春を売るなら、俺だけに

みやした鈴

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【エピローグ】

これから先も、未来は君と

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 大学卒業後、俺と咲は同じマンションで暮らし始めた。
 咲が在学時過ごしていた場所には劣るものの、ここが今俺たち二人の確かな居場所だ。

「咲、おはよう。コーヒー淹れたんだけど飲むか?」

 眠たげな眼を擦りながら、寝室からのっそりと歩いてくる咲に、俺は近寄って頬に軽いキスを贈る。

「ん……飲む……」
「今日はどうしようか。デートしても良いし、家でゆっくりしててもいい。天気も良いから、きっとどっちでも気持ちいいぞ」

 朝の天気予報では、終日晴れ間が続くと言っていた。
 洗濯も済ませ、ベランダに干したから、きっとすぐに太陽がシャツを乾かしてくれるだろう。

「そうだね。まったりも捨てがたいけど、デート、しよっか。服、見に行きたいんでしょう?」
「えへ、バレたか。そうだ。朝飯はここら辺に最近新しいパン屋が出来たらしいから、そこに買いに行こう」
「いいね。ふぁ……」
「咲、眠そうな顔してる」
「そりゃあね、昨日あれだけ無茶させられたんだから」

 そう言う咲は、軽く俺を睨む。けれどそれはじゃれるように甘いものだから、破顔してしまうのも仕方がない。

「あはは……。それは謝る。ただ昨日の咲もあまりに可愛かったから」
「はいはい。ほら、朝ごはん調達しに行くなら着替えないと」
「咲」
「ん? ん、んぅ」

 そう彼を腕の中に納め、今度は唇にくちづけをする。
 ちゅっという軽快な音が、リビングルームに色どりを与えた。

「ん。ははっ、幸せだな。夜寝る前に咲におやすみをして、朝起きたらおはようを言える生活。夢みたいだ」
「夢じゃないよ。今こうして僕は、確かに剛の隣を選んでるんだから」
「咲、いつもそばにいてくれてありがとう。愛してるよ」
「うん。僕も。剛のこと、愛してる」

 それは触れるだけの淡いキス。
 けれど、二人の愛情を示すには、十分過ぎるくらいの甘い甘いキスだった。

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