妹のヒモとなって異世界で生きていく~最弱の俺が英雄に至る~

雪下 ゆかり

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第1章

02プロローグ(2)

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翌日、俺が目を覚ましたのは昼過ぎだった。かなり疲れていたようだ。
部屋の小窓から外を眺める。見慣れない廃屋や木々の景色が広がっている。
やっぱり夢ではなく、異世界転移したんだよな~。

まだ気持ちの整理がちゃんとできていないが、この異世界でちゃんと生きてみようと思う。
幸いセーラもおじさんも良い人そうだ。
昨日はできなかったが、自分のことをちゃんと話して、この世界で生きる術を身につけていこう。

「あら、おはようございます。随分と疲れていたんですね」

部屋から出るとセーラがいた。昨日会ったばかりの俺に優しく挨拶をしてくれる。
なんていい子なんだ。
セーラは料理をしていたようだ。この部屋いっぱいにいい匂いがしている。

「おはよう。昨日はありがとう」

「どういたしまして。もうすぐ他の皆も帰ってきますから、帰ってきたらお昼ご飯にしましょう。もう少し待っててくださいね」

「他の皆? おじさん以外にもいるの?」

「いますよ。昨日は会えていませんもんね。また帰ってきたら自己紹介してもらいますね」

どうやらここにはセーラとおじさん以外にも住んでいるらしい。
廃村と聞いたが思ったより大人数で住んでいるのかな? まぁ他の人が帰ってきたらわかることか。
それにしてもこの家は綺麗だな。窓から見えた家は、どこから見ても廃屋だったけど、この家は全く古びていない。

セーラと少し話をして待っていると、外から賑やかな話し声が聞こえてきた。どうやら皆が帰ってきたようだ。
あ、緊張してきた。学校に登校した初日の気分だ。帰りたくなってきた……帰るところはないけど。

「たっだいま~なのですッ!」

まずは元気よく女の子が入ってきた。

あ、獣人だ! 大きな黒い耳と尻尾を持ち、黒い綺麗な毛並みをしている。綺麗な黒髪も腰のあたりまで伸びていて印象的だ。

獣人の子に続いて数人の女の子と男の子が家に入ってくる。最後に昨日助けてくれたおじさんが入ってきた。

「おっ! 起きたみたいだね! ぐっすり眠れたみたいで良かったよ」

「昨日はありがとうございました。お蔭様でゆっくり休めました」

「それは良かった。セーラもお昼の支度が終わっているみたいだし、お昼ご飯を食べよう。食べたら皆の自己紹介をしよう」

「わ~い、ご飯なのですッ!」



昼食の準備が整い、テーブルにはセーラが先ほど作っていた3種類の料理が並んでいた。俺は空いている席に静かに座り、皆が楽しそうに料理を取り分ける様子をぼんやりと見つめていた。

食卓に大勢で集まって食事をするは久しぶりだ。周りの賑やかな笑い声がどこか遠くに感じられ、自分がその輪に入っていいのか迷ってしまう。1対1なら会話もできるが、こんなに大人数、それも初対面の人ばかりだと気軽に入っていけない。

「ソウさん、お皿を貸してください」

不意に聞こえた声に、俺はハッと顔を上げた。セーラはにっこりと微笑んで、手に持ったサラダボウルを見せてくれた。

「遠慮しなくていいですよ。ちゃんと食べないと元気出ないですからね」

セーラは俺が遠慮していることに気づいてくれ、気遣ってくれたようだ。可愛いだけじゃなく、こういう気遣いもできるなんて、なんてパーフェクトな子なんだ。

「ありがとう」

お礼を言って、お皿を差し出した。セーラはお皿を受け取ってくれるとサラダをたっぷりとよそってくれた。

「これでお腹も満足するはずですよ! 遠慮なく食べてくださいね」

セーラは明るく言ってくれた。
ちなみに獣人の子や他の子は、お腹が空いていたのかすでに食べ始めていた。君たち、食べ始めるのが早いね!
俺もご馳走になろう。よそってもらったサラダに手を伸ばす。

「…うん、美味しい!」

ドレッシングが掛かっていないのに美味しいとは。一口、また一口と、食事を進めた。
サラダ以外にも、肉料理とそうざいがあり、そちらも美味しくいただいた。
肉料理は、競争が激しく一切れしか食べられなかったが……。

昼食が終わり、食卓には空になった皿が並んでいた。そんな中、セーラがふと立ち上がって、手を叩いてみんなの注意を引いた。

「それじゃ、自己紹介をしましょうか」

パッと見た感じ、獣人の子以外にも人族じゃない子がいる。亜人族と言うのかな?

「まずは私たちから! 年齢順でいきましょう。それじゃ、おじさんどうぞ」

「ヴィクトールだ。呼び方はおじさんでもいいし、ヴィクって呼んでくれても構わない。今はこいつらの保護者をしている。一応、剣術もいけるし、魔術も使えるぜ」

「ま、魔術!!」

やはりあるのか! 魔術が! 流石、異世界!
俺も使えるようになれるかな。可能なら使えるようになりたい。

「次は私ですね。セーラです。年は15歳。精霊魔術師です」

「セーラは、精霊術だけじゃなく、普通の魔術も使えるし、体術もいけるぜ。変なことしたら叩きのめされるから注意しな」

おじさんが笑いながらセーラについて補足してくれる。
変なことなんてしないさ……ずっと彼女がいたことないから、どうやったら気に入られるかもわからないけど。

次に元気な声が響いた。
燃えるような赤い髪をしている。彼の身体は、まるで鋼のような引き締まった筋肉で覆われており、日々の鍛錬の成果が見て取れる。
俺なんてパンチ一つでやられそうだ。

「俺はムック! 魔術は使えない! 剣術が大好きだッ! 以上ッ! よろしく頼むぜッ!」

「ちなみにムッくんは14歳だよ。剣術しか考えていない脳筋だから」

今度は、薄い紫色の髪をした女の子が補足してくれた。

「次は私だね。名前はユフィ。人族と魔人族のハーフで、年は13、錬金術師アルケミストだよ。特に得意なのは、ゴーレム製造。あ、もちろん回復薬とかも作れるよ。よろしくね」

「こちらこそ、よろしく」

言われてみれば確かに、錬金術師っぽい服装をしている。ローブを着ており、幾つもの小さいポケットが付いている。足に巻かれたベルトには理科でみたことがあるようなガラス管が装備されている。
ガラス管の中には回復薬とか入っているのかな? また後で聞いてみよう。
衣装以上に特徴的なのは、お尻に悪魔っぽい尻尾が付いている。フリフリ揺れている。可愛いな…後で触ったらダメかな?

「次はわたしッ! ライカだよッ! 好きなのはお肉ッ! お肉ならなんでも好き~」

最初に帰ってきた獣人の子だ。ちょっとバカっぽいけど、その方が獣人の感じがするな。

「ライカと俺は同い年だ。俺の名は暗黒騎士ブラックナイトのガチャ・リュード・ヴァレンタイン・リヒターだ。漆黒剣を使用する」

「にゃはは、ガチャのことは深く気にしなくていいよ。難しい年頃みたいなんだ。リュード以下ほにゃららは自分でかっこいいと思った名前を付けるから定期的に変わるんだ。覚えるだけ無駄だよ。ちなみに年は12歳ね」

ユフィが枯れた笑いをして補足してくれた。
うんうん、そっかそっか、あれだ。彼は今、中二病にかかっているんだ。男の半数はかかると言われている病気は、こちらの世界にもあるんだな。
大丈夫。俺もかかってしまったが、ちゃんと耐性ができて治ったから。周りは優しく暖かく見守ることが大切だよ。………ガチャくんは病気が治った時、黒歴史というヒストリーを背負うことになると思うけど。

「…………最後は私、キキ。10……成長期………よろしく」

「よろしくね」

キキもライカと同じく綺麗な黒髪を腰のあたりまで伸ばしている子だ。でも身長は小柄で150cmくらいかな。綺麗な青色の眼をしており、髪には眼の色と同じ大きなリボンをしていて可愛らしい。
自分で成長期って言っているから、小柄なこと気にしているのかな?

皆の自己紹介が終わり、最後に俺に視線が向けられた。

「…えっと、俺は双葉 想! 想が名前なんでソウって呼んでください。年は20歳になったところ。あとは………違う世界から来ました!」

俺の言葉が静かに響いた瞬間、部屋は少しの間沈黙に包まれた。全員が目を丸くし、俺を見つめている。やっぱり信じられないよな、そりゃそうだ…いきなり「異世界から来た」なんて、普通の反応はそうだ。
けれど、次の瞬間、皆が口を開いた。

「ソウさん、違う世界からって…本当に?」

俺がセーラへ返事をする前に、ムックが椅子から勢いよく立ち上がった。

「え!? すげえなッ! 俺も別の世界にいけるのか? どうやってこの世界に来たんだ?」

ムックの目はキラキラと輝いている。興奮を抑えきれない様子だ。

「いや、俺もどうやって来たのか、正直よく分かんないんだ。気が付いたら、ここにいたって感じで…」

ムックが少しガッカリした表情が浮かんだが、そのすぐ後ろから別の声が飛び込んできた。

「それは、興味がそそられるね! どうりでちょっと違う雰囲気をしていると思たんだぁ~! 今度ソウを研究させてね~、きっと面白いデータが取れるはずだから!」

「………異世界、……興味ある」

テーブルの端に座っていたキキが、静かに俺の方を見上げながらポツリと言った。彼女の瞳が青白く光っている。興奮してるのかな?

「異世界にも強いやつ、いっぱいいるのです?」

ライカは強い人がいるか気になっているようだ。これぞ獣人って感じがするな~。やっぱりライカも強いのかな?

その後、俺は元の世界のことや姉が亡くなってこの世界にきた経緯を説明した。
皆、異世界のことがかなり興味あるようで、質問が夕暮れ時まで続いた。

「俺、異世界から来たけど、ここで新しい人生を歩もうと思ってるんだ。だから、色々教えてもらえると嬉しいです! よろしくお願いします」

「皆も何かしら事情を抱えてここにいる。1人くらい増えても大丈夫だから気にするな」

おじさんが優しくそう言ってくれた。
これが、俺の新しい世界での始まりだった。異世界から来た俺を、驚きながらも真摯に受け入れてくれ、俺はここで新しい生活を始めたんだ。
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