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幻想界編
第7話 別れ
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一週間の修行が終わった夜、焚き火の炎が小さく揺れていた。
「さて、ここから技の伝授に移ろうか」
一心が立ち上がり、両手を軽く払う。
「僕もここで長居するわけにはいかない」
「え?まだ組み手だけじゃ……」
志雄は驚いたように声を上げる。
「組み手だけでも、前よりは強くなってるよ」
一心はあっさりと笑う。
「大事なのは鍛錬を怠らないこと。そうすれば、一回技を使ったぐらいじゃ壊れない身体になる」
「でも……」
言いかけた志雄に、一心は少し真剣な目を向ける。
「それに君たちも用事があるんだろ?」
「あ、そうだ……王都を目指してるんだ」
志雄はハッとしたように背筋を伸ばした。
「なんか、ここまでしてもらって……あ、ありがとうございます」
「ははは」
一心は手を振って笑った。
「そのセリフは修行が終わってからにしてくれ。感謝されるほどのことはしてないさ。君を強くするって言ったのに、技ひとつしか伝授できない。中途半端に終わるなんて、正直不本意だよ」
「……まあ、僕も一刻も早く主人のもとに戻らなきゃいけないんだけどね。あー、また怒られるなぁ」
そうぼやきながら、一心は志雄の前に立つ大岩を指差した。
「さて、始めますか。――この岩を一撃で粉砕してみて」
そこには志雄の背丈を二回りは上回る巨大な岩が鎮座していた。
「え?む、無理ですよ……!」
志雄は目を丸くし、後ずさる。
「これを破壊するなんて、ファンタジーの世界の話としか……いや、この世界そのものがファンタジーだったな」
一心は腕を組み、落ち着いた声で言う。
「君はこの一週間、僕の動きにギリギリついてこれた。手加減とはいえ、拳術特有の“闘気”が出始めてる証拠だ。……感覚で思い出してみろ」
「闘気……?」
志雄は拳を見下ろす。
(見えない。でも、見るものじゃない。――感じるんだ)
胸の奥に熱いものが込み上げる。
(属性が開花したときと同じ感覚……あのときも、極限まで追い込まれて、無理だと思った瞬間に力が出た。死の縁を二度もくぐった――あの時の震えと、冷たさと、焼けるような熱さ……全部、俺の中にまだ残ってる)
志雄は大きく息を吸い込み、吐き出した。
(目の前にいる一心さんが見せてくれた“龍閃”。あの突きの軌道、速度、呼吸……全部脳裏に焼き付いてる。模倣しろ。感じ取れ。俺の拳は、俺が信じて打ち抜け!)
「はぁあああああッ!!」
渾身の気合と共に拳を叩き込む。
岩は表面こそ無傷に見えたが、次の瞬間、内部から「バキィッ」と鈍い音を立て、亀裂が広がった。
「……っ!」
志雄は拳を押さえ、歯を食いしばる。痺れるような痛みが走り、骨が悲鳴を上げているのがわかる。
⸻
一心は目を細め、感心したように頷いた。
「驚いたな……まさか、岩の外側じゃなく、内部を破壊するとは」
「結局……ヒビすら入らなかったけど……」
志雄は悔しげに呟いた。
「いや、違う」
一心は微笑む。
「表面を壊すよりも難しい。内部に衝撃を通せるってことは、君が“闘気”を感覚で掴んだ証拠だ。これで属性の発現感覚も理解できただろうし――」
焚き火の光に照らされ、一心は志雄とツムギを見やった。
「うん、彼らは大丈夫だな」
「じゃあ僕はもう行くよ」
一心は背を向ける。
「ツムギさん、志雄の拳の治療、頼むよ」
「はい! お達者で」
ツムギは慌てて頷いた。
志雄は拳を押さえながら、心の奥で小さな確信を得ていた。
(俺は……少しだけど、本当に強くなれたんだな)
「さて、ここから技の伝授に移ろうか」
一心が立ち上がり、両手を軽く払う。
「僕もここで長居するわけにはいかない」
「え?まだ組み手だけじゃ……」
志雄は驚いたように声を上げる。
「組み手だけでも、前よりは強くなってるよ」
一心はあっさりと笑う。
「大事なのは鍛錬を怠らないこと。そうすれば、一回技を使ったぐらいじゃ壊れない身体になる」
「でも……」
言いかけた志雄に、一心は少し真剣な目を向ける。
「それに君たちも用事があるんだろ?」
「あ、そうだ……王都を目指してるんだ」
志雄はハッとしたように背筋を伸ばした。
「なんか、ここまでしてもらって……あ、ありがとうございます」
「ははは」
一心は手を振って笑った。
「そのセリフは修行が終わってからにしてくれ。感謝されるほどのことはしてないさ。君を強くするって言ったのに、技ひとつしか伝授できない。中途半端に終わるなんて、正直不本意だよ」
「……まあ、僕も一刻も早く主人のもとに戻らなきゃいけないんだけどね。あー、また怒られるなぁ」
そうぼやきながら、一心は志雄の前に立つ大岩を指差した。
「さて、始めますか。――この岩を一撃で粉砕してみて」
そこには志雄の背丈を二回りは上回る巨大な岩が鎮座していた。
「え?む、無理ですよ……!」
志雄は目を丸くし、後ずさる。
「これを破壊するなんて、ファンタジーの世界の話としか……いや、この世界そのものがファンタジーだったな」
一心は腕を組み、落ち着いた声で言う。
「君はこの一週間、僕の動きにギリギリついてこれた。手加減とはいえ、拳術特有の“闘気”が出始めてる証拠だ。……感覚で思い出してみろ」
「闘気……?」
志雄は拳を見下ろす。
(見えない。でも、見るものじゃない。――感じるんだ)
胸の奥に熱いものが込み上げる。
(属性が開花したときと同じ感覚……あのときも、極限まで追い込まれて、無理だと思った瞬間に力が出た。死の縁を二度もくぐった――あの時の震えと、冷たさと、焼けるような熱さ……全部、俺の中にまだ残ってる)
志雄は大きく息を吸い込み、吐き出した。
(目の前にいる一心さんが見せてくれた“龍閃”。あの突きの軌道、速度、呼吸……全部脳裏に焼き付いてる。模倣しろ。感じ取れ。俺の拳は、俺が信じて打ち抜け!)
「はぁあああああッ!!」
渾身の気合と共に拳を叩き込む。
岩は表面こそ無傷に見えたが、次の瞬間、内部から「バキィッ」と鈍い音を立て、亀裂が広がった。
「……っ!」
志雄は拳を押さえ、歯を食いしばる。痺れるような痛みが走り、骨が悲鳴を上げているのがわかる。
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一心は目を細め、感心したように頷いた。
「驚いたな……まさか、岩の外側じゃなく、内部を破壊するとは」
「結局……ヒビすら入らなかったけど……」
志雄は悔しげに呟いた。
「いや、違う」
一心は微笑む。
「表面を壊すよりも難しい。内部に衝撃を通せるってことは、君が“闘気”を感覚で掴んだ証拠だ。これで属性の発現感覚も理解できただろうし――」
焚き火の光に照らされ、一心は志雄とツムギを見やった。
「うん、彼らは大丈夫だな」
「じゃあ僕はもう行くよ」
一心は背を向ける。
「ツムギさん、志雄の拳の治療、頼むよ」
「はい! お達者で」
ツムギは慌てて頷いた。
志雄は拳を押さえながら、心の奥で小さな確信を得ていた。
(俺は……少しだけど、本当に強くなれたんだな)
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