精練を失敗しすぎてギルドを追放になったけれど、私だけの精霊武器を作って見返してやるんだからっ!

ふみきり

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霊素の扱いって、ちょっと難しくない?

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「これで一通りそろったかな?」

 工房の机の上に置かれた素材を、私は一つ一つ確認する。手持ちの製造用素材リストと照合しながら、抜けがないか、数は足りているかをきちんと確かめておかないとね。製造工程に入ってから、あれがない、これがないって始まっちゃったら、制作に集中できないもん。そんな事態に陥るような奴は、まだまだ二流だね。

 カレルとユリナの助言のおかげで、いくつかの素材はワンランク上のものが用意できたし、想定よりも高品質の武器が作れそうで、私はなんだかワクワクしてきた。ついつい鼻息も荒くなるってものだよ。

「えっと、カレルのロッドから先に制作に入るけど、いいかな?」

 ロッドは攻撃力を求めていないので、新しい制作工程を試しながら作業するのに向いていると私は判断した。刃の切れ味などに気を取られず、素材鋼へ霊素を注入する作業に集中できそうだし。慣れない作業をするときは、あちこち注意が分散しないようになるべく工程をシンプルにするのが、成功のコツだと思う。

「ああ、よろしく頼むよ」

 カレルはうなずき、制作のサンプルとして、今使っているロッドを私に差し出した。私は受け取ると、さっそく工房裏の作業場へと移動した。

「じゃあ、とりあえず試作をしてみるので、二人とも何か気づいた点があったら指摘をよろしくー」

 カレルとユリナは首肯し、私の手元に視線を向けた。

「さぁてっと、始めますかね」

 私は袖をまくり、気合を入れる。

「とりあえず、私が今考えている霊素注入タイミングは二パターンあって、一つは素材鋼の鍛接、鍛錬の時。もう一つは、形成段階かな」

 鍛接、鍛錬段階での、別種の素材鋼を接合し鍛える瞬間なんかは、まさしく霊素を注ぐのにいいタイミングだと思う。異なる金属がくっつくと同時に、一緒に霊素も貼り付けるってイメージかな。

 形成段階では、素材鋼から作り上げた金属を叩いて、実際に武器の形に形成するけれど、ここであらかじめ熱した金属に霊素を纏わせて、そこをハンマーで叩くことで金属に霊素をなじませようかと考えている。

 私はカレルとユリナに自分の考えを伝えた。二人もどうやら納得してくれたようで、私は作業に入った。

 トンテンカンッ トンテンカンッ

 素材鋼の鍛接作業に入り、作業場には私のハンマーの音が鳴り響く。振り下ろすハンマーを通じて、少しずつ霊素を注ぎ込んだ。

 カレルと相談のうえ、ロッドに纏わせる属性は光に決めた。うまく完成すれば、手に持って霊素を注入することで、自動回復機能を発揮できるマジックウェポンになるはず。

 ただ、私は精霊使いじゃないから、正直、霊素の扱いはまだまだ苦手なんだよね。霊素の注入作業も、ごく簡単なマジックアイテムを発動させるときに、少しだけやったことがあるって程度だし。今後、精霊武具の作成に進むなら、霊素の扱いも慣らしていかないとだめかもしれない。

 トンテンカンッ カンッ カンッ ボキンッ……

「あっ……」

 くっそー、素材鋼が折れちゃったよ。失敗だ。

「ごめん、失敗した。たぶん今の手ごたえだと、霊素注入をしていなければ鍛接自体は成功してた感じなんだけれど。カレルたちからは、霊素の注入のタイミングや量はどう見えた? 適切だったと思う?」

 私なりに最適と思われる形で霊素を注いだつもりだ。なので、私自身にはすぐにどうにかできる改善策が思い浮かばない。まずは外部の意見を聞かなくちゃね。

「うーん、そうだなー。オレから見てもタイミングは問題ないように見えた。ただ、注入の量がちょっと……。ユリナはどう見る?」

「私もカレルと同じ。タイミングはいいと思う。やっぱり、量が問題じゃないかと思うよ。あー、量自体っていうよりも、注いでいる霊素の量が不安定な点が気になったって感じかな」

 私は全く気付いていなかった。どうやら注いでいた霊素の量に大分ばらつきが出ており、そのせいで失敗したのではないかとの二人の見解だった。

「ハンマーを振り下ろすタイミングで霊素を放出しているよな? 見ている限り、振り下ろすごとの注入霊素の量がバラバラなんだ。それで、素材鋼が霊素を受け止め切れていないって印象だな」

 となると、結構深刻な問題かもしれない。結局のところ、私自身の霊素の扱い方が未熟なせいで、一定量の霊素放出ができていない。これを改善するのは、一朝一夕ではいかない気がする。

「あー、まいったなぁ。じゃあ今の私には手に負えないかもしれない。不本意だけれど……」

 私は正直に吐露した。高価なレア素材を使っているので、成功の望みが薄いのに無駄打ちをするわけにもいかないし。

「そうだよなー。精霊使いでもなくちゃ、霊素の一定量放出なんて芸当、練習しているわけないよな」

「どうするカレル? 今回はあきらめる?」

 腕を組んで考え込むカレルの顔を、ユリナは覗き込んだ。

 しばし流れる沈黙。カレルは押し黙って考えを巡らせているようだった。
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