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私ってちょっと迂闊過ぎない?
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「ふふふ、これはすごい! 余ったら私用の武器も何か作ってみようっと」
切り出した木材の輝きに、私の心は踊りっぱなしだった。うーん、早く工房に帰って加工したい! 生産職としての性がムクムクっと沸き起こってきた。
とはいうものの、まだまだ素材は足りないので、誘惑と戦いつつ私は引き続き切り出しの作業に入った。
一心不乱に斧を叩きつけ、持ち運びやすい大きさの丸太に加工して、アイテムインベントリに突っ込む。
気が付いたら陽がずいぶんと傾き、森の中は大分薄暗くなっていた。そろそろ帰らないとまずいかな。
「って、あれ? カレルとユリナはどこ? おーいっ!」
二人と合流しようと思ったんだけれど、周囲に人の気配がしない。もしかしてマズった? はぐれたっぽいんだけれど……。
背に嫌な汗が流れた。
と、その時、背後の草むらから物音がした。カレルたちかと思って振り返って見ると、そこには巨大モンスター『人食い熊』がいた。
「げげっ! マズいマズいマズい!」
どう見たって、私にかなう相手じゃない。逃げるしかないんだけれど、こんな森の中じゃ逃げきれないかもしれない。もしかして、ピンチ?
「ひえーっ、お助けー」
かといって、立ちつくしているわけにもいかないので、私は全力で逃げた。
だが、案の定追いつかれ、絶体絶命のピンチ。
いやーっ、私なんか食べてもおいしくないよー。見逃してー!
私は涙目になった。
「おーい、レンカー! どこだー? って、ここにいたのか。おっと、これはまずいな」
私がガクガクと震えていると、そこに救世主が現れた。カレルだ。
助かったー。これで何とか生き延びられるよー。
カレルは素早くペスと子猫の使い魔ミアに指示をだした。精霊術が行使されて身体を大型のトラに変化させたミアが、熊の正面に立って攻撃を受け止めた。その隙に、爪に炎を纏わせたペスが背後から熊の背を引き裂く。
肉の焼ける嫌なにおいが充満するとともに、熊の絶叫が響き渡った。
私は地面にへたり込みながら、目の前の戦いの様子を茫然と見遣った。
「うわー……、ほんとすごいや、精霊術」
思わず口からこぼれた。
「レンカ、無事か?」
いつの間にか私の傍にやってきたカレルが、手を差し伸べた。私は差し出された手をつかみ、立ち上がらせてもらった。ちょっぴり、気恥ずかしいな。
「あ、うん……。はぐれちゃってごめんね」
あーあ、なんだかみっともない姿を見せちゃったよ……。
私はバツが悪く感じ、頭を掻いた。
「いや、無事ならそれでいい。こっちも目を離したのが悪い」
カレルは申し訳なさそうな表情を浮かべている。
そんな顔をされると、余計に心に突き刺さるよ。悪いのは絶対に私のほうなんだから。
「今度はきっちりと護るから。ごめんな、レンカ」
カレルは私の頭をポンポンと叩いた。
ちょっと、私そんなことされるような子供じゃないんですけど!と言いたかったけれども、なぜだか抗えない気持ちよさも感じて、結局は何も言い返せなかった。少し、悔しい……。
「さて、ここでの採取はこんなものかな?」
カレルの言葉に、私は首肯した。失敗の分を考慮に入れても、十分な数は確保できたと思う。
「いやー、大漁だったね、カレル、レンカ」
ユリナはほくほく顔で、目の前に置かれた七色の丸太を見つめていた。
こうしてみると、本当に幻想的だ。周囲が薄暗くなってきている分、余計に『精霊樹の古木』が放つ光が強調されている。
「これだけあれば、多少の失敗はしても大丈夫かな。私、頑張るよ」
情けない姿を見せちゃった分、製造できっちりと私のすごさを見せつけないとね。やればできる女だってところ、見せてやるんだから。
切り出した木材の輝きに、私の心は踊りっぱなしだった。うーん、早く工房に帰って加工したい! 生産職としての性がムクムクっと沸き起こってきた。
とはいうものの、まだまだ素材は足りないので、誘惑と戦いつつ私は引き続き切り出しの作業に入った。
一心不乱に斧を叩きつけ、持ち運びやすい大きさの丸太に加工して、アイテムインベントリに突っ込む。
気が付いたら陽がずいぶんと傾き、森の中は大分薄暗くなっていた。そろそろ帰らないとまずいかな。
「って、あれ? カレルとユリナはどこ? おーいっ!」
二人と合流しようと思ったんだけれど、周囲に人の気配がしない。もしかしてマズった? はぐれたっぽいんだけれど……。
背に嫌な汗が流れた。
と、その時、背後の草むらから物音がした。カレルたちかと思って振り返って見ると、そこには巨大モンスター『人食い熊』がいた。
「げげっ! マズいマズいマズい!」
どう見たって、私にかなう相手じゃない。逃げるしかないんだけれど、こんな森の中じゃ逃げきれないかもしれない。もしかして、ピンチ?
「ひえーっ、お助けー」
かといって、立ちつくしているわけにもいかないので、私は全力で逃げた。
だが、案の定追いつかれ、絶体絶命のピンチ。
いやーっ、私なんか食べてもおいしくないよー。見逃してー!
私は涙目になった。
「おーい、レンカー! どこだー? って、ここにいたのか。おっと、これはまずいな」
私がガクガクと震えていると、そこに救世主が現れた。カレルだ。
助かったー。これで何とか生き延びられるよー。
カレルは素早くペスと子猫の使い魔ミアに指示をだした。精霊術が行使されて身体を大型のトラに変化させたミアが、熊の正面に立って攻撃を受け止めた。その隙に、爪に炎を纏わせたペスが背後から熊の背を引き裂く。
肉の焼ける嫌なにおいが充満するとともに、熊の絶叫が響き渡った。
私は地面にへたり込みながら、目の前の戦いの様子を茫然と見遣った。
「うわー……、ほんとすごいや、精霊術」
思わず口からこぼれた。
「レンカ、無事か?」
いつの間にか私の傍にやってきたカレルが、手を差し伸べた。私は差し出された手をつかみ、立ち上がらせてもらった。ちょっぴり、気恥ずかしいな。
「あ、うん……。はぐれちゃってごめんね」
あーあ、なんだかみっともない姿を見せちゃったよ……。
私はバツが悪く感じ、頭を掻いた。
「いや、無事ならそれでいい。こっちも目を離したのが悪い」
カレルは申し訳なさそうな表情を浮かべている。
そんな顔をされると、余計に心に突き刺さるよ。悪いのは絶対に私のほうなんだから。
「今度はきっちりと護るから。ごめんな、レンカ」
カレルは私の頭をポンポンと叩いた。
ちょっと、私そんなことされるような子供じゃないんですけど!と言いたかったけれども、なぜだか抗えない気持ちよさも感じて、結局は何も言い返せなかった。少し、悔しい……。
「さて、ここでの採取はこんなものかな?」
カレルの言葉に、私は首肯した。失敗の分を考慮に入れても、十分な数は確保できたと思う。
「いやー、大漁だったね、カレル、レンカ」
ユリナはほくほく顔で、目の前に置かれた七色の丸太を見つめていた。
こうしてみると、本当に幻想的だ。周囲が薄暗くなってきている分、余計に『精霊樹の古木』が放つ光が強調されている。
「これだけあれば、多少の失敗はしても大丈夫かな。私、頑張るよ」
情けない姿を見せちゃった分、製造できっちりと私のすごさを見せつけないとね。やればできる女だってところ、見せてやるんだから。
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