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第1章 無能領主のリサイクルガチャ
第5話 1週間が経過
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ガルフは領地の経営をほぼ放棄し、無限ダンジョン攻略に没頭していた。
一方、地上ではリンデンバルク執事長が指揮を執り、資材集めや領地の再建を着々と進めてくれていた。
農作業はミヤモトが担当し、鉱山採掘はアキレスドン、森林伐採はパトロシア。ウィンダムは建築を一手に引き受け、アーザーはガルフとともにダンジョンで戦う。どの者もが伝説級の実力者であり、領地の再建はまるで奇跡のようなスピードで進んでいた。
そんな中、ガルフが唯一担っていた仕事は、ひたすらモンスターを倒し、その素材をアイテムボックスに詰め込むこと。
――それが、彼にとっての「領地運営」だった。
彼の強さの秘密を尋ねられると、ガルフは簡潔に答えた。
「俺は――考えないんだよ」
その言葉に、アーザーが驚きを込めて聞き返す。
「……それは、どういう意味で?」
「人は敵を前にすると、“殺していいのか”って考える。でも俺は考えない。匂い、色、本能で敵か味方かを判断して……それだけだ」
「さすがはガルフ様……」ゼーニャが微笑む。
「いや、それはもはや……達人というより……狂気の領域だよ」アーザーは思わずため息をつく。
「アーザーさん。君は人間王として生きてきた。だが、これからは――狂人王として生きてみないか?」
「……冗談だろう?」
「うん、もちろん冗談。でも、俺の戦い方も、君の戦い方も、学び合えばもっと強くなれると思う」
アーザーは微笑みを浮かべると、魔法陣を展開した。
「【スキル:エクスガリバー】来い」
地面が輝き、そこから伝説の剣が姿を現す。彼の手に収まると、自然と威厳を感じさせた。
「これが僕の相棒。けれど、この剣は人を殺すと弱くなる。だから、なるべく殺さずに戦うんだ」
「それが人間王の誇りってわけだな」
「そうさ。そして、ガルフ様は……頭が悪いのではない。信念があるだけだ」
アーザーのその言葉に、ガルフもまた笑って頷いた。
「ありがとよ。……さて、帰るとするか」
◆
一週間ぶりに地上へ戻った一行の目に飛び込んできたのは、まったく様変わりした領地だった。
舗装された石畳の道。整然と並ぶ建物の数々。
三階建ての冒険者ギルド。酒場、宿屋、武器屋、防具屋、道具屋、素材屋、風呂、倉庫、住宅群――かつて荒れ果てていた領地は、もはや都市のような姿を見せていた。
ガルフが屋敷に戻ると、執務室の机でリンデンバルクが突っ伏して眠っていた。
「……ありがとうな」
彼の背にそっと毛布を掛けるガルフ。
そこへ、ゼーニャが駆け込んできた。
「た、大変です! 森の方に……巨大な大樹が現れました!」
「大樹……? 見に行こう」
「アーザー様には……」
「自由行動でお願いしよう」
森の奥へ駆ける二人。そこには、雲を突き抜けるほどの巨大な樹木――まさしく神話の存在、《世界樹》がそびえ立っていた。
草影色の葉に朝露が降り注ぎ、それが虹色の光となって大地を包み込む。周囲の木々は息を吹き返し、森全体が鼓動しているかのようだった。
「これは……間違いありません。世界樹です」
パトロシアが、そっと現れる。
「この葉は、万病を癒し、大怪我すら治す神樹の恵み。ですが、採りすぎると世界樹の怒りを買います。一日五枚が限度です」
「それだけでもありがたいよ。……でも、君も少し休みなさい。目にクマができてる」
「ふふ、魔力を注ぎ切ってしまって……少しだけ、眠らせていただきます」
彼女は世界樹の根元に体を預け、静かに目を閉じた。
◆
突如、空気を裂くような声が森に響く。
「た、大変だああああああ!」
城の方角から、リンデンバルクが全速力で駆けてきた。
「領地の門前に、ジンネ・ギャロフ領主が現れました! 世界樹の所有権を渡せと! 拒めば侵略すると脅しています!」
「予想通りだな。だが……」
一瞬、ガルフは空を仰ぎ、そして笑みを浮かべた。
「こっちには戦う術がある――そうだった、伝説の五人がいるんだったな」
「アーザー様とミヤモト様を呼びに参ります!」
リンデンバルクが再び駆けていくのを見送ったガルフは、ゆっくりと城門へと向かう。
朽ちかけたその門を見上げながら、ガルフは静かに呟く。
「……戦争か。悪くないな」
一方、地上ではリンデンバルク執事長が指揮を執り、資材集めや領地の再建を着々と進めてくれていた。
農作業はミヤモトが担当し、鉱山採掘はアキレスドン、森林伐採はパトロシア。ウィンダムは建築を一手に引き受け、アーザーはガルフとともにダンジョンで戦う。どの者もが伝説級の実力者であり、領地の再建はまるで奇跡のようなスピードで進んでいた。
そんな中、ガルフが唯一担っていた仕事は、ひたすらモンスターを倒し、その素材をアイテムボックスに詰め込むこと。
――それが、彼にとっての「領地運営」だった。
彼の強さの秘密を尋ねられると、ガルフは簡潔に答えた。
「俺は――考えないんだよ」
その言葉に、アーザーが驚きを込めて聞き返す。
「……それは、どういう意味で?」
「人は敵を前にすると、“殺していいのか”って考える。でも俺は考えない。匂い、色、本能で敵か味方かを判断して……それだけだ」
「さすがはガルフ様……」ゼーニャが微笑む。
「いや、それはもはや……達人というより……狂気の領域だよ」アーザーは思わずため息をつく。
「アーザーさん。君は人間王として生きてきた。だが、これからは――狂人王として生きてみないか?」
「……冗談だろう?」
「うん、もちろん冗談。でも、俺の戦い方も、君の戦い方も、学び合えばもっと強くなれると思う」
アーザーは微笑みを浮かべると、魔法陣を展開した。
「【スキル:エクスガリバー】来い」
地面が輝き、そこから伝説の剣が姿を現す。彼の手に収まると、自然と威厳を感じさせた。
「これが僕の相棒。けれど、この剣は人を殺すと弱くなる。だから、なるべく殺さずに戦うんだ」
「それが人間王の誇りってわけだな」
「そうさ。そして、ガルフ様は……頭が悪いのではない。信念があるだけだ」
アーザーのその言葉に、ガルフもまた笑って頷いた。
「ありがとよ。……さて、帰るとするか」
◆
一週間ぶりに地上へ戻った一行の目に飛び込んできたのは、まったく様変わりした領地だった。
舗装された石畳の道。整然と並ぶ建物の数々。
三階建ての冒険者ギルド。酒場、宿屋、武器屋、防具屋、道具屋、素材屋、風呂、倉庫、住宅群――かつて荒れ果てていた領地は、もはや都市のような姿を見せていた。
ガルフが屋敷に戻ると、執務室の机でリンデンバルクが突っ伏して眠っていた。
「……ありがとうな」
彼の背にそっと毛布を掛けるガルフ。
そこへ、ゼーニャが駆け込んできた。
「た、大変です! 森の方に……巨大な大樹が現れました!」
「大樹……? 見に行こう」
「アーザー様には……」
「自由行動でお願いしよう」
森の奥へ駆ける二人。そこには、雲を突き抜けるほどの巨大な樹木――まさしく神話の存在、《世界樹》がそびえ立っていた。
草影色の葉に朝露が降り注ぎ、それが虹色の光となって大地を包み込む。周囲の木々は息を吹き返し、森全体が鼓動しているかのようだった。
「これは……間違いありません。世界樹です」
パトロシアが、そっと現れる。
「この葉は、万病を癒し、大怪我すら治す神樹の恵み。ですが、採りすぎると世界樹の怒りを買います。一日五枚が限度です」
「それだけでもありがたいよ。……でも、君も少し休みなさい。目にクマができてる」
「ふふ、魔力を注ぎ切ってしまって……少しだけ、眠らせていただきます」
彼女は世界樹の根元に体を預け、静かに目を閉じた。
◆
突如、空気を裂くような声が森に響く。
「た、大変だああああああ!」
城の方角から、リンデンバルクが全速力で駆けてきた。
「領地の門前に、ジンネ・ギャロフ領主が現れました! 世界樹の所有権を渡せと! 拒めば侵略すると脅しています!」
「予想通りだな。だが……」
一瞬、ガルフは空を仰ぎ、そして笑みを浮かべた。
「こっちには戦う術がある――そうだった、伝説の五人がいるんだったな」
「アーザー様とミヤモト様を呼びに参ります!」
リンデンバルクが再び駆けていくのを見送ったガルフは、ゆっくりと城門へと向かう。
朽ちかけたその門を見上げながら、ガルフは静かに呟く。
「……戦争か。悪くないな」
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