4 / 46
第1章 無能領主のリサイクルガチャ
第4話 ダンジョン攻略の豹変領主
しおりを挟む
二本並ぶ巨大な塔――そのうちの一本。
“無限ダンジョン”と呼ばれる謎の塔に、ガルフ、ゼーニャ、そしてアーザーは挑むことになった。
入口は黒鉄色の不気味な扉に覆われていた。
石造りの台座が鎮座し、仄かに光の粒子を放っている。
「……いくぞ」
三人は無言で頷き合い、ガルフがそっと台座に触れた。
瞬間、白い閃光が視界を覆い尽くす。
次に目を開いたとき、三人は――別世界にいた。
◇ ◇ ◇
「これは……」
言葉を失うほどの風景が広がっていた。
どこまでも続く草原、天を突く山岳、深緑の大森林、果てしない蒼い海。
それらが同時に存在する、不自然なほどに広大で、多様性に満ちた世界。
空には無数の星々。赤、青、金、紫と、現実では見たこともない輝きが広がり、何本もの巨大な木が天を突き、星を貫いていた。
「これは……いったいどういう世界なんだ……?」
「たしかに、これは“無限”と呼ばれるのも納得できますわね」
「こりゃ、いくつの国を支配した俺でも驚きを隠せねぇな」
目の前では、空中を無数のドラゴンが飛び交い、地上ではマンモス大の魔獣たちが群れている。
この世界すべてが“ダンジョン”だというのか。
そこへ、頭の中に神のような機械音声が響いた。
【無限ダンジョンは、覇王によって統治されている。攻略の条件はただ一つ、覇王の討伐である】
【その配下として、龍王、虎王、朱雀王、玄武王が存在し、いずれも神に匹敵する力を持つ】
「……神に匹敵って、どうしろってんだ」
「最初から覇王と戦うなんて無謀すぎます」
「なら、まずは周辺の魔獣狩りから始めましょう」
そう言って、ガルフはゆっくりと剣を引き抜いた。
その瞬間――空気が変わった。
◇ ◇ ◇
アーザーは目を見開いた。
(何だ……今の気配の変化は……?)
さっきまで、どこかおどおどしていたガルフが、まるで別人のように変貌していた。
眉間に皺を寄せ、口元には冷ややかな笑み。
そして、ガルフに向かって押し寄せるゴブリンの大群――。
ガルフは歩く。
ただ、それだけだ。
剣を振ったようには見えない。だが、ゴブリンがすれ違いざまに斬り伏せられていく。
棍棒を振り上げる者、飛びかかってくる者、囲む者。
だが全て――両断されていく。
気づけば、地面には五十体以上の死体が転がっていた。
「……あ、ありえない……」
アーザーは思わず呟く。
ガルフが動いたように見えないのに、敵が消えている。
まるで見えない刃。否、それ以上の“殺意の奔流”が支配していた。
そして――次はミノタウロスだ。
それも十体。どれも城門ほどの巨躯。並の戦士なら、気を失うレベルだ。
「ひゃっはああああああああああああ!」
――咆哮。
大地が震え、空気が震え、魔獣が怯む。
ガルフが跳躍する。
空中で身体をひねり、ミノタウロスの頭上に着地すると、その目を剣で貫き、頭蓋を真っ二つに裂いた。
一体が崩れ落ちる。
だが、ガルフはその背中を踏み台に、空へ跳ね、次のミノタウロスの首を飛ばす。
連続。連続。連続。――まるで舞い踊る死神。
「うらうらうらうらあああああああ!」
その叫び声は、狂気と歓喜が混じったような異質なものだった。
剣を握るたびに、ガルフの人格が変わるのだ。
気づけば、ミノタウロスの巨体がドサ、ドサと地に沈んでいく。
血飛沫一つ浴びず、ガルフは軽く服を払いながら言った。
「ちょっと頑張りすぎちゃったね」
「……いや、いやいや、おかしいだろ、あれ」
アーザーは震えた。恐怖ではない。
感動だ――圧倒的な“狂気”を前にした、畏怖にも似た感動。
「確かに、僕は伝説の王と呼ばれた。巨人を素手で仕留めたこともある。だが、あれは……楽しんでいる。殺すことを」
「だって、楽しいでしょ?」
そう言って笑うガルフ。
そこにあったのは、戦士ではない。“破壊者”そのものだった。
アーザーは確信した。この男は、世界の覇者になる。いや、なれる。
伝説の王は片膝をつき、ガルフの手を取る。
「このアーザー、あなたをこの世界の覇者にして差し上げましょう」
「そんな堅苦しいことはいいよ。ただ、俺が殺しまくるのを手伝って欲しい。頭が悪いから、作戦とか無理なんだ。でも、戦うのは好きだよ。楽しいから」
「……ああ、これが“狂気”……これが……真の強者……!」
アーザーの目には、まるで神を見たかのような光が宿っていた。
“無限ダンジョン”と呼ばれる謎の塔に、ガルフ、ゼーニャ、そしてアーザーは挑むことになった。
入口は黒鉄色の不気味な扉に覆われていた。
石造りの台座が鎮座し、仄かに光の粒子を放っている。
「……いくぞ」
三人は無言で頷き合い、ガルフがそっと台座に触れた。
瞬間、白い閃光が視界を覆い尽くす。
次に目を開いたとき、三人は――別世界にいた。
◇ ◇ ◇
「これは……」
言葉を失うほどの風景が広がっていた。
どこまでも続く草原、天を突く山岳、深緑の大森林、果てしない蒼い海。
それらが同時に存在する、不自然なほどに広大で、多様性に満ちた世界。
空には無数の星々。赤、青、金、紫と、現実では見たこともない輝きが広がり、何本もの巨大な木が天を突き、星を貫いていた。
「これは……いったいどういう世界なんだ……?」
「たしかに、これは“無限”と呼ばれるのも納得できますわね」
「こりゃ、いくつの国を支配した俺でも驚きを隠せねぇな」
目の前では、空中を無数のドラゴンが飛び交い、地上ではマンモス大の魔獣たちが群れている。
この世界すべてが“ダンジョン”だというのか。
そこへ、頭の中に神のような機械音声が響いた。
【無限ダンジョンは、覇王によって統治されている。攻略の条件はただ一つ、覇王の討伐である】
【その配下として、龍王、虎王、朱雀王、玄武王が存在し、いずれも神に匹敵する力を持つ】
「……神に匹敵って、どうしろってんだ」
「最初から覇王と戦うなんて無謀すぎます」
「なら、まずは周辺の魔獣狩りから始めましょう」
そう言って、ガルフはゆっくりと剣を引き抜いた。
その瞬間――空気が変わった。
◇ ◇ ◇
アーザーは目を見開いた。
(何だ……今の気配の変化は……?)
さっきまで、どこかおどおどしていたガルフが、まるで別人のように変貌していた。
眉間に皺を寄せ、口元には冷ややかな笑み。
そして、ガルフに向かって押し寄せるゴブリンの大群――。
ガルフは歩く。
ただ、それだけだ。
剣を振ったようには見えない。だが、ゴブリンがすれ違いざまに斬り伏せられていく。
棍棒を振り上げる者、飛びかかってくる者、囲む者。
だが全て――両断されていく。
気づけば、地面には五十体以上の死体が転がっていた。
「……あ、ありえない……」
アーザーは思わず呟く。
ガルフが動いたように見えないのに、敵が消えている。
まるで見えない刃。否、それ以上の“殺意の奔流”が支配していた。
そして――次はミノタウロスだ。
それも十体。どれも城門ほどの巨躯。並の戦士なら、気を失うレベルだ。
「ひゃっはああああああああああああ!」
――咆哮。
大地が震え、空気が震え、魔獣が怯む。
ガルフが跳躍する。
空中で身体をひねり、ミノタウロスの頭上に着地すると、その目を剣で貫き、頭蓋を真っ二つに裂いた。
一体が崩れ落ちる。
だが、ガルフはその背中を踏み台に、空へ跳ね、次のミノタウロスの首を飛ばす。
連続。連続。連続。――まるで舞い踊る死神。
「うらうらうらうらあああああああ!」
その叫び声は、狂気と歓喜が混じったような異質なものだった。
剣を握るたびに、ガルフの人格が変わるのだ。
気づけば、ミノタウロスの巨体がドサ、ドサと地に沈んでいく。
血飛沫一つ浴びず、ガルフは軽く服を払いながら言った。
「ちょっと頑張りすぎちゃったね」
「……いや、いやいや、おかしいだろ、あれ」
アーザーは震えた。恐怖ではない。
感動だ――圧倒的な“狂気”を前にした、畏怖にも似た感動。
「確かに、僕は伝説の王と呼ばれた。巨人を素手で仕留めたこともある。だが、あれは……楽しんでいる。殺すことを」
「だって、楽しいでしょ?」
そう言って笑うガルフ。
そこにあったのは、戦士ではない。“破壊者”そのものだった。
アーザーは確信した。この男は、世界の覇者になる。いや、なれる。
伝説の王は片膝をつき、ガルフの手を取る。
「このアーザー、あなたをこの世界の覇者にして差し上げましょう」
「そんな堅苦しいことはいいよ。ただ、俺が殺しまくるのを手伝って欲しい。頭が悪いから、作戦とか無理なんだ。でも、戦うのは好きだよ。楽しいから」
「……ああ、これが“狂気”……これが……真の強者……!」
アーザーの目には、まるで神を見たかのような光が宿っていた。
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる