精練を失敗しすぎてギルドを追放になったけれど、私だけの精霊武器を作って見返してやるんだからっ!

ふみきり

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最近散々なんですけどっ!

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 カンッ カンッ カンッ――。

 工房内に一定のリズムで響き渡るハンマーの音。

 カンッ カンッ ガキンッ!

「あぁーーーっ! もう、何でーっ。また失敗!」

 私は憎々しげに、折れた刀身をにらみつけた。

 とほほ……これで、五連敗だよ。

「うーん……、レンカちゃん、調子悪いみたいだねぇ」

 カウンターの外に立つ男がつぶやいた。

 私の工房の常連客、名前は……なんだったっけ? まぁ、名前を記憶していなくったって、顔さえ覚えておけば私には十分十分。っと、お客さんはどうでもいい、今はこれ、この結果。

「絶対おかしい! なんでこんなに連続で失敗するわけ? バグってんじゃないの!?」

 私は腹立ちまぎれに折れた刀身をハンマーで叩きつけた。甲高い嫌な金属音が響くが、怒りで私は聞いちゃいない。

「いったんログアウトして、頭を冷やしてきたらどうだい? 僕も、さすがに+7の五連続失敗は、心にくるものがあるよ……。先に落ちるね」

 男は少し気落ちした声で言うと、そのままログアウトした。

 それにしたって、私の腕なら二本に一本は成功するはずの武器の+7への精練だよ? なんで、こうも失敗するかなぁ……。せっかくお客さんも私の腕を見込んで頼みに来てくれたのに、なんだか申し訳が立たない。いっそ、この程度も満足にこなせない私の不甲斐なさを非難してくれた方が、よほど気分が落ち着くよ。

 私は立ち上がり、工房の裏手にある井戸へ向かった。今日はこれ以上作業をしたところで、すべて失敗しそうな気がする。顔を洗って出直した方がよさそうだった。






「ぷはぁ……。やっと落ち着いた」

 冷たい水で洗い、ほてった顔を冷ました。タオルで軽く水滴を拭き取ると、微風が頬をさっと撫でる。

 私は少し落ち着いたところで、ふと空を見上げた。……どんよりと曇っている。

 まったく、天気まで私の心を憂鬱にしてくれる。恨めしいったらない。

「このままみじめな姿を、お客さんにさらしっぱなしでいいの? ……いや、よくない! レンカ、ここで負けてちゃ、この街一番のコヴァーシュの名が廃るってもんだよ!」

 私は手のひらでパンッと頬を叩き、気を引き締めなおす。あきらめたらそこでなんたらかんたら、な感じの某有名漫画の台詞が脳裏をよぎった。

 私レンカ・プレツィタは、ここヴィーデの街に工房を持つコヴァーシュ――鍛冶屋だ。ここまで器用さ極振りの生産特化ステータスにしてきたおかげか、結構評判はいいと思う。自分で言っては何だけれど、街行く人に、この街で一番のコヴァーシュは誰ですかって聞けば、まぁ、たいていは私の名前を挙げてくれる程度には、人気がある。

 でも、悲しいかな、今、すっごいスランプなんだよね。以前まではサクサクと作れていた武具が、なぜだか最近、妙に失敗する。なんでだろう? 私に心当たりは全くないんだから、困っちゃう。

 ただ、私って、「考えるな、感じろ!」を地で行くタイプでもあるから、あれこれと悩んでいても仕方がないかなとも思っている。高校の友達――現実世界の――にも、「あんたは絶対感覚派。理論なんかその辺にポイっと捨てちゃえだなんて思ってるでしょ」と言われたりしている。

「こんな時は、気分転換も兼ねて、レア鉱石漁りをするしかないよね」

 気持ちの切り替えの早さが私の取りえの一つだ。さっさと鉱山街へ移動しようっと。私の最近のお気に入りで、誰にも教えていない秘密の場所があるんだよね。

 たぶん、サーバーのトップグループもまだ知らないんじゃないかと思う、未踏の鉱山ダンジョン。鉱石の露天掘りをしている時に、偶然見つけたんだ。

 当然、私以外はまだ誰も立ち入っていないから、レア鉱石が手を付けられずにまだまだたくさん残っている。コヴァーシュにとっての、天国だね。もう、あそこで寝泊まりしたいくらいだよ。
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