6 / 19
これはおもしろい思い付きだねっ!
しおりを挟む
「へぇー、これが精霊術を使ったマジックアイテム制作なんだ」
私はカレルの手元を注視する。
カレルは目を閉じ、掌を色とりどりの小石にかざした。様々な属性の霊素を放出し、精霊をまとわせている。赤には火、青には水、白には風、茶には地といった具合に、色で属性を区別しているようだ。
「アイテムに霊素を注ぎ込むイメージだね。で、オレが今考えているのは、武器や防具の制作の際にも、この考えが応用できないかってことなんだ」
カレルは霊素注入を終えた小石を一つ手に取り、ひょいっと私に向けて放り投げた。慌てて私は小石をつかみ、完成した青の小石を見つめた。
「へぇー、すごいね。ただの小石が、こんなマジックアイテムに変わるんだ」
試しにちょっと私の霊素を加えただけで、氷のように冷たくなる。これ、本格的に霊素を注いで相手に投げつければ、相手は凍り付くんじゃない?
「叩く武具に、今見せてもらった感じで霊素を注入するの?」
カレルの案だと、この小石と同じような方法で、武具にも精霊を宿すっていうことなのかな? タイミング的には、素材鋼の鍛接、鍛錬のあたり? それとも、形成段階? ちょっと試してみないとわからないかなぁ。
私の脳裏に、様々なアイデアが湧き出した。こういった新しい生産工程を工夫していくのも、生産職ならではのだいご味だよね。
「あぁ、今までは完成品の武具に、後からオレが霊素を注入していたんだけれど、制作の段階でやるとどうなるかって疑問が、ずっとあったんだ」
カレルによると、完成品に後から霊素をまとわせる通常のマジックアイテム制作と同じ工程を取った場合、武具に付く効果はあくまでインスタント、一時的なものになるらしい。大量の霊素を注げば、効果時間もかなり伸ばせるけれど、それでも保って半日程度なので、霊素効率を考えると、常時使用はなかなか厳しいっぽい。
そこで、素材の精製段階から霊素を注入していくとどうなるのか、気になったみたい。
「今までの疑問を解消するチャンスだーって、レンカの霊素を見てピンときちゃったわけなんだよね、カレル」
ユリナが笑いながら、「ほんと、精霊バカなんだから」と笑った。
カレルは苦笑いを浮かべ、頭を掻いている。どうやら『精霊バカ』は事実らしく、ユリナの言葉を否定できないようだった。
「なるほどねぇ……。うーん、私にできるかどうかわからないけれど、面白そうだね。ギルド追放で今やることもないし、試してみようかな」
私も苦笑しながら、うなずいた。
今のアンラッキー状態が落ち着き、ギルドとの関係が改善するまでは、工房はどうせ開店休業状態だ。引き受けない手はない、と思う。
それに、精霊をまとわせたマジックウェポンとかすっごく興味があるし、何より制作自体が楽しそう。昨日からのグダグダで滅入った気分も、いい具合に解消できるかもしれない。
「ってことは?」
期待に満ちた顔で、カレルは私を見つめている。
「うん、制作依頼、請け負わせてもらうよ」
私はカレルに微笑み、「今の私にやれるだけのことはやってみるよ」と言いながら手を差し出した。カレルも私の手を取り、がっしりと握手をする。これで、契約成立だ。
「レンカが自力で精霊武器を作れば、きっと追放したギルドの面々の鼻をあかせるよ!」
ユリナもにかっと笑い、握手している私とカレルの手の上に掌を添えた。
私はカレルの手元を注視する。
カレルは目を閉じ、掌を色とりどりの小石にかざした。様々な属性の霊素を放出し、精霊をまとわせている。赤には火、青には水、白には風、茶には地といった具合に、色で属性を区別しているようだ。
「アイテムに霊素を注ぎ込むイメージだね。で、オレが今考えているのは、武器や防具の制作の際にも、この考えが応用できないかってことなんだ」
カレルは霊素注入を終えた小石を一つ手に取り、ひょいっと私に向けて放り投げた。慌てて私は小石をつかみ、完成した青の小石を見つめた。
「へぇー、すごいね。ただの小石が、こんなマジックアイテムに変わるんだ」
試しにちょっと私の霊素を加えただけで、氷のように冷たくなる。これ、本格的に霊素を注いで相手に投げつければ、相手は凍り付くんじゃない?
「叩く武具に、今見せてもらった感じで霊素を注入するの?」
カレルの案だと、この小石と同じような方法で、武具にも精霊を宿すっていうことなのかな? タイミング的には、素材鋼の鍛接、鍛錬のあたり? それとも、形成段階? ちょっと試してみないとわからないかなぁ。
私の脳裏に、様々なアイデアが湧き出した。こういった新しい生産工程を工夫していくのも、生産職ならではのだいご味だよね。
「あぁ、今までは完成品の武具に、後からオレが霊素を注入していたんだけれど、制作の段階でやるとどうなるかって疑問が、ずっとあったんだ」
カレルによると、完成品に後から霊素をまとわせる通常のマジックアイテム制作と同じ工程を取った場合、武具に付く効果はあくまでインスタント、一時的なものになるらしい。大量の霊素を注げば、効果時間もかなり伸ばせるけれど、それでも保って半日程度なので、霊素効率を考えると、常時使用はなかなか厳しいっぽい。
そこで、素材の精製段階から霊素を注入していくとどうなるのか、気になったみたい。
「今までの疑問を解消するチャンスだーって、レンカの霊素を見てピンときちゃったわけなんだよね、カレル」
ユリナが笑いながら、「ほんと、精霊バカなんだから」と笑った。
カレルは苦笑いを浮かべ、頭を掻いている。どうやら『精霊バカ』は事実らしく、ユリナの言葉を否定できないようだった。
「なるほどねぇ……。うーん、私にできるかどうかわからないけれど、面白そうだね。ギルド追放で今やることもないし、試してみようかな」
私も苦笑しながら、うなずいた。
今のアンラッキー状態が落ち着き、ギルドとの関係が改善するまでは、工房はどうせ開店休業状態だ。引き受けない手はない、と思う。
それに、精霊をまとわせたマジックウェポンとかすっごく興味があるし、何より制作自体が楽しそう。昨日からのグダグダで滅入った気分も、いい具合に解消できるかもしれない。
「ってことは?」
期待に満ちた顔で、カレルは私を見つめている。
「うん、制作依頼、請け負わせてもらうよ」
私はカレルに微笑み、「今の私にやれるだけのことはやってみるよ」と言いながら手を差し出した。カレルも私の手を取り、がっしりと握手をする。これで、契約成立だ。
「レンカが自力で精霊武器を作れば、きっと追放したギルドの面々の鼻をあかせるよ!」
ユリナもにかっと笑い、握手している私とカレルの手の上に掌を添えた。
0
あなたにおすすめの小説
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
婚約破棄で追放された悪役令嬢、前世の便利屋スキルで辺境開拓はじめました~王太子が後悔してももう遅い。私は私のやり方で幸せになります~
黒崎隼人
ファンタジー
名門公爵令嬢クラリスは、王太子の身勝手な断罪により“悪役令嬢”の濡れ衣を着せられ、すべてを失い辺境へ追放された。
――だが、彼女は絶望しなかった。
なぜなら彼女には、前世で「何でも屋」として培った万能スキルと不屈の心があったから!
「王妃にはなれなかったけど、便利屋にはなれるわ」
これは、一人の追放令嬢が、その手腕ひとつで人々の信頼を勝ち取り、仲間と出会い、やがて国さえも動かしていく、痛快で心温まる逆転お仕事ファンタジー。
さあ、便利屋クラリスの最初の依頼は、一体なんだろうか?
王宮から捨てられた元聖騎士の私、隣国の黒狼王に拾われて過保護にされまくる
タマ マコト
ファンタジー
追放の夜、庶民出身の唯一の女性聖騎士レイアは、王太子派の陰謀によって冤罪を着せられ、王宮から無慈悲に捨てられる。
雨の中をさまよう彼女は、生きる理由すら見失ったまま橋の下で崩れ落ちるが、そこで彼女を拾ったのは隣国ザルヴェルの“黒狼王”レオンだった。
冷徹と噂される獣人の王は、傷ついたレイアを静かに抱き上げ、「お前はもう一人じゃない」と連れ帰る。
こうして、捨てられた聖騎士と黒狼の王の出会いが、運命を揺さぶる物語の幕を開ける。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
追放された宮廷薬師、科学の力で不毛の地を救い、聡明な第二王子に溺愛される
希羽
ファンタジー
王国の土地が「灰色枯病」に蝕まれる中、若干25歳で宮廷薬師長に就任したばかりの天才リンは、その原因が「神の祟り」ではなく「土壌疲弊」であるという科学的真実を突き止める。しかし、錬金術による安易な「奇跡」にすがりたい国王と、彼女を妬む者たちの陰謀によって、リンは国を侮辱した反逆者の濡れ衣を着せられ、最も不毛な土地「灰の地」へ追放されてしまう。
すべてを奪われた彼女に残されたのは、膨大な科学知識だけだった。絶望の地で、リンは化学、物理学、植物学を駆使して生存基盤を確立し、やがて同じく見捨てられた者たちと共に、豊かな共同体「聖域」をゼロから築き上げていく。
その様子を影から見守り、心を痛めていたのは、第二王子アルジェント。宮廷で唯一リンの価値を理解しながらも、彼女の追放を止められなかった無力な王子だった。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる