ユメ/うつつ

hana4

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3【:prologue】

3-1

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 あれから俺は、しまいこんでいたカメラに降り積もってしまった埃を掃い、放課後と毎週末を、ソラと一緒に過ごすようになっていた。


 小学生の時には難しくて扱いきれなかったフィルムカメラだったが、少し大人に近づいている今になってみれば、奥が深くて楽しかった。何より、ソラと過ごす時間は懐かしさを通り越した安心感があって、久し振りに、素の自分と再会できているような気分になる。

 撮り溜まっていく写真を現像するのは自分たちで……とはいかず、ソラがいつも行っている写真屋さんに、取り出したフィルムをだけを持ち込んでいた。


 俺たちがそれぞれファインダーを覗き、思い思いに切り出した世界はそこで、数日のタイムラグを経て具現化される。

 
 二人分、合わせて五十枚ほどの写真の束と、そのネガを写真屋のおっちゃんから受け取ると、その場でひろげてみたくなるのを必死で堪え、グッとカバンに詰め込んだ。

 その後俺たちはいつも、互いに顔を見合わせて、同じような笑みを浮かべる。
 別に見られて困るものは撮影してない。なのに、悪戯を共有している時のような落ち着きなさが蘇り、それが誰かにバレてしまわない内に、俺たち二人は走り出した。

 それぞれの思い出を刻む知らない人たちの間を潜り抜ける。時折振り返ると、ソラが満面の笑みを浮かべながらついてくる。「早く」と急かす俺に向かって、「へへっ」っという情けない返事が揺れる。俺は、「笑わなければもっと早く走れるだろ?」と言いつつ、頬が弛んで口が開いた。

 商店街を駅を背にして走り抜けると、通学路だった緑道は、木漏れ日で水玉模様になっていた。
 舗装された道路が砂利道になり、やがて足元が土の感触を捉える。でも、俺にもソラにも目の前しか見えていないから、そんなことはどうでも良い。

 あの頃足しげく通った公園の端まで来ると、原色の組み合わせで塗られた遊具なんてない。だから、それが目当てのカラフルな子供たちの影もない。
 俺は、まだ数十メートルは遠い目的地に誰も居ないことを確認すると、ラストスパートをかける。

 そのレースにソラが勝ったことは無くて、だから俺は負けるはずなんて無い。それなのに、丸太を並べて出来ているテーブルが見えてくると俺は必死で手を伸ばし、そのゴールに思わず「タッチ」っと叫んで触れた。

「シンには……勝てないや……」
「ソラには一生負ける気がしねー」

 俺たちは相変わらず、あの時のままの発想を、居心地の良いまま繰り返している。

 だから、テーブルの上に二人分の写真の束をぶちまけた後、俺らはまた顔を見合わせて、悪戯の成功を喜ぶのだった。

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