Inventory Kingdom ~僕の収納は国家規模!~

AKISIRO

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第29話 英雄乱舞:破壊世界

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 ――英雄王ユーバスは思考する。
 かつて自分は、ただの冒険者に過ぎなかった。操れる剣は、たった十本。
 だが、運命は残酷に牙を剥いた。

 パイソン王国を襲った蛮族たちにより、彼の大切な人々は殺された。彼女も、家族も、友人も。
 全てを失った時、彼は「絶望」の果てに辿り着いた――その果てに、「力」があった。
 彼が得たのは、千本の剣を操るスキル《千剣》。だが、それは偽りだった。
 本当の力は――《一億剣》。

 その力を隠していたのは、侮らせるため。ただの千剣使いと誤認させた方が、敵は隙を見せる。
 その結果――百万の蛮族を、彼は一夜にして虐殺した。

「ふははははっ……絶望しろ、アイテムボックス使いの王よ」

 空から、剣が飛翔する。死体に突き刺さった剣、倉庫に眠っていた剣、武器屋の陳列品までもが。
 一振り一振りが空を裂き、雲を喰らう。一瞬にして、空は刃で埋め尽くされた。
 だが――敵であるリード王の顔に、絶望の色はなかった。

 彼はにやりと笑う。

「絶望? そんなの、仲間に裏切られたときの方がずっとマシだったよ」

 ユーバスは理解できなかった。仲間など、彼にはいなかったから。

「黙れぇぇぇぇぇッ!」

 怒りと共に、一億本の剣が振り下ろされた――!

 ★

 一方、破壊王カイルードは、ただその光景を眺めて笑っていた。
 彼は元・ディ王国の王子だった。滅びゆく王国で、彼が得たスキルは《爆撃》。
 故郷を破壊し尽くし、哀しみもないまま、戦場を転々とした。
 そんな彼の記憶に残っているのは――パイソン王国で出会った、一人の少女。

「なんで、お兄ちゃんはそんなに破壊したいの?」

 奴隷の少女だった。道化のように魔法で光を操って笑っていた。

「破壊したいから……それだけだ」
「でも、顔は悲しそう。白髪あるし、悩んでるんじゃない?」
「うるせぇ……でも、お前、面白れぇな」

 今もその少女を、どこかで探している気がする。
 だからこそ――

「るっせぇんだよッ! スキル《爆弾世界》ッ!」

 世界そのものが爆弾に書き換わる。
 空から爆炎が降り注ぎ、大地が焼かれる。まさに「終焉」の再現。

 ★

 だが、リードはその中心に立っていた。

「さて、どうやって君たちを仲間にしようか……うん、殺して人形にすればいいか」

 冷酷に、そして合理的に、リードは決断する。
 地下ダンジョンで見つけたモンスター《ギャラクシー》――それをアイテムボックスに収めたことで得たスキルがあった。

 《軍団》。

 このスキルにより、ギャラクシーの特性がリードに宿る。
 すなわち――自己のコピーを戦闘のたびに増殖できるのだ。
 リードのコピーは、2人、4人、10人、1000人、5000人へと倍々に増えていく。
「なるほど、レベル5000だから5000が限界か」
 リードたちは一斉に《ブレイカーソード》を構える。伝説の破壊剣。それが5000本。アイテムボックス内でブレイカーソードを5000本以上複製していたのだ。

「いくぞ。仲間にするために、お前らを殺す」

 空より、一億剣が降る。
 空より、爆弾世界が落ちる。
 ――激突。

 5000本の《ブレイカーソード》が剣を砕き、爆炎を切り裂く。
 だが、あまりに強大な衝撃により、リードの分身たちが次々に消滅していく。
 4999人が砕け散り、本体だけが最後まで残った。
 そして、ついに――

【解析完了しました】

 メロムAIの声が響く。

「ありがとな」

 リードは《ソウルブレイカー》を抜刀し、爆弾世界そのものを――一刀両断。
 凄まじい衝撃が、英雄王ユーバスと破壊王カイルードを吹き飛ばす。



 ジャヴァード平原は、焼け野原になっていた。
 空から落ちた剣の残骸が、一億本以上も散乱する。
 リードはその全てを、アイテムボックスに収めた。
 そして、ユーバスの遺体を見つける。黄金の鎧は砕け、全身が剣の破片で貫かれていた。
 破壊王カイルードの死体も、爆発により両足を失っていた。
 彼らの遺体を回収すると、リードは静かに呟く。

「よし、融合だ」
【人形なら熊と蛙がありますわよ】
「なら、蛙にユーバス、熊にカイルードを」
【了解です、勇者リード】
 メロカAIの言葉。その後融合、完了。
 取り出されたのは、小さな蛙と熊の人形。それぞれの頭部に、英雄王と破壊王の面影を宿していた。
「……おい、これ、まじかよ……」
「おれたち……人形になってんじゃねぇかああああああ!」
 二人の魂の叫びが、焼け野原に虚しく響いた。









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