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⑨レッドブルマにTシャツ、そしてエプロンをして、釣れたメバルを料理している。命あるものを美味しくいただくことが大切と考え、寮の管理人のばあちゃんから教わって自分でも魚料理する。
 いつものことなのだが、今日は違っていた。
 釣りをした後に、料理の仕方を覚えたい、釣った魚を大切にしたいと言って、颯太先輩と浜崎君が、一人暮らしのレッドブルマのアパートへ付いてきたのだ。男を部屋に入れてはいけないと、きつく家族に言われていたが、流れ的に仕方なく、料理を教えることになった。
 二人がいるので着替えることもせず、シャワーも浴びず、エプロンをして始めた。
「レッドブルマにTシャツ、エプロン姿、似合っていますよ、後ろ姿はバッチリです」「後ろ姿よりも、料理を覚えてね、男の人を部屋に入れるのは初めてで最後にしたいから」
「お願いしま~す」
「まず、うろこを丁寧にこうやって落とす」
「うろこが飛んでるよ」
「そうそう、紙を広くして置くのを忘れちゃった、今、用意するから」
「この紙でいいの」
「ありがとう、そして、水洗いしたら、水分を丁寧に拭きとり臭み消しもかねて両面に満遍なく塩を振っておくのよ」
「海にいたから塩を使わなくてもいいんじゃないかな」
「塩を振ると余計な水分が出て身がしまるんだって」
「なるほど! どうして、×に包丁で切るの」
「飾り包丁って言うんだけど、焼けやすいように、それと見栄がいいよ」
「飾り包丁、覚えた!」
「さあ、これで、グリルで焼いていきます。両親が買ってくれたのは両面焼きのグリルなのでひっくり返す必要はないけど、家のグリルを調べて見て」
「海野さん、僕がグリルを開けるよ、あっちっち~」
「もう、浜崎君、手袋しないとダメダよ、水道水で熱いところを冷やして」
「レッドブルマ、これ、焦げているぞ」
「結局、少し焦げてしまうけど、気にしない、フフ~」
  次はメバルを用意した。
「目を見て、ほら、何か気付かない」
「目が、かっこいいというか、目らしい目かな」
「目が高くなっている」
「そう、新鮮だと目が盛り上がっているの、鮮度が落ちたらくぼんじゃうんだよ、それで、新鮮かどうかわかるみたい、ばあちゃんが言っていた」
「ああ、管理人さんだね」
「何を作るの?」
「メバルの姿を活かした料理」
「最初は、同じかな」
「丁寧にうろこをとって、エラと内臓をとって煮付けるからね」
「俺たちもやろうぜ、浜崎」
「じゃあ、うろこを颯太先輩、内臓を浜崎君とって」
 颯太は覚え立てのうろこを丁寧にとって、浜崎に渡した。
「え~と、どうやるんだっけ」
「私と同じようにやって」
 包丁で腹を切り、指を入れて内臓を取り出し、水道水で水洗いをした。それを、浜崎も真似て出来上がった。
「さあ、いよいよ料理だけど、やり方はその人によって多少ちがうから、ばあちゃん流のやり方をやるね」
 レッドブルマは、鍋に魚の臭みを消すゴボウとショウガなどを入れて、そこに醤油、調味料を加えた。7分ほど煮て、煮汁を魚全体にかけた。
 レッドブルマのエプロン後ろ姿を頭から踵まで見ていたら、
「二人とも魚に、こうやってかけてみて」
 二人は、魚の頭や尻尾にまで煮汁をかけて、全体に行き渡るようにした。
「二人とも、上手! 私は釣りが好きだけど、料理は雑にやってしまうけど、二人、丁寧でうまい、うまい~」
 レッドブルマに誉められて二人は嬉しかったが、それよりも部屋で一緒に過ごせたことがうれしかった。
「さあ、いただきましょう」
 紙の皿と割り箸で出来たての料理をご飯抜きで食した。
「うまいっしょ!」
「海野さん、今まで食べた魚料理の中で一番うまいです」
「これから、釣ったら自分で料理してみてね」
 二人はせっかくレッドブルマの部屋に来たのだから、興味ありそうなものがないか辺りを見たら、綺麗に整理整頓されていて普通の部屋だった。
「レッドブルマ、トイレ貸してくれ」
「颯太先輩、そこを曲がった所です」
 颯太は、トイレに行きながら帰りに隣のお風呂を開いて覗いた。そこには、レッドブルマ、赤い下着が干してあった。颯太は興奮して内心喜んだ。
 颯太は、自分の見た赤い下着をアンダースコートだと気付くことはなかった。
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