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第14話 思い出の遺跡
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遺跡の中に入ると、なぜかそこに広がっていたのは、鬱蒼と茂る草木、頑固爺のような岩肌に彩られた巨石達。赤い鱗に包まれたドラゴンの群れ。
曲がりくねった動く大樹。
無限かと思える世界が広がっていた。
「ここが、ダンジョン?」
「そうだよ、ここがヴィジョンダンジョン。人の思い出が結晶化させる世界だよ。この世界はこの世界の人達の思い出から作られてるんだ」
「ダンジョンと聞いたから、迷路のようなものを創造していたよ」
「それが基本のダンジョンなんだけど、このヴィジョンダンジョンは少し違うのよ、さて、ここを攻略するのは不可能だから、ここで強くなると良いんだよ」
「なぁ、ここから取れる材料とかを使って、ソウシャ村の特産品とかに出来ないかな、そうすれば魔族達も困らなくて済むと思うし」
「それは名案なのよ」
バナッシュは朗らかに、踊り出してしまいそうになるほど気持ちを上気させていた。
それを見てなんとなくバナッシュはまだ子供なのだなーと思ったけど。
俺もそんな子供の1人なんだと思う。
破壊的に強い剣を使用すると、思い出が追加で消える。
それを戻すには破壊的に強い剣を消す必要がある。
また同じものを作れるだけの創造力がある訳でもないし。
創造出来たとしても、この剣は最初に創造したものと大分違ってくると思う。
良いものにもなるかもしれないけど、最悪悪い物にもなる可能性があるからだ。
なのでこのダンジョンでは命の危険がない限り破壊的に強い剣の使用は禁止しよう。
ただ、どうやって戦うかなのだが、チェイミから教わった技術で純粋に戦う必要がある。
一応チェイミから普通の鉄の剣は貰っている。
元々は海賊達が使用していた物のようだが、その海賊達は全員死んだらしい。
正確にはチェイミが殺害したらしいのだが、それを見た訳ではないので何とも言えない。
体の動かし方、体のさばき方などはチェイミから一通り教わっている。
バナッシュもそれなりに修羅場をくぐっているらしく戦う事が出来るみたいだ。
彼女はいつの間にか所持していた弓を持っていた。
「えへん、うちは弓の名手でもあるのだ」
と、小さな胸を張って威張っていたけど、どことなく強そうに感じたのは不思議だった。
目の前に小さな2本角を生やした小さなウサギのようなモンスターが現れた。
そいつは鋭く尖がった牙をちらつかせて、こちらに突風のように襲い掛かってきた。
バナッシュが正確に弓矢を引き絞った。
風を切る音が響いた。
矢が1本ウサギの肌を掠った。
咄嗟に動き出した。
心臓が脈動する。
体が動く、想像通りにちゃんと動く事が出来る。
右足と左足を交互に繰り出す。
腰を低くして、ウサギがこちらに2本角を向けた。
そこから何かが来る!
と瞬時に悟ったとき、黄色い光線のようなものが放射されて、俺の右頬を掠った。
頬を血がつらりと流れる。
死ぬ直前まで来ていたようだ。
恐怖は既に通り越して、気持ちが昂る。
まるでサッカーをやっている時のような感覚。
違うとすれば、ここには仲間のバナッシュしかいない。
同じチームメイトの味方ではなく敵となる人物がいない。
監督という敵もいないのだ。
剣を横薙ぎに振った。
2本角のウサギが前足に力を入れて後ろにジャンプする。
咄嗟に元海賊の剣を振るのではなく、一歩前進させ、突き刺す。
一直線に心から念じた。
創造の力を使用した訳ではない。
ただ一直線に突き刺しただけなのだから。
2本角のウサギの胸を突き刺した。
そのウサギは地面にどさりと横倒しになった。
最後に懸命に生きるかのように痙攣していくと。
しばらくすると動かぬウサギの人形になり果てた。
「はぁはぁ、やったぞ」
「次が来るわ」
仲間の2本角のウサギがやられて、その仲間だったのか10羽近くのウサギ達がこちらに向かって突撃してくる。
「まじかよ」
それがため息ではなく、嬉しさからくる気持ちだった。
★
「はぁはぁ、こんなに動いたのは久々だよ」
「うん、うちも疲れた、今日はこの辺で帰ろうか」
「だな」
眼前に広がる2本角のウサギモンスターの死体。
俺は死体を回収しながら、2本角のウサギモンスターの10体の死体をアイテムボックスに収容する事にした。
この世界、いやヴィジョンダンジョンなのだが、なかなか夜にならなかった。
時間軸が外の世界と違うようだし。
もしかしたら永遠と真昼間の可能性もある訳だが。
遺跡から出ると、いつもの世界に戻る。
そこは暗闇が支配する鬱蒼と陰鬱な世界だった。
後はソウシャ村に戻るだけとなった。
「なぁ、ジャスカとデャスカとブャスカはどんな兄弟だったんだ?」
「そうね、とても良いゴブリン3兄弟だったの」
ソウシャ村までの帰路まで俺とバナッシュは思い出話に話を咲かせた。
俺の思い出はいくつか装備品になってしまっているけど。
それでも覚えている良い記憶ってものはある訳だ。
「でね、ジャスカが魔王カッシュは実は亡霊だなんて言うんだよ」
「それってどういう事?」
「それはね、魔王カッシュが遥か昔の人類を破壊させるほどの亡霊だったんだって、迷信でしょ?」
「そうかな、魔王カッシュって人を俺は知らないんだよデナントスは知っていたみたいだけどね」
「そうねーそうねー魔王カッシュはきっと怖ーい亡霊なんだよ」
そんな事を2人で言い合っていたところ、俺達はソウシャ村に到着した。
その時遠くの山が爆発した。
蒼い炎が空高く舞い上がった。
曲がりくねった動く大樹。
無限かと思える世界が広がっていた。
「ここが、ダンジョン?」
「そうだよ、ここがヴィジョンダンジョン。人の思い出が結晶化させる世界だよ。この世界はこの世界の人達の思い出から作られてるんだ」
「ダンジョンと聞いたから、迷路のようなものを創造していたよ」
「それが基本のダンジョンなんだけど、このヴィジョンダンジョンは少し違うのよ、さて、ここを攻略するのは不可能だから、ここで強くなると良いんだよ」
「なぁ、ここから取れる材料とかを使って、ソウシャ村の特産品とかに出来ないかな、そうすれば魔族達も困らなくて済むと思うし」
「それは名案なのよ」
バナッシュは朗らかに、踊り出してしまいそうになるほど気持ちを上気させていた。
それを見てなんとなくバナッシュはまだ子供なのだなーと思ったけど。
俺もそんな子供の1人なんだと思う。
破壊的に強い剣を使用すると、思い出が追加で消える。
それを戻すには破壊的に強い剣を消す必要がある。
また同じものを作れるだけの創造力がある訳でもないし。
創造出来たとしても、この剣は最初に創造したものと大分違ってくると思う。
良いものにもなるかもしれないけど、最悪悪い物にもなる可能性があるからだ。
なのでこのダンジョンでは命の危険がない限り破壊的に強い剣の使用は禁止しよう。
ただ、どうやって戦うかなのだが、チェイミから教わった技術で純粋に戦う必要がある。
一応チェイミから普通の鉄の剣は貰っている。
元々は海賊達が使用していた物のようだが、その海賊達は全員死んだらしい。
正確にはチェイミが殺害したらしいのだが、それを見た訳ではないので何とも言えない。
体の動かし方、体のさばき方などはチェイミから一通り教わっている。
バナッシュもそれなりに修羅場をくぐっているらしく戦う事が出来るみたいだ。
彼女はいつの間にか所持していた弓を持っていた。
「えへん、うちは弓の名手でもあるのだ」
と、小さな胸を張って威張っていたけど、どことなく強そうに感じたのは不思議だった。
目の前に小さな2本角を生やした小さなウサギのようなモンスターが現れた。
そいつは鋭く尖がった牙をちらつかせて、こちらに突風のように襲い掛かってきた。
バナッシュが正確に弓矢を引き絞った。
風を切る音が響いた。
矢が1本ウサギの肌を掠った。
咄嗟に動き出した。
心臓が脈動する。
体が動く、想像通りにちゃんと動く事が出来る。
右足と左足を交互に繰り出す。
腰を低くして、ウサギがこちらに2本角を向けた。
そこから何かが来る!
と瞬時に悟ったとき、黄色い光線のようなものが放射されて、俺の右頬を掠った。
頬を血がつらりと流れる。
死ぬ直前まで来ていたようだ。
恐怖は既に通り越して、気持ちが昂る。
まるでサッカーをやっている時のような感覚。
違うとすれば、ここには仲間のバナッシュしかいない。
同じチームメイトの味方ではなく敵となる人物がいない。
監督という敵もいないのだ。
剣を横薙ぎに振った。
2本角のウサギが前足に力を入れて後ろにジャンプする。
咄嗟に元海賊の剣を振るのではなく、一歩前進させ、突き刺す。
一直線に心から念じた。
創造の力を使用した訳ではない。
ただ一直線に突き刺しただけなのだから。
2本角のウサギの胸を突き刺した。
そのウサギは地面にどさりと横倒しになった。
最後に懸命に生きるかのように痙攣していくと。
しばらくすると動かぬウサギの人形になり果てた。
「はぁはぁ、やったぞ」
「次が来るわ」
仲間の2本角のウサギがやられて、その仲間だったのか10羽近くのウサギ達がこちらに向かって突撃してくる。
「まじかよ」
それがため息ではなく、嬉しさからくる気持ちだった。
★
「はぁはぁ、こんなに動いたのは久々だよ」
「うん、うちも疲れた、今日はこの辺で帰ろうか」
「だな」
眼前に広がる2本角のウサギモンスターの死体。
俺は死体を回収しながら、2本角のウサギモンスターの10体の死体をアイテムボックスに収容する事にした。
この世界、いやヴィジョンダンジョンなのだが、なかなか夜にならなかった。
時間軸が外の世界と違うようだし。
もしかしたら永遠と真昼間の可能性もある訳だが。
遺跡から出ると、いつもの世界に戻る。
そこは暗闇が支配する鬱蒼と陰鬱な世界だった。
後はソウシャ村に戻るだけとなった。
「なぁ、ジャスカとデャスカとブャスカはどんな兄弟だったんだ?」
「そうね、とても良いゴブリン3兄弟だったの」
ソウシャ村までの帰路まで俺とバナッシュは思い出話に話を咲かせた。
俺の思い出はいくつか装備品になってしまっているけど。
それでも覚えている良い記憶ってものはある訳だ。
「でね、ジャスカが魔王カッシュは実は亡霊だなんて言うんだよ」
「それってどういう事?」
「それはね、魔王カッシュが遥か昔の人類を破壊させるほどの亡霊だったんだって、迷信でしょ?」
「そうかな、魔王カッシュって人を俺は知らないんだよデナントスは知っていたみたいだけどね」
「そうねーそうねー魔王カッシュはきっと怖ーい亡霊なんだよ」
そんな事を2人で言い合っていたところ、俺達はソウシャ村に到着した。
その時遠くの山が爆発した。
蒼い炎が空高く舞い上がった。
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