創者―ソウシャ―

AKISIRO

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第12話 思い出の使い方

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1 破壊的に強い剣【幼馴染の記憶】【追加で記憶が失わて行く】
2 アイテムボックス【家族の記憶】
3 光の神ラバスのイヤホン【初めて出来た友達の記憶】

 効果は破壊的な剣を使用すると破壊的な剣に記憶が付与されているとみて良い。
 なんどで破壊的な剣を使用し続けると思い出という記憶は追加で消えていき、破壊的な剣を消すと、追加で失われた記憶も戻って来ると想像出来る。

「全ての思い出を失ったら廃人になると思うんだがどうなるんです?」

【全ての記憶、つまり思い出を失うと人形のように動かなくなります。つまり廃人ですね】

「なるほどな」
 
 俺は今、バナッシュとチェイミとシェシェク老人と共にイスに座っている。
 テーブルにはバナッシュが用意してくれたハチミツジュースが置かれてある。

「対処方法は?」

【思い出を増やし続ける事です。そうすればデータ容量が増えていき、さらに強い創造が出来る事でしょう】

「そうか、それなら色々と生きて楽しむ事が大事なのかもしれないな」

【そうですね、ただ嫌な思い出も利用出来るので意識してみるといいかもしれません。うまくコントロールすれば、嫌な記憶を率先して思い出として消費する事が可能でしょうから】

「それはぜひともしたいな、虐めてきた人やサッカー部の監督の顔なんてのは思い出したくない事だからな」

【では、いつでも質問してください】

「助かるよ」

 深呼吸して、ハチミツジュースを飲み下す。
 口の中に甘い香りと甘い味が充満してくる。
 とろとろとしている液体がさらさらと喉を通っていく感触は、とてつもなくたまらなかった。
 思わずバナッシュにお替りをお願いした程だ。

「光の神ラバスよ現実世界に戻る方法は分かるか?」

【それは不可能に近い行程ですが、やろうと思うとしたら、そこにいるバナッシュが鍵だとだけ申しておきましょうか】

「そうか」

 なんとなく優しい顔をするようになったバナッシュの顔を覗き見た。
 彼女はとてとてと木製のマグカップに入れてくれたハチミツジュースを持ってきてくれていた。

「ここには井戸があるんだろう?」

「うん、だけど20人も使える水はないよ」

「だとしたら、井戸をもっと作らないといけないな」

「それならこの私がなんとなしよう」

「わしも協力しようかのう」

 チェイミとシェシェクさんが立ち上がった。

「海の事ならお任せなんだが、水の事も同じだと認識した。どうやら海と水は同じ部類で、海の声が聞こえる私は水の声も聞こえる」

「ほほう、それは親父さんからの遺伝かのう」

「あいつはぶち殺すからその話はしないで」

「すまんのう」

 なぜかシェシェクさんがしょんぼりとしていた。
 本当に不思議なこともあるものだと思った。
 シェシェクさんは海の声を聞く事が出来る。
 それはつまり、海の神シェイクと関わりがあるという事ではないのだろうか。
 その事に気付いた俺はあえて言及しないでおこうと思った。

 もしかしたら海神シェイクの友達の可能性が否定できないからだ。

「じゃあ、バナッシュと俺は何しようか」

「うーん、ダンジョン攻略しようよ」

「そんなものがあるのか? ここに」

「あるよーソウシャ村になったこの集落にはね、少し離れた所に遺跡があるの、そこはまだ攻略されていなくて、ジャスカ達が墓守として守ってたのよ」

「そこ行ってみるかな、チェイミ、シェシェクさん、少しダンジョン攻略してきます」

「油断はするんじゃないぞ」

「まぁ、チェイミの姉さんが師匠として俺を鍛えてくれたから何とかなるでしょう」

 チェイミ師匠とシェシェクさんがいなくなると。
 バナッシュの案内の元で遺跡というダンジョンに向かった。



 青い炎の魔王。それがぼく。
 怒りがふつふつとマグマのように沸き上がる。
 ここは暗闇に包まれている。
 船の上で沢山の爆発が起きた。
 その時、勇者グリングシャはぼくをどこかに転送させた。
 転送魔法という奴だ。
 なぜぼくだけなのかが理解出来なかったが。

 暗闇の中だ。
 どこか果てしない遺跡の中の奥深くに来てしまっているようだ。

 ぼうっと輝いた。
 自らの青い炎。
 体の皮膚は今も剥げている。
 まるで伝染病のように体中に広がっている。

 炎はラクシャミーを失った怒りから来ている。
 だけど、少しずつ炎は消えていく。
 怒りが静まってくる。

「そうか、ラクシャミーは生きているのか、速く棺を掘り起こさないと可哀そうだ。だが、だからと言って異世界から魂を呼び寄せる方法がない・・・・・・」

 ぼくは自分も無能ぶりを悟った。
 どれだけ強い魔王でも、異世界を渡る事は不可能。
 
 だが、あの闇の神バルスに覚醒する程の力を持ったバナッシュの力があれば可能かもしれない。

 後、もしかしたら勇者グリングシャが言っていた言葉の意味を悟る。
 あそこに現れたヴェイク、つまり入れ替わったのではないだろうか。
 1人があちらに行くと、あちらからこちらに1人来る感じなのではないだろうか。

 それともヴェイクにはさらに謎があるのだろうか。
 異世界からこちらに来る理由があったのだろうか。

 暗闇の中を呆然と歩いている。

 ラクシャミーはこんな暗闇の中で棺の中で眠っている。
 それはきっととても苦しい事なのだろうけど、魂がそこにはない事が、とても良かった。
 それだけ、暗闇の中に入り続ける必要がないからだ。

「さてと」

 天井を見上げる。
 そこは果て無き天井。
 計算すれば城が1個まるまる入るくらいの広さ。
 
 がちゃがちゃという音が響く。
 無数のモンスターの大軍が押し寄せてくるかのようだ。
 それは理性を失った黒ドワーフ族だった。

 ドワーフ族には三種類いるとされる。
 1ノーマル族2白ドワーフ族3黒ドワーフ族

 ノーマル族はどこにでもいるドワーフ。
 白ドワーフ族は光のシモベと呼ばれている。
 黒ドワーフ族は地下深くに根城を取って自我を失った魔族そのもの。
 ドワーフ族は魔族なのだが、モンスターと同義、スライムのようでありドラゴンのような、野生に特化した魔族モンスターこそが黒ドワーフ族であった。

 奴らは右手に鋼の槌を持ち、左手には鋼の盾を持っている。

 雄叫びを上げて突撃を開始する。
 
 四方に取り囲まれており。
 まるでムカデのように壁から壁へと移動する。

「獲物だ!」

「食いものだ!」

「美味しいものだ!」

 壁には虫の群れのように蔓延る黒ドワーフ族。
 彼等は一斉にざざっと動き出し。
 雪崩のように押し寄せてきた。
 音だけでも恐ろしいのに、その姿を照らす青い光は。
 とてもとても彼等を青黒い存在にさせていたのだから。


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