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第13話 蒼い魔王デナントス降臨
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1人の黒ドワーフがこちらを見て叫んだ。
「待て! このお方は!」
1人また1人と黒ドワーフが止まった。
そしてもごもごと会話を始めたではないか。
ぼくはどうしたものかと彼等を眺めていた。
「さて、このお方は、蒼い魔王ガランドス様ではないだろうか」
「違う、ガランドス様は別大陸に渡られた」
「あのお方は戻ってこなかった」
「違う、ガランドス様は必ず戻って来る!」
「あのーガランドスは親父でして」
「なんだとおおおおおおお」
黒ドワーフの長らしき人が杖をつついてこちらにやってくる。
頭を下げて、髭もじゃの髭を撫でながら。
瞳から涙を流している。
「我ら、お待ちしておりました。ガランドス様の息子さま」
「一体どういう事だ?」
「ここは呪われた遺跡、我らは地上に出る事を許されておりません、出ようとすれば呪いで殺されます。ですがガランドス様がその呪いを解いてくれると誓ってくれたのです。それを待ち、数十年も待ち続けていました。その間。ダンジョンから発生するモンスターを食べて生きておりました」
「一体何人いるんだ?」
「300人でございます。我が民はガランドス様に忠誠を誓っております」
「親父はもういないんだ」
「なんですと!」
「親父、いや父上はもう死んだ」
「そうですか」
「ぼくはデナントスだ。青い魔王」
「いえ、あなたの光は蒼い炎となるはずです。この炎の盃を飲めば」
後ろからさらに老いた老人がやってくる。
彼の小さな両手には巨大な杯が握られていた。
盃の上から溢れんばかりに青い炎がぐねりぐねりと踊っていた。
「青い」
「いえ、これは蒼い炎です。青よりさらに純度が高い蒼でございます」
「これを飲めばいいのか」
「これはあなたの父上様のガランドス様が置いていったものです。この闇の中でも照らし続けてくれると、現にあなたの青い炎はこの闇をも照らしております」
「そうか、飲もう」
ぼくには一切の迷いもなかった。
父親の炎を飲む事は一切やった事がない行程だ。
心のどこかからそれを求める喉の渇きを感じていたのは、確かにあるかもしれない。
でも父親の臭いを感じ取り。
父親の暖かさを感じ取り、父親の冷たさを感じ取り。
一気にぼくはその蒼い炎を飲み込んだのだ。
口の中に広がる激痛。
それは火傷を通り越しており、口の中を溶かすようだ。
だが実際は溶けず。
父親の記憶が流れてくる。
記憶は津波となり、頭の中をかき混ぜる。
沢山の暖かい記憶。
熱すぎる記憶。
色々な思い出が流れてくる。
頬を雫が垂れた。
父親がここまで偉業をなしていたのか。
どれだけの思いを描き。どれだけの覚悟を決めて、ガロルフ大陸でゴブリン達を率いたのか。
記憶が全てを紐解いてくれる。
父親は、いや親父は。
元勇者パーティーのメンバーだったのだから。
そして勇者グリングシャは元パーティメンバーだったのだから。
全ては分からない。
それでも勇者グリングシャと親父は一緒になって戦い。
一緒に何かを見つけ、そして絶望し。
何もかも失い。
そして辿り着いた先で彼等を待っていたのはさらなる絶望で。
その先は分からない。
巨大すぎる剣。
それだけしか見えない。
剣とは何か、剣がそこにあった。
あまりにも破壊的で美しい剣。
その剣を破壊しないといけないのに。
その巨大すぎる剣を破壊するには絶大なる剣が必用だ。
それもヴェイクが持っているくらいの剣じゃないと、それもデガスがもっている星の剣くらいじゃないと。
その1本の巨大な剣の塔が。全てを破壊しつくし。
全ての世界を統合してしまうのだから。
それを防ぐために。
そこで思い出が遮断される。
何かが邪魔をする。
何かに気付かれる。
そして意識が覚醒していく。
青い炎はさらなる純度の高い蒼い炎となりて。
全身の伝染病のように皮膚が剥がれていく現象ではなく。
そこにあるのは、皮膚がただれるのではなく。
単純に蒼い炎そのものの体があった。
「力が凄い」
指をぱちぱちさせると。炎がまとわりつく。
今まで怒りを露わにしないと発現しなかったそれは。
今では静かな怒りをイメージするだけで発現するようになっていった。
右手に蒼い炎の光をまとめていく。
次にその炎は地上に向けて放つ。
天井に巨大な穴が開く。
そこから光が差し込む。
黒ドワーフ達が歓声を上げる。
「約束を果たそう、黒ドワーフよ、親父が勝手につけた約束だが。お前達の呪いはぼくが食らいつくそう」
全身から解き放たれる炎。
黒ドワーフの全身を焼き尽くす。
悲鳴が上がるかと思ったら上がらず。
彼等の皮膚の黒い部分が燃えていく。
そしてどこにでもいるノーマルドワーフに変貌していく。
ドワーフ族達は瞳からぽつりぽつりと顔をくしゃくしゃにさせながら。
ひたすら顔に両手を上げて。
嗚咽を漏らしながら。わぁわぁと声を上げて泣くのではなく笑っていた。
顔をぐちゃぐちゃにさせて、しわくちゃな顔なのに。
彼等は満足に包まれたかのように、まるで死んでしまったかのように笑っていた。
ひたすら空を見上げて、巨大な空洞に出来る空洞を見上げて笑っていた。
「空だ!」
「空がある!」
「空があるんだ!」
彼等はムカデのように岩を駆けのぼる。
今か今かと遺跡から出て行こうとする。
地上に向けて。
「さて、ぼくは」
後ろを振り返る。
そこには1体の銅像が建てられており。
黒ドワーフ達が一生懸命作っていたのだろう。
ガランドスという親父の銅像が飾られており。
銅像はこちらを一心に見つめていたが。
ただその先にある1本の剣を見ていたのだと知った。
「これは」
引き抜いた。
魔剣ではない。
どこにでもある普通の剣だ。
だがその剣は折れていた。
「これは、自ら炎を投下させるのか」
折れた剣から蒼い炎が出現する。
「これは蒼剣にしよう」
蒼剣。それはぼろぼろの魔剣の次に大事にしようと決意したのだ。
「さて行くか」
新しい希望に向かって地上に向かった。
「待て! このお方は!」
1人また1人と黒ドワーフが止まった。
そしてもごもごと会話を始めたではないか。
ぼくはどうしたものかと彼等を眺めていた。
「さて、このお方は、蒼い魔王ガランドス様ではないだろうか」
「違う、ガランドス様は別大陸に渡られた」
「あのお方は戻ってこなかった」
「違う、ガランドス様は必ず戻って来る!」
「あのーガランドスは親父でして」
「なんだとおおおおおおお」
黒ドワーフの長らしき人が杖をつついてこちらにやってくる。
頭を下げて、髭もじゃの髭を撫でながら。
瞳から涙を流している。
「我ら、お待ちしておりました。ガランドス様の息子さま」
「一体どういう事だ?」
「ここは呪われた遺跡、我らは地上に出る事を許されておりません、出ようとすれば呪いで殺されます。ですがガランドス様がその呪いを解いてくれると誓ってくれたのです。それを待ち、数十年も待ち続けていました。その間。ダンジョンから発生するモンスターを食べて生きておりました」
「一体何人いるんだ?」
「300人でございます。我が民はガランドス様に忠誠を誓っております」
「親父はもういないんだ」
「なんですと!」
「親父、いや父上はもう死んだ」
「そうですか」
「ぼくはデナントスだ。青い魔王」
「いえ、あなたの光は蒼い炎となるはずです。この炎の盃を飲めば」
後ろからさらに老いた老人がやってくる。
彼の小さな両手には巨大な杯が握られていた。
盃の上から溢れんばかりに青い炎がぐねりぐねりと踊っていた。
「青い」
「いえ、これは蒼い炎です。青よりさらに純度が高い蒼でございます」
「これを飲めばいいのか」
「これはあなたの父上様のガランドス様が置いていったものです。この闇の中でも照らし続けてくれると、現にあなたの青い炎はこの闇をも照らしております」
「そうか、飲もう」
ぼくには一切の迷いもなかった。
父親の炎を飲む事は一切やった事がない行程だ。
心のどこかからそれを求める喉の渇きを感じていたのは、確かにあるかもしれない。
でも父親の臭いを感じ取り。
父親の暖かさを感じ取り、父親の冷たさを感じ取り。
一気にぼくはその蒼い炎を飲み込んだのだ。
口の中に広がる激痛。
それは火傷を通り越しており、口の中を溶かすようだ。
だが実際は溶けず。
父親の記憶が流れてくる。
記憶は津波となり、頭の中をかき混ぜる。
沢山の暖かい記憶。
熱すぎる記憶。
色々な思い出が流れてくる。
頬を雫が垂れた。
父親がここまで偉業をなしていたのか。
どれだけの思いを描き。どれだけの覚悟を決めて、ガロルフ大陸でゴブリン達を率いたのか。
記憶が全てを紐解いてくれる。
父親は、いや親父は。
元勇者パーティーのメンバーだったのだから。
そして勇者グリングシャは元パーティメンバーだったのだから。
全ては分からない。
それでも勇者グリングシャと親父は一緒になって戦い。
一緒に何かを見つけ、そして絶望し。
何もかも失い。
そして辿り着いた先で彼等を待っていたのはさらなる絶望で。
その先は分からない。
巨大すぎる剣。
それだけしか見えない。
剣とは何か、剣がそこにあった。
あまりにも破壊的で美しい剣。
その剣を破壊しないといけないのに。
その巨大すぎる剣を破壊するには絶大なる剣が必用だ。
それもヴェイクが持っているくらいの剣じゃないと、それもデガスがもっている星の剣くらいじゃないと。
その1本の巨大な剣の塔が。全てを破壊しつくし。
全ての世界を統合してしまうのだから。
それを防ぐために。
そこで思い出が遮断される。
何かが邪魔をする。
何かに気付かれる。
そして意識が覚醒していく。
青い炎はさらなる純度の高い蒼い炎となりて。
全身の伝染病のように皮膚が剥がれていく現象ではなく。
そこにあるのは、皮膚がただれるのではなく。
単純に蒼い炎そのものの体があった。
「力が凄い」
指をぱちぱちさせると。炎がまとわりつく。
今まで怒りを露わにしないと発現しなかったそれは。
今では静かな怒りをイメージするだけで発現するようになっていった。
右手に蒼い炎の光をまとめていく。
次にその炎は地上に向けて放つ。
天井に巨大な穴が開く。
そこから光が差し込む。
黒ドワーフ達が歓声を上げる。
「約束を果たそう、黒ドワーフよ、親父が勝手につけた約束だが。お前達の呪いはぼくが食らいつくそう」
全身から解き放たれる炎。
黒ドワーフの全身を焼き尽くす。
悲鳴が上がるかと思ったら上がらず。
彼等の皮膚の黒い部分が燃えていく。
そしてどこにでもいるノーマルドワーフに変貌していく。
ドワーフ族達は瞳からぽつりぽつりと顔をくしゃくしゃにさせながら。
ひたすら顔に両手を上げて。
嗚咽を漏らしながら。わぁわぁと声を上げて泣くのではなく笑っていた。
顔をぐちゃぐちゃにさせて、しわくちゃな顔なのに。
彼等は満足に包まれたかのように、まるで死んでしまったかのように笑っていた。
ひたすら空を見上げて、巨大な空洞に出来る空洞を見上げて笑っていた。
「空だ!」
「空がある!」
「空があるんだ!」
彼等はムカデのように岩を駆けのぼる。
今か今かと遺跡から出て行こうとする。
地上に向けて。
「さて、ぼくは」
後ろを振り返る。
そこには1体の銅像が建てられており。
黒ドワーフ達が一生懸命作っていたのだろう。
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銅像はこちらを一心に見つめていたが。
ただその先にある1本の剣を見ていたのだと知った。
「これは」
引き抜いた。
魔剣ではない。
どこにでもある普通の剣だ。
だがその剣は折れていた。
「これは、自ら炎を投下させるのか」
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