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3【:prologue】
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お互い自分が撮ったと思う写真を選び出してから、太陽にネガを透かして答え合わせをしていく。プロみたいなピントで撮れている写真はお互い譲ろうとせず、それで生じた小競り合いは、先に笑い出した方の負けだった。
全く同じ方を向いて撮ったはずの写真に全く違う風景が切り出されていることもあれば、お互いを撮り合った写真が下手くそすぎて笑う。二人ともの目が半開きだった時には、ソラの腹筋でさえも六つに割れそうなぐらい笑い続けた。
昔二人で写真を撮った場所が、全然違う景色に写った時、二人の間にしては珍しい、何とも言えない沈黙が顔を出した。けど、そんな事すら何故か無性に楽しかった。
ソラとの時間がカタチになってゆく。
自分たちが世界を創っている様な気になって、俺は少し欲張りになった。
「なあ、虹雲の群れって知ってる?」
少しだけ物足りなさを感じ始めてしまった俺は、より奇跡みたいな一瞬を撮影してみたくなっていた。
「虹雲?聞いた事無いよ?」
「太陽の近くを通った雲が虹色に色付いてみえて、それが彩雲って呼ばれてるらしいんだけど、昔から彩雲をみると良い事があるって言われてるんだってさ」
「それの、群れ?」
「そう!その彩雲がこう、バーっと空に連なる瞬間、その連なりが虹みたいに見えて、それを『虹雲の群れ』って呼ぶらしい」
「簡単には見れないんじゃない?」
「うん。彩雲だけでも気象条件とか色々整わないと見れなくて、だから……虹雲の群れは、奇跡に近い確率しか……」
虹雲の群れの存在を知ってから、それを撮ってみたくて俺なりに色々と調べていた。
ただ、出現する可能性の高いという気象条件は存在するものの、それは確実に見れるというものではなかった。だから、俺たちが時間とお金をどんなにかけれたとしても、絶対に虹雲の群れを見られるとは限らない。
俺がひとり妄想の中で何度もシミュレーションしてみた結果から言えば、オーロラを撮影しようと思うよりも、虹雲の群れの撮影は無理難題のようだった。
いつもだったら、そんな夢みたいなことを「試してみよう」とすら思わないのに、この夢みたいなことは、無性に叶うような気がしてしまう。
「そっか……でもさ、それ、シンとなら見れる気がするかも?」
「えっ?俺も……ソラと一緒なら、何だか見られるような気がしたんだ」
俺らのこの偶然の一致は、俺にわけのわからない自信をくれた。
それは、どんなものにでもなれると思っていた、小さい頃の感覚に似ている。
俺らはその日から、その根拠のない自信だけを頼りに二人で夢中になった。
簡単に出会えない事さえも楽しくて、カメラを抱えて駆けずりまわる。天気予報を見ながら虹雲の群れの出現場所を推測してみたり、「今日はあそこで見られる気がする」なんて勘だけを頼りに半日かけて山へと登ったり。
結果としては全部無駄な事だったのだろうけど、その一瞬の為のこの時間の欠片たちは、石ころでも、宝石だったとしても、それらを無理やり瓶に詰めていつも持ち歩きたい位には、全部が俺にとって大事な記憶になっていた。
全く同じ方を向いて撮ったはずの写真に全く違う風景が切り出されていることもあれば、お互いを撮り合った写真が下手くそすぎて笑う。二人ともの目が半開きだった時には、ソラの腹筋でさえも六つに割れそうなぐらい笑い続けた。
昔二人で写真を撮った場所が、全然違う景色に写った時、二人の間にしては珍しい、何とも言えない沈黙が顔を出した。けど、そんな事すら何故か無性に楽しかった。
ソラとの時間がカタチになってゆく。
自分たちが世界を創っている様な気になって、俺は少し欲張りになった。
「なあ、虹雲の群れって知ってる?」
少しだけ物足りなさを感じ始めてしまった俺は、より奇跡みたいな一瞬を撮影してみたくなっていた。
「虹雲?聞いた事無いよ?」
「太陽の近くを通った雲が虹色に色付いてみえて、それが彩雲って呼ばれてるらしいんだけど、昔から彩雲をみると良い事があるって言われてるんだってさ」
「それの、群れ?」
「そう!その彩雲がこう、バーっと空に連なる瞬間、その連なりが虹みたいに見えて、それを『虹雲の群れ』って呼ぶらしい」
「簡単には見れないんじゃない?」
「うん。彩雲だけでも気象条件とか色々整わないと見れなくて、だから……虹雲の群れは、奇跡に近い確率しか……」
虹雲の群れの存在を知ってから、それを撮ってみたくて俺なりに色々と調べていた。
ただ、出現する可能性の高いという気象条件は存在するものの、それは確実に見れるというものではなかった。だから、俺たちが時間とお金をどんなにかけれたとしても、絶対に虹雲の群れを見られるとは限らない。
俺がひとり妄想の中で何度もシミュレーションしてみた結果から言えば、オーロラを撮影しようと思うよりも、虹雲の群れの撮影は無理難題のようだった。
いつもだったら、そんな夢みたいなことを「試してみよう」とすら思わないのに、この夢みたいなことは、無性に叶うような気がしてしまう。
「そっか……でもさ、それ、シンとなら見れる気がするかも?」
「えっ?俺も……ソラと一緒なら、何だか見られるような気がしたんだ」
俺らのこの偶然の一致は、俺にわけのわからない自信をくれた。
それは、どんなものにでもなれると思っていた、小さい頃の感覚に似ている。
俺らはその日から、その根拠のない自信だけを頼りに二人で夢中になった。
簡単に出会えない事さえも楽しくて、カメラを抱えて駆けずりまわる。天気予報を見ながら虹雲の群れの出現場所を推測してみたり、「今日はあそこで見られる気がする」なんて勘だけを頼りに半日かけて山へと登ったり。
結果としては全部無駄な事だったのだろうけど、その一瞬の為のこの時間の欠片たちは、石ころでも、宝石だったとしても、それらを無理やり瓶に詰めていつも持ち歩きたい位には、全部が俺にとって大事な記憶になっていた。
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