【完結】問題児な特待生は義姉への恋を拗らせる。愛の勢いと方向性がおかしいですよ?

月にひにけに

文字の大きさ
25 / 27
2章

24.虎視(こし) 改稿

しおりを挟む
「……うまくいったんかね」

「……まぁそうなんじゃない?」

 ベタつきもせず、穏やかに、大人しくソフィアの隣で頬杖をつくフィンを眺めてラックスが口を開けば、チラと視線を寄越したテレジアが息を吐く。

「…………何か買ってくるわ」

「…………あいよ」

 苦笑したようにフッと笑うと、テレジアはガタリと席を立ってその赤い髪を揺らす。

 人気の少ない柱の陰で、何もない壁をぼんやりと眺めた。

 普通に元気づけるだけのつもりだったのに、気づいたら勝率0%の流れ告白をしてしまったことに、テレジアはショートした頭をゴンと壁に打ち付ける。

「私何やってんのかしら……」

 はぁと大きなため息をついて、何度とも知れない問いを繰り返す。

「言うつもりなんてなかったのにーー」

 壁にもたれたままに足先を眺め下ろして、ソフィアの側で穏やかに微笑んでいたフィンを思い出して、ふっと笑う。

「ーーまぁ、いっか」

「何がいいの?」

 間近で掛けられた聞きなれた声にテレジアはその赤い瞳を見開く。思わずと声の方を伺えば、ラックスがいつもの飄々とした様子で立っていた。

「ちょっと!?」

「テレジアは見る目ないよねぇ。普通よ? 姉弟とは言え、あんな明らかにめんどくさそうなところ。普通シャッター下ろすでしょ」

 気のないそぶりで続けられる言葉に、驚きの冷めないテレジアは言葉を紡げない。

「不安定で力だけ強いフィンは、たぶん普通の感性じゃ相手仕切れないよ。増してや、テレジアも我慢できないタイプだし」

「ちょっと!! 急に出てきて何なのよあんた!! 関係ないやつはすっこんでなさいよ!!」

「関係なくないよ」

「どこがよ!!」

「僕はテレジアのことが気になってるからね」

「だから……っ! は、はぁっ!?」

 ニッと笑うラックスに、見る見るうちに真っ赤になったテレジアが面白いように狼狽える。

「な、な、何っ、はぁっ!?」

 ぶるぶるとその身体を震わせるテレジアに、ラックスはフッと息を吐いて苦笑すると眉尻を下げた。

「ーーほんとそっくりだよね……」

「………………はっ!! さてはあんた見てたわねっ!?」

「……なんのことかな」

「さ、サイテー!!!」

 ベッと舌を出して悪びれないラックスに、テレジアが顔を真っ赤にして腕を振り上げて怒る。そんな腕をパシリと両手で受け止めると、ラックスは離しなさいよと暴れるテレジアを見下ろした。

「ーー悪いけど、私一途な男が最低条件だから、あんたはないわよ」

「えぇ? 僕一途だよ?」

「どこがよ」

 ちっと舌打ちして半目で睨むテレジアに、ラックスはふっと笑って一歩近寄る。

「惚れちゃいそうって、前に言ったの忘れちゃった? 僕は強くてカッコいいテレジアしか、ずっと見えてなかったんだけど」

 にっこりとその赤い瞳を覗き込まれるように見られて、テレジアは思わずと後退る。が、両腕を取られていて思うよりは動けない。

「わ、悪いけど将来有望な男しか興味ないから!」

「今度第一部隊に昇格するし、言ってなかったけど僕の家は裕福な方だと思うよ?」

「え」

 思わずと目を瞬かせるテレジアに思わず苦笑したラックスは、その腕を離す。

「ちょっとは僕に興味出てきた?」

「ば、バカなこと言ってんじゃないわよ、出る訳ないじゃない!!」

 笑みを浮かべるラックスは、真っ赤な顔でわなわなと震えるテレジアの髪を掬い取る。

「テレジアには、僕みたいのが合うと思うんだけどなぁ。素直でまっすぐ、強くて優しいけど意地っ張りなテレジアのこと、ちゃんとわかってると思うよ」

「はぁっ!?」

 ギョッとして目を剥くテレジアに、ラックスはにこりと笑う。

「わっ、私はそんな軽い女じゃないのよっっ!!!!」

 両手を軽く上げてニコリと笑うラックスに、真っ赤な顔で限界まで叫び倒したテレジアは一目散に退散する。

「ちょっと考えといてね!」

「うっさいっっ!!!」

 真っ赤な顔で軽くずっこけそうになりながら走り去る後ろ姿を眺めて、ラックスは楽しそうに笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勘違いで嫁ぎましたが、相手が理想の筋肉でした!

エス
恋愛
「男性の魅力は筋肉ですわっ!!」 華奢な男がもてはやされるこの国で、そう豪語する侯爵令嬢テレーゼ。 縁談はことごとく破談し、兄アルベルトも王太子ユリウスも頭を抱えていた。 そんな折、騎士団長ヴォルフがユリウスの元に「若い女性を紹介してほしい」と相談に現れる。 よく見ればこの男──家柄よし、部下からの信頼厚し、そして何より、圧巻の筋肉!! 「この男しかいない!」とユリウスは即断し、テレーゼとの結婚話を進める。 ところがテレーゼが嫁いだ先で、当のヴォルフは、 「俺は……メイドを紹介してほしかったんだが!?」 と何やら焦っていて。 ……まあ細かいことはいいでしょう。 なにせ、その腕、その太もも、その背中。 最高の筋肉ですもの! この結婚、全力で続行させていただきますわ!! 女性不慣れな不器用騎士団長 × 筋肉フェチ令嬢。 誤解から始まる、すれ違いだらけの新婚生活、いざスタート! ※他サイトに投稿したものを、改稿しています。

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

P.S. 推し活に夢中ですので、返信は不要ですわ

汐瀬うに
恋愛
アルカナ学院に通う伯爵令嬢クラリスは、幼い頃から婚約者である第一王子アルベルトと共に過ごしてきた。しかし彼は言葉を尽くさず、想いはすれ違っていく。噂、距離、役割に心を閉ざしながらも、クラリスは自分の居場所を見つけて前へ進む。迎えたプロムの夜、ようやく言葉を選び、追いかけてきたアルベルトが告げたのは――遅すぎる本心だった。 ※こちらの作品はカクヨム・アルファポリス・小説家になろうに並行掲載しています。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

男爵令嬢の記憶が交差する

まるねこ
恋愛
男爵令嬢であるフランはあるきっかけで前世の記憶を思い出していく。 意味のない夢だと思っていたけれど、それは次第に現実と絡み合い―― Copyright©︎2025-まるねこ

処理中です...