16 / 20
第1章 灰色狼の王国
第16話 旅路とスライムダンジョンマスター誕生
しおりを挟む
◇蒼き王国への出発◇
城門の前では旅立ちの準備を整えた三人の影があった。
バッシュ、デッド・パーカーそしてエルフの使者パルである。
「青色麒麟の王国へは、ここから南西の密林を抜ける。絶対障壁の外周に辿り着くまでは、バムバスの残党に注意が必要だ」
パルが地図を広げながら緊張した面持ちで告げる。バッシュは重厚なペンタラゴンを背負い直し、ただ短く「行くぞ」と応じた。
「ヒャハハ! エルフの国か。その『絶対障壁』ってやつ、俺の黒刀でどれだけ斬れるか試させてもらうぜ」
パーカー王子は不敵に笑い、二振りの黒刀を腰に帯びる。かつての「王子」としての品格は、今や狂気じみた戦意に塗り潰されていた。三人は霧の向こう、深緑の闇へと姿を消した。
◇聖女と地下の邂逅◇
一方で、居残り組となったヒカリとメロム・メロカの兄妹は、建国資材の石材を求めて、城壁のすぐ近くで発見された天然の洞窟へと足を踏み入れていた。
「ヒカリちゃん、あんまり奥に行かないでよ……。何が出るか分からないんだから」
メロムがおどおどとランタンを掲げるが、ヒカリは何かを吸い寄せられるように、洞窟の最深部へと進んでいく。
そこで一行が出会ったのは、透き通った青い体を持つ、一匹の小さなスライムだった。
「待って、メロカちゃん。攻撃しないで」
メロカが神クラスの攻撃魔法を指先に灯したのを制し、ヒカリは膝をついて両手を広げた。彼女の手のひらから、優しく温かな黄金の光が溢れ出す。
「……あなた、怖がってるのね? 独りぼっちで寂しいの?」
本来、意思疎通など不可能なはずの原生モンスター。だが、ヒカリの光がスライムに触れた瞬間、プルプルとした体躯が歓喜に震え、彼女の腕の中に飛び込んできた。
「嘘でしょ……スライムと心を通わせたっていうの!?」
メロカが驚愕する中、洞窟の壁面が不意に鼓動を始めた。最奥の岩壁が崩れ落ち、そこに姿を現したのは、禍々しくも美しい、巨大な宝石のような結晶――ダンジョンコアだった。
【……光……純粋なる、理(ことわり)の光……】
ヒカリの脳内に、無機質な声が響く。このダンジョンそのものの意思であるコアが、彼女の持つ「調停を支える光」に共鳴したのだ。
「私に……何か手伝えることはある?」
ヒカリが導かれるままに、コアへ手を触れる。その瞬間、彼女の膨大な光の魔力が奔流となってコアへ流れ込んだ。
『承認。マスターをヒカリとして登録。……レベルアップを開始します』
1、10、50――そして100。 ヒカリのチート級の光を受け取ったダンジョンは、一瞬にして最高位のレベル100へと跳ね上がった。
轟音と共に洞窟が広がり、階層が幾重にも重なり、結晶の柱が立ち並ぶ。わずか数分で、城塞の地下には広大な「地下スライム王国」が形成されたのである。
「えぇぇぇ!? 地下全部がスライムの城になっちゃったよぉ!」
メロムが叫ぶ中、増殖したスライムたちが列をなし、ヒカリの騎士として整列し始めた。スライムソルジャー、スライムウィッチ、さらには結晶を纏ったオメガスライム。軍隊級の物量が、ヒカリ一人の意思の下に置かれたのだ。
◇森の防衛戦:英雄たちの共演◇
地下で「国」が拡張されている間、地上ではバムバスの侵攻が再び激しさを増していた。城壁の外は、食らって増殖した肉塊の波で埋め尽くされている。
「ハッ、増えれば増えるほど、俺様の槍が唸るぜ!」
前線に立つのは、ギリシャ神話の英雄、アキレウスとヘクトル。
アキレウスが弾丸のような速さで突撃し、黄金の槍を振るうたびに十数体のバムバスが爆散する。
「アキレウス、深追いはするなと言っている。左右から囲まれているぞ」
ヘクトルが冷めた声で忠告しながら、大盾でバムバスの突進を完璧に受け止める。衝撃を完全に殺し、敵の体勢が崩れた瞬間、彼は剣で急所を貫く。
「理屈はいい! 来るならまとめて来い!」
アキレウスが咆哮し、盾を地面に叩きつけて衝撃波を起こす。浮き上がったバムバスの個体たち。そこへ、待機していたヘクトルが複数の槍を神速の投擲で放った。
「星砕(ほしくだき)」
ヘクトルの正確無比な投擲がバムバスの核を射抜き、アキレウスの槍が残りの肉体を粉砕する。 かつてトロイア戦争で敵対した二人。だが今、ヘクトルの「鉄壁の守りと精密射撃」がアキレウスの「暴虐な突破力」を補完し、最強の防衛システムとして機能していた。
「……ふん、少しはマシな連携になったな」
ヘクトルが額の汗を拭う。アキレウスは豪胆に笑い、新たな肉の波を指差した。
「まだまだ足りねえ! 掃除はこれくらい派手にやらなきゃな!」
◇旅路の果てに◇
地上での激戦、地下での急成長。
仲間たちがそれぞれの役割を果たす中、バッシュ一行はついにパルの故郷、青色麒麟の王国の
「絶対障壁」を視界に捉えた。
それは、巨大な世界樹の枝葉から降り注ぐ、サファイアのような光のドーム。
だが、その美しい輝きの裏側には、選民思想と生贄の呪いが渦巻いている。
「……着いたな。パル、あの壁をどう抜ける?」
バッシュの問いに、パルは青ざめた顔で城壁の異変を指差した。 障壁の一部が、まるで腐敗したように黒ずんでいる。
「……あれは……!? 内部の過激派が、わざと外敵を引き入れるために開いた穴です。……バッシュ様、急ぎましょう。王国が内側から壊される前に!」
新国家の食料供給を支えるための交易路開拓。だがその旅は、エルフ王国の闇を暴く革命の戦いへと変貌しようとしていた。
城門の前では旅立ちの準備を整えた三人の影があった。
バッシュ、デッド・パーカーそしてエルフの使者パルである。
「青色麒麟の王国へは、ここから南西の密林を抜ける。絶対障壁の外周に辿り着くまでは、バムバスの残党に注意が必要だ」
パルが地図を広げながら緊張した面持ちで告げる。バッシュは重厚なペンタラゴンを背負い直し、ただ短く「行くぞ」と応じた。
「ヒャハハ! エルフの国か。その『絶対障壁』ってやつ、俺の黒刀でどれだけ斬れるか試させてもらうぜ」
パーカー王子は不敵に笑い、二振りの黒刀を腰に帯びる。かつての「王子」としての品格は、今や狂気じみた戦意に塗り潰されていた。三人は霧の向こう、深緑の闇へと姿を消した。
◇聖女と地下の邂逅◇
一方で、居残り組となったヒカリとメロム・メロカの兄妹は、建国資材の石材を求めて、城壁のすぐ近くで発見された天然の洞窟へと足を踏み入れていた。
「ヒカリちゃん、あんまり奥に行かないでよ……。何が出るか分からないんだから」
メロムがおどおどとランタンを掲げるが、ヒカリは何かを吸い寄せられるように、洞窟の最深部へと進んでいく。
そこで一行が出会ったのは、透き通った青い体を持つ、一匹の小さなスライムだった。
「待って、メロカちゃん。攻撃しないで」
メロカが神クラスの攻撃魔法を指先に灯したのを制し、ヒカリは膝をついて両手を広げた。彼女の手のひらから、優しく温かな黄金の光が溢れ出す。
「……あなた、怖がってるのね? 独りぼっちで寂しいの?」
本来、意思疎通など不可能なはずの原生モンスター。だが、ヒカリの光がスライムに触れた瞬間、プルプルとした体躯が歓喜に震え、彼女の腕の中に飛び込んできた。
「嘘でしょ……スライムと心を通わせたっていうの!?」
メロカが驚愕する中、洞窟の壁面が不意に鼓動を始めた。最奥の岩壁が崩れ落ち、そこに姿を現したのは、禍々しくも美しい、巨大な宝石のような結晶――ダンジョンコアだった。
【……光……純粋なる、理(ことわり)の光……】
ヒカリの脳内に、無機質な声が響く。このダンジョンそのものの意思であるコアが、彼女の持つ「調停を支える光」に共鳴したのだ。
「私に……何か手伝えることはある?」
ヒカリが導かれるままに、コアへ手を触れる。その瞬間、彼女の膨大な光の魔力が奔流となってコアへ流れ込んだ。
『承認。マスターをヒカリとして登録。……レベルアップを開始します』
1、10、50――そして100。 ヒカリのチート級の光を受け取ったダンジョンは、一瞬にして最高位のレベル100へと跳ね上がった。
轟音と共に洞窟が広がり、階層が幾重にも重なり、結晶の柱が立ち並ぶ。わずか数分で、城塞の地下には広大な「地下スライム王国」が形成されたのである。
「えぇぇぇ!? 地下全部がスライムの城になっちゃったよぉ!」
メロムが叫ぶ中、増殖したスライムたちが列をなし、ヒカリの騎士として整列し始めた。スライムソルジャー、スライムウィッチ、さらには結晶を纏ったオメガスライム。軍隊級の物量が、ヒカリ一人の意思の下に置かれたのだ。
◇森の防衛戦:英雄たちの共演◇
地下で「国」が拡張されている間、地上ではバムバスの侵攻が再び激しさを増していた。城壁の外は、食らって増殖した肉塊の波で埋め尽くされている。
「ハッ、増えれば増えるほど、俺様の槍が唸るぜ!」
前線に立つのは、ギリシャ神話の英雄、アキレウスとヘクトル。
アキレウスが弾丸のような速さで突撃し、黄金の槍を振るうたびに十数体のバムバスが爆散する。
「アキレウス、深追いはするなと言っている。左右から囲まれているぞ」
ヘクトルが冷めた声で忠告しながら、大盾でバムバスの突進を完璧に受け止める。衝撃を完全に殺し、敵の体勢が崩れた瞬間、彼は剣で急所を貫く。
「理屈はいい! 来るならまとめて来い!」
アキレウスが咆哮し、盾を地面に叩きつけて衝撃波を起こす。浮き上がったバムバスの個体たち。そこへ、待機していたヘクトルが複数の槍を神速の投擲で放った。
「星砕(ほしくだき)」
ヘクトルの正確無比な投擲がバムバスの核を射抜き、アキレウスの槍が残りの肉体を粉砕する。 かつてトロイア戦争で敵対した二人。だが今、ヘクトルの「鉄壁の守りと精密射撃」がアキレウスの「暴虐な突破力」を補完し、最強の防衛システムとして機能していた。
「……ふん、少しはマシな連携になったな」
ヘクトルが額の汗を拭う。アキレウスは豪胆に笑い、新たな肉の波を指差した。
「まだまだ足りねえ! 掃除はこれくらい派手にやらなきゃな!」
◇旅路の果てに◇
地上での激戦、地下での急成長。
仲間たちがそれぞれの役割を果たす中、バッシュ一行はついにパルの故郷、青色麒麟の王国の
「絶対障壁」を視界に捉えた。
それは、巨大な世界樹の枝葉から降り注ぐ、サファイアのような光のドーム。
だが、その美しい輝きの裏側には、選民思想と生贄の呪いが渦巻いている。
「……着いたな。パル、あの壁をどう抜ける?」
バッシュの問いに、パルは青ざめた顔で城壁の異変を指差した。 障壁の一部が、まるで腐敗したように黒ずんでいる。
「……あれは……!? 内部の過激派が、わざと外敵を引き入れるために開いた穴です。……バッシュ様、急ぎましょう。王国が内側から壊される前に!」
新国家の食料供給を支えるための交易路開拓。だがその旅は、エルフ王国の闇を暴く革命の戦いへと変貌しようとしていた。
0
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる