあがるには便利な技能才能にも思えるが。

 このあたり、完全に優里菜の選択ミスだろう。

「で、問題なのが『槍術才能』になるわけだが……。槍を修練しても、剣や体術と技能の成長速度が大して変わらない気がするんだよな。わざわざボーナスポイントを振ってまでスキルを取ったはずなのに、おかしいだろう? それに、母が槍の名手のユリナ・カタクラだったのだ。その点を踏まえても、槍の腕前の向上速度が他の武器と変わらないのは、どう考えてもおかしい」

「確かにそうですわね……」

 優里菜の弁によると、ラディムの素体の能力に疑問を感じるきっかけになったのが、この『槍術才能』だったという。幼少時から武器の修練を積まされていたラディムだが、数ある武器の中でも一番適性があったのが剣で、今も剣のみを継続して修練している。本来のラディムの才能を考えれば、ここは剣ではなく槍であるべきなのだ。

「そこに、この『ステータス表示』の技能才能だ」

 今回の『ステータス表示』が、優里菜の疑問を確信に変えたらしい。

「もしかして、わたくしのスキル構成とまったく同じになっている?」

 優里菜は選択しておらず悠太は選択している『ステータス表示』を、ラディムが持っている。このことから導き出される推論は、何らかのシステム的なバグで、ラディムの技能才能がアリツェと同一になっているのではないかというものだ。双子という事実が、その可能性を補強している。

「考えられなくはないな。アリツェはほかに何を取った?」

 ラディムは唸り声をあげ、腕を組んだ。

「わたくしは、『神童』、『ステータス表示』、『読解』、『健啖』、『ショートスリーパー』の五つですわ」

「なるほど……。であるならば、私の体はアリツェと同じ技能才能を持っていそうだ。いくつか思い当たる節がある。とくに、『読解』と『ショートスリーパー』に」

 アリツェの睨んだとおりのようだ。

「六歳くらいの頃から、大人向けの歴史書を読み漁っていたからな。間違いなく『読解』のスキル持ちだろう。それに、以前から人よりも睡眠時間が少なくて済む気がしていたんだが、『ショートスリーパー』のせいだったのか……」

 ラディムはしきりにうなずいている。

「とすると、本来の優里菜様の転生素体はどこへ行ったのでしょうか? それに、わたくしとお兄様が双子とはいえ、まったく同じ技能才能というのもおかしな話ですわよね。男女の双子は、双子と言ってもあくまで、『同時に生まれた兄弟』でしかないはずですわ」

 アリツェは悠太の記憶から引っ張り出した双子の知識を脳裏に思い描いた。

「そうだよな……。一卵性ではないはずだから、ここまで特徴が一致するのはおかしい。一卵性であるならば、性別も同一でないとおかしいよな」

 ラディムの言葉にアリツェも首肯する。

 一つの受精卵が、何らかの原因で二つに分裂してできるのが一卵性の双子だ。であるならば、性別を決める『性染色体』部分も含めて同一にならなければおかしいので、必然的に一卵性の双子は性別が同じになる。

「わたくしたちの出生の秘密は、もうすべて解き明かせたと思っておりましたが、どうやらまだ何かありそうですわね……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

偽りの呪いで追放された聖女です。辺境で薬屋を開いたら、国一番の不運な王子様に拾われ「幸運の女神」と溺愛されています

黒崎隼人
ファンタジー
「君に触れると、不幸が起きるんだ」――偽りの呪いをかけられ、聖女の座を追われた少女、ルナ。 彼女は正体を隠し、辺境のミモザ村で薬師として静かな暮らしを始める。 ようやく手に入れた穏やかな日々。 しかし、そんな彼女の前に現れたのは、「王国一の不運王子」リオネスだった。 彼が歩けば嵐が起き、彼が触れば物が壊れる。 そんな王子が、なぜか彼女の薬草店の前で派手に転倒し、大怪我を負ってしまう。 「私の呪いのせいです!」と青ざめるルナに、王子は笑った。 「いつものことだから、君のせいじゃないよ」 これは、自分を不幸だと思い込む元聖女と、天性の不運をものともしない王子の、勘違いから始まる癒やしと幸運の物語。 二人が出会う時、本当の奇跡が目を覚ます。 心温まるスローライフ・ラブファンタジー、ここに開幕。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...