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1章
朝焼け
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青年と娘の語らいを背に朝日は昇っていく。
娘「朝が来たわね。」
朝日が娘の横顔に静かに影を作る
青年「そうだな。朝だ。けど、少しだけ」
青年は手をあげて朝日を掴むような仕草をし寝転ぶ。
娘「少し?」
青年「朝が嫌い、だ。叩き起こされるだけで吐き気がする。」
娘「私は夜が嫌いよ。あの足音が聞こえるから。」
震える娘の肩に青年は躊躇いがちに近寄り頭を撫でる。その手つきはぎこちない。
青年「あいつが来ても俺がどうにかする。どうにか出来るようになるよ。お前が静かだと調子が狂うからな。あそこから逃げ出せたんだから。」
娘「分かった、ねえ…」
青年に頭を預けて目を閉じ娘は言う。
娘「名前をつけてくれない。新しい私の名前」
青年「名前?本当の名前を使えばいいじゃ無いか?」
娘「いいえ、本当は名前が分からないの。言ったでしょう?あそこに居る前の事は殆ど覚えて無くて。だから付けて欲しい…」
青年「……マリアでいいか」
青年は少し恥ずかしそうに小声で呟く様に告げる。
娘「ありがとう」
青年「俺も、…やっぱり良い」
青年は少し残念そうな顔をした
娘「リオル。私の光で希望よ。」
朝焼けを背負う微笑みに青年の頬が朝焼けと同じ色に染まった。
青年「あ~~、いつまでもここにいたら身体が冷えるからな。だから町でも村でもその探しに行くぞ」
見え透いた照れ隠しで娘の先を歩く。
娘「リオル、待って!置いて行かないで!」
娘は青年に追い付いて当たり前の様に隣を歩く。
ずっとそれが当たり前だったかの様に。
青年は娘の光となって生きていた。
彼女が真を知る時までは。
――――
〈主と男〉
娘と青年がいなくなった屋敷で主人は苛立たしげに書斎で喚いていた。
「この事が知れたらどうなるか分かっているのか!
災いが逃げたんだぞ!生きている事さえ許されない様な物が!
まあ良い!さっさと探すように指示を出せ!どんな状態でもいい!
死んでいなければな!
18か20になるまでは生かさねばならんからな!
おいお前!ショールスを起こしておけ!ムシャクシャしてたまらん!」
言われて部屋を出て行った使用人の女が鬼の形相で戻って来る。
「旦那様!ショールス様が部屋に居られません!」
「何を言っている!部屋には鍵が掛けてある筈だろう!」
「それが鍵が開いていて部屋はもぬけの殻でございます。」
「もう良い!貴様らは引っ込め!」
使用人全員を部屋から出すと屋敷の主人はまた悪態を付き出す。
終いには椅子に八つ当たりして蹴飛ばし睨みつけながらその肩は激しく上下に揺れていた。
その部屋の前で男が一人何をするでも無くただ立っていた。
瞳の光を全て闇に捧げた様な感情の読めない男。
彼の名は『ミセフォーレ』
_________
「街へ」
はじめて光を浴び立つ二人はロメールと言う街に辿り着く。そこで待っているのは優しさか罵声か
娘「朝が来たわね。」
朝日が娘の横顔に静かに影を作る
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青年は手をあげて朝日を掴むような仕草をし寝転ぶ。
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震える娘の肩に青年は躊躇いがちに近寄り頭を撫でる。その手つきはぎこちない。
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娘「分かった、ねえ…」
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青年「……マリアでいいか」
青年は少し恥ずかしそうに小声で呟く様に告げる。
娘「ありがとう」
青年「俺も、…やっぱり良い」
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娘「リオル。私の光で希望よ。」
朝焼けを背負う微笑みに青年の頬が朝焼けと同じ色に染まった。
青年「あ~~、いつまでもここにいたら身体が冷えるからな。だから町でも村でもその探しに行くぞ」
見え透いた照れ隠しで娘の先を歩く。
娘「リオル、待って!置いて行かないで!」
娘は青年に追い付いて当たり前の様に隣を歩く。
ずっとそれが当たり前だったかの様に。
青年は娘の光となって生きていた。
彼女が真を知る時までは。
――――
〈主と男〉
娘と青年がいなくなった屋敷で主人は苛立たしげに書斎で喚いていた。
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まあ良い!さっさと探すように指示を出せ!どんな状態でもいい!
死んでいなければな!
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おいお前!ショールスを起こしておけ!ムシャクシャしてたまらん!」
言われて部屋を出て行った使用人の女が鬼の形相で戻って来る。
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「何を言っている!部屋には鍵が掛けてある筈だろう!」
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彼の名は『ミセフォーレ』
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